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第9回:説得より納得。【初歩から学ぶ面接合格戦略】(30回連載シリーズ)

執筆者の写真: 河野正夫
河野正夫
3 分前
読了時間: 5分

【初歩から学ぶ面接合格戦略】(30回連載シリーズ)


第9回:説得より納得



まず、二つの言葉を定義しておきます。



説得とは、話し手が主導権を持ち、相手の判断を動かそうとする行為です。



納得とは、聞き手が主導権を持ち、自分の側から判断を下す状態です。



説得は、話し手の動作です。


納得は、聞き手の状態です。



動詞の主語が、まるで違います。



面接で高い評価を得ている受験者は、説得を仕掛けていません。


面接官が自分から納得していく流れを、あらかじめ作っています。



今回は、この一点を軸にして、面接の語りを見直していきます。





★説得は、相手に力を加える行為です



説得しようとすると、語りに決まった変化が起きます。



根拠が増えます。


語尾が強くなります。


話が長くなります。



これは、不誠実さから生まれる現象ではありません。


不安から生まれる、ごく自然な反応です。



人は、自信が持てないときほど、証拠を積み増します。


自分の言葉が届いていないと感じるほど、言葉を足していきます。



面接という場は、この反応を引き出しやすい条件がそろっています。



限られた時間。


評価される立場。


一度きりの機会。



そのすべてが、語りを説得の方向へ押していきます。



★なぜ、説得に走ってしまうのか



真面目に準備した人ほど、この形に入りやすくなります。


理由は、三つあります。



1.面接を試験だと捉えているため、正解を証明しようとしてしまう。


2.不合格の経験があると、次は言い足りなかった部分を補おうとしてしまう。


3.準備した内容が多いほど、そのすべてを使いたくなってしまう。



どれも、努力の副産物です。


準備を重ねた分だけ、説得の引力は強くなります。



この引力の存在を知っておくだけで、本番での軌道修正ができるようになります。



★押された面接官には、何が起きるか



人は、押されると引きます。



証拠を積まれるほど、聞いている側は評価者の位置に固定されていきます。


この主張は正しいだろうか、と検証する姿勢に入ります。



評価者の位置に座った面接官から、好感は生まれにくくなります。


共感も、同じく生まれにくくなります。



語れば語るほど、狙っていた三つの感情から遠ざかっていきます。



しかも、この現象は本人には見えません。


熱心に語っている最中は、手応えを感じていることが多くあります。


面接室の空気が硬くなっていることに、気づかないまま終わります。



★納得は、聞き手が自分で下す判断です



納得の構造は、まったく違います。



面接官が自分の中にすでに持っていた考えがあります。


そこに、受験者の語りが重なります。


その瞬間、面接官は自分で結論に達します。



この人は、いい先生になりそうだ。



自分で達した結論は、他人から与えられた結論より、はるかに強く残ります。


面接官の中に残った結論は、評価票の点数として表れます。



面接官が信じていることを、自分の経験で補強する。


この形が効く理由が、ここにあります。



ここから、納得を生むための三つの操作を見ていきます。



★操作その一 余白を残す



語り尽くさないことが、納得を生みます。


何もかも最後まで言い切ってしまうと、面接官には受け取る作業しか残りません。


最後の一歩を、面接官が自分で踏むように設計します。



「だから私は、生徒に寄り添える教師になれると考えています。」



この一文を、消してみてください。


その代わりに、場面を語り終えたところで止めます。



「その生徒は、卒業の日に、あのとき話を聞いてくれてありがとうと言ってくれました。」



言い切らずに止めると、面接官が自分で結論を置きます。


受験者が置いた結論より、面接官が置いた結論の方が、強く残ります。



自分の評価を自分で下さない。


これが、余白を作る具体的な方法です。



★操作その二 根拠は一つに絞る



根拠を三つ並べると、説得の形になります。


根拠を一つに絞ると、納得の形になります。



数を減らすほど、信頼は増していきます。



三つ並べた根拠は、どれも中途半端な深さで終わります。


一つに絞った根拠は、場面の細部まで語れます。


細部のある話が、面接官の中で像を結びます。



用意した材料のうち、最も強い一つを選ぶ。


残りは、追質問が来たときのために手元に置いておきます。



手元に残した材料は、捨てた材料とは違います。


問われたときに出す材料として、価値を持ち続けます。



★操作その三 語尾を下げる



「~だと確信しています。」


「~だと考えています。」



この二つは、同じ内容を述べています。


面接官が受け取る圧力は、大きく違います。



断定の強さは、そのまま聞き手を押し返す力になります。


語尾を一段下げるだけで、語りは説得から納得へ移ります。



自分の原稿の語尾を、一度すべて確認してみてください。


強い語尾が続いている箇所は、そこだけで説得の色が濃くなっています。



すべてを弱める必要はありません。


最も伝えたい一文だけ、強い語尾を残す。


そこが際立って、面接官の記憶に残ります。



★追質問は、納得が始まった合図です



追質問が来ると、失敗したと感じる受験者が多くいらっしゃいます。


実際は、逆の合図です。



説得が成功した場では、面接官は受け取るだけで終わります。


納得が始まった場では、面接官が前に出てきます。


もっと知りたい、という動きが追質問の形になります。



追質問が増えた面接は、面接官が自分で考え始めた面接です。


歓迎すべき場面だと捉えてください。



そして、この見方ができるようになると、本番での心の持ち方が変わります。


追い詰められている場面から、関心を持たれている場面へ。


同じ出来事の受け取り方が変わると、表情まで変わります。



★第9回のまとめ



説得は、話し手の動作です。


納得は、聞き手の状態です。



余白を残す。


根拠を一つに絞る。


語尾を下げる。



この三つの操作は、どれも語りを足す作業ではありません。


引く作業です。



面接官に判断を渡した受験者が、最も高い評価を受け取ります。




河野正夫




 
 
 

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