9.教科指導・生徒指導・学級経営の三位一体。 大学生の教採面接・合格術
- 河野正夫
- 7 日前
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大学生の教採面接・合格術
9.教科指導・生徒指導・学級経営の三位一体。
★はじめに
教員採用試験を受験する学生の多くは、自分の専門教科の指導に強い関心を持っています。
国語の教員志望者は国語の授業を、数学の教員志望者は数学の授業を、どのように教えるかを熱心に考えます。
確かに、教科指導は教員の仕事の中心的な部分です。
しかし、教員の仕事は教科指導だけではありません。
生徒指導と学級経営という、もう二つの重要な柱があります。
そして、これら三つは独立した別々の仕事ではなく、互いに深く結びついた一体のものとして機能します。
教科指導・生徒指導・学級経営の三位一体という視点を持つことが、優れた教員への第一歩となります。

★教科指導とは何か
教科指導とは、各教科の知識や技能を子供たちに教えることです。
国語、算数(数学)・数学、社会、理科、英語など、それぞれの教科において、学習指導要領に定められた内容を指導します。
授業を計画し、教材を準備し、子供たちに説明し、発問し、演習させ、理解を確認する。
これが教科指導の基本的な流れです。
多くの受験者は、この教科指導に最も力を入れて準備します。
自分の専門教科について深く学び、効果的な指導方法を研究し、教育実習でも授業づくりに力を注ぎます。
これは確かに重要なことです。
教員の専門性の核心は、教科の内容を深く理解し、それを子供たちに適切に伝える力にあります。
しかし、教科指導が成立するためには、前提条件があります。
子供たちが授業に集中できる状態であること、学習に向かう姿勢を持っていること、クラス全体が学びやすい雰囲気であること。
こうした条件が整って初めて、教科指導は効果を発揮します。
逆に言えば、どれほど優れた授業を計画しても、子供たちが聞く姿勢を持っていなければ、その授業は成立しません。
★生徒指導とは何か
生徒指導とは、子供たちの人格的な成長を支援する教育活動です。
基本的な生活習慣、社会的なルールやマナー、人間関係の築き方、自己理解と自己管理の力。
こうした、教科の知識とは異なる、人として生きていく上で必要な資質や能力を育てることが生徒指導の目的です。
生徒指導には、予防的な側面と対処的な側面があります。
予防的な側面とは、すべての子供たちに対して、望ましい行動や態度を育てる日常的な指導です。
挨拶の仕方、時間を守ること、友達との関わり方、物を大切にすることなど、日々の学校生活の中で継続的に指導します。
対処的な側面とは、問題行動が起きたときの指導です。
いじめ、暴力、器物破損、授業妨害、不登校など、様々な問題に対して、適切に対処し、子供たちを指導します。
ただし、対処的な指導だけでは不十分です。
問題が起きる前の予防的な指導が、生徒指導の本質です。
生徒指導は、特定の時間に行われるものではありません。
授業中も、休み時間も、給食の時間も、清掃の時間も、すべての場面が生徒指導の機会です。
子供たちの行動を観察し、適切なタイミングで声をかけ、褒め、時には注意し、望ましい行動を育てていきます。
★学級経営とは何か
学級経営とは、学級という集団を、子供たちが安心して学び、成長できる場として組織し、運営することです。
学級は、単に子供たちが集まっている場ではありません。
一人一人が尊重され、互いに支え合い、共に成長していく共同体です。
この共同体を作り上げることが学級経営です。
学級経営には、様々な要素が含まれます。
学級のルールや約束事を決めること、係活動や当番活動を組織すること、座席や班を決めること、学級目標を設定すること、学級の雰囲気を作ること。
さらに、子供たち同士の人間関係を把握し、トラブルを予防し、必要に応じて調整すること。
一人一人の子供の特性や状況を理解し、適切に支援すること。
こうしたすべてが学級経営に含まれます。
学級経営がうまくいっている学級では、子供たちは安心して過ごすことができます。
友達と良好な関係を築き、自分の意見を安心して述べることができ、失敗を恐れずに挑戦できます。
こうした学級では、子供たちの学習意欲も高まり、教科指導も効果的に進みます。
逆に、学級経営がうまくいっていない学級では、子供たちは落ち着きません。
教室が騒がしく、授業に集中できず、いじめやトラブルが頻発します。
どれほど優れた授業を計画しても、こうした環境では成果を上げることができません。
★三つの関係性
教科指導・生徒指導・学級経営は、独立した別々の仕事ではありません。
これら三つは、互いに深く結びついており、一体として機能します。
まず、学級経営は教科指導の土台となります。
安心して学べる学級の雰囲気、友達と協力して学ぶ関係性、学習に向かう姿勢。
これらが整って初めて、教科指導は効果を発揮します。
学級経営がうまくいっていない状態では、どれほど教材研究をしても、どれほど授業の工夫をしても、子供たちの学力は十分に伸びません。
次に、教科指導は生徒指導の場となります。
授業の中で、子供たちは多くのことを学びます。
課題に粘り強く取り組む力、わからないことを素直に質問する姿勢、友達と協力して問題を解決する経験。
こうした、教科の内容以上に重要な資質や能力を、授業の中で育てることができます。
教科指導と生徒指導は切り離せません。
さらに、生徒指導は学級経営を支えます。
一人一人の子供に対する適切な指導があって、学級全体が落ち着き、良好な雰囲気が生まれます。
問題行動を適切に指導し、望ましい行動を育てることで、学級は安定します。
生徒指導なしに、良好な学級経営は成り立ちません。
また、学級経営は生徒指導を効果的にします。
学級全体に望ましい規範や雰囲気があれば、個々の子供も自然とそれに従います。
学級の中で互いに支え合う関係があれば、問題を抱える子供も孤立せず、周囲の支援を受けることができます。
学級経営が整っていることで、個別の生徒指導も効果を上げやすくなります。
さらに、教科指導は学級経営の一部でもあります。
授業を通じて、子供たちは共に学ぶ経験を積みます。
グループでの話し合い、発表を聞き合う経験、互いの考えを尊重する態度。
こうした経験が、学級の一体感や相互理解を深めます。教科指導の中で、学級の絆が育ちます。
このように、教科指導・生徒指導・学級経営は、互いに支え合い、影響し合いながら、一体として機能します。
一つだけを切り離して優れていることはできません。
三つをバランスよく、総合的に考えることが重要です。
★面接での問われ方
教員採用試験の面接では、この三位一体の視点を持っているかどうかが問われます。
直接的に「教科指導・生徒指導・学級経営の関係をどう考えますか」と聞かれることは少ないかもしれませんが、様々な質問を通じて、この視点の有無が評価されます。
例えば、「あなたの強みは何ですか」という質問に対して、「教材研究が得意です」とだけ答える受験者と、「教材研究を通じて、子供たちが主体的に学べる授業を作ることが得意です。また、授業の中で、子供たち同士が学び合う場面を作ることで、学級の一体感も育てられると考えています」と答える受験者では、評価が大きく異なります。
後者は、教科指導と学級経営のつながりを理解しています。
「学級が荒れているとき、どう対処しますか」という質問に対して、「厳しく指導します」とだけ答える受験者と、「まず、子供たちが落ち着いて学べる環境を取り戻すことが必要です。そのために、学級のルールを再確認し、一人一人に声をかけて状況を把握します。同時に、授業の中で子供たちが達成感を味わえるよう工夫し、学習への意欲を高めます」と答える受験者では、後者の方が三位一体の視点を持っています。
「授業がうまくいかないとき、どうしますか」という質問に対して、「教材研究をやり直します」とだけ答える受験者と、「教材研究の見直しも必要ですが、同時に、子供たちが授業に集中できる状態になっているかを確認します。学級の雰囲気、子供たちの人間関係、一人一人の理解度など、授業以外の要因も考えます」と答える受験者では、後者の方が総合的な視点を持っています。
このように、面接での様々な質問に対して、教科指導だけでなく、生徒指導や学級経営との関連を意識した答えができるかどうかが、評価の分かれ目となります。
★教育実習での気づき
教育実習は、この三位一体を実感する貴重な機会です。
多くの実習生は、授業づくりに集中しますが、同時に、担任の先生が子供たちにどのように声をかけているか、学級のルールがどのように機能しているか、子供たち同士の関係がどのように築かれているかを観察することができます。
優れた担任の先生は、授業の中でも、休み時間でも、給食の時間でも、常に子供たちを見守り、適切なタイミングで声をかけています。
授業の中で、学習内容を教えると同時に、子供たちの協力する姿勢を褒め、友達の意見を尊重する態度を育てています。
こうした姿を観察することで、教科指導・生徒指導・学級経営が一体となって行われていることを実感できます。
面接では、教育実習でのこうした気づきを語ることが効果的です。
「教育実習で、担任の先生が授業の中で、学習内容だけでなく、子供たちの協力する姿勢も丁寧に育てておられる様子を見ました。授業が終わった後、『今日はグループでよく話し合えていたね』と声をかけておられました。こうした日々の積み重ねが、学級全体の学び合う雰囲気を作っているのだと学びました」といった具体的なエピソードは、三位一体の理解を示す材料となります。
★バランスの重要性
教科指導・生徒指導・学級経営の三位一体という視点を持つことは、バランスの重要性を理解することでもあります。
教科指導にばかり力を入れて、生徒指導や学級経営を疎かにすることはできません。
逆に、学級経営にばかり気を取られて、肝心の教科指導が不十分になることも避けなければなりません。
初任の教員は、この三つのバランスを取ることに苦労します。
授業の準備に時間を取られ、子供たち一人一人への配慮が不足する。
あるいは、問題行動への対処に追われ、授業の質が低下する。
こうした状況は、経験不足の教員にはよく起こります。
しかし、三位一体という視点を持っていれば、一つの取り組みが複数の目的を果たすことができます。
例えば、授業の中でグループ学習を取り入れることは、教科の理解を深めるだけでなく、子供たち同士の協力する力を育て、学級の一体感を高めることにもつながります。
給食の時間に子供たちと会話することは、生徒理解を深めると同時に、信頼関係を築き、学級の温かい雰囲気を作ることにもつながります。
このように、三つを別々のものとして捉えるのではなく、一体として捉えることで、効率的かつ効果的な教育活動が可能になります。
★具体的な実践のイメージ
面接で三位一体の視点を示すためには、具体的な実践のイメージを持つことが重要です。
抽象的に「三つをバランスよく行います」と言うだけでは不十分です。具体的に、どのような場面で、どのように三つが結びつくのかを説明できる必要があります。
例えば、算数の授業を例に考えてみます。
単に計算方法を教えるだけでなく、「友達の考え方を聞いて、自分の考えと比べてみよう」という活動を取り入れます。
これは、教科指導として数学的な思考力を育てると同時に、生徒指導として友達の意見を尊重する態度を育て、学級経営として互いに学び合う関係を築くことにつながります。
あるいは、国語の授業で、グループで物語の続きを考える活動を行います。
これは、教科指導として想像力や表現力を育てると同時に、生徒指導として協力する力を育て、学級経営としてグループの絆を深めることにつながります。
さらに、学級会で、クラスの問題について話し合う活動を行います。
これは、学級経営として子供たちが主体的にクラスを運営する力を育てると同時に、生徒指導として民主的な話し合いの方法を学び、教科指導(特に国語や社会)として議論する力を育てることにもつながります。
このような具体的なイメージを持ち、面接で説明できることが重要です。
★先輩教員から学ぶ
三位一体の視点を深めるためには、優れた先輩教員の実践を学ぶことが有効です。
教育実習やボランティア活動を通じて、経験豊富な教員の姿を観察する機会があれば、その教員がどのように教科指導・生徒指導・学級経営を一体として行っているかを注意深く見ることができます。
例えば、ある先輩教員が、授業の始めに必ず前時の振り返りを行い、子供たちの発言を丁寧に拾い、「〇〇さんの考えは面白いね」「△△さん、よく気づいたね」と声をかけている場面を観察したとします。
これは、教科指導として学習内容の定着を図ると同時に、生徒指導として子供たちの自己肯定感を高め、学級経営として発言しやすい雰囲気を作る、という三つの目的を同時に果たしています。
こうした具体的な場面を記憶し、面接で語ることができれば、三位一体の理解を効果的に示すことができます。
★理論的な裏付け
三位一体の視点は、単なる経験則ではなく、教育学的な理論にも裏付けられています。
大学の教職課程で学ぶ教育方法学、生徒指導論、学級経営論などの科目は、それぞれが独立した知識ではなく、互いに関連し合っています。
例えば、教育心理学で学ぶ子供の発達段階の理解は、教科指導において適切な指導方法を選ぶために必要であると同時に、生徒指導において年齢に応じた対応を考えるためにも必要です。
学習理論で学ぶ協同学習の考え方は、教科指導の方法であると同時に、学級経営において協力し合う関係を築く方法でもあります。
面接では、こうした理論的な裏付けを示すことも効果的です。
ただし、専門用語を並べるのではなく、「大学で学んだ協同学習の理論を、授業の中で実践すると同時に、学級全体の協力し合う雰囲気を作ることにもつなげたいと考えています」というように、わかりやすく説明することが重要です。
★結論
教員の仕事は、教科指導だけではありません。
生徒指導と学級経営という、もう二つの重要な柱があります。
そして、これら三つは独立した別々の仕事ではなく、互いに深く結びついた一体のものとして機能します。
学級経営は教科指導の土台となり、教科指導は生徒指導の場となり、生徒指導は学級経営を支えます。
また、教科指導は学級経営の一部であり、学級経営は生徒指導を効果的にし、生徒指導は教科指導を支えます。
このように、三つは複雑に絡み合いながら、一体として子供たちの成長を支えます。
教員採用試験の面接では、この三位一体の視点を持っているかどうかが評価されます。
教科指導だけに偏った答えではなく、生徒指導や学級経営との関連を意識した答えができることが重要です。
教育実習での観察、先輩教員からの学び、大学での理論的な学び。これらを統合し、教科指導・生徒指導・学級経営の三位一体という視点を確立してください。
この視点を持つことが、優れた教員への第一歩であり、面接での高い評価につながり、合格への確かな道となります。
河野正夫

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