第7回:子供たちに伝えたいこと 【初歩から学ぶ面接合格戦略】(30回連載シリーズ)
【初歩から学ぶ面接合格戦略】(30回連載シリーズ)
第7回:子供たちに伝えたいこと
「子供たちに伝えたいことは何ですか」
面接で、この問いに出会う場面は多くあります。
一見すると、自由に語れる質問に見えます。
その自由さが、答えをぼやけさせる原因にもなります。
大切な言葉はいくつも浮かびます。
思いやり。努力。挑戦。感謝。
どれも正しく、どれも教育の現場で必要なものです。
今回は、この豊かすぎる素材を、どう一つの答えに仕上げるかを組み立てていきます。

★この質問は、二種類あります
まず、問いの型を聞き分けてください。
一つは、教師として、子供たちに伝えたいことを問う型です。
教科の枠を越えた、人としてのメッセージが問われています。
もう一つは、専門の教科を通じて、子供たちに伝えたいことを問う型です。
教科指導の場面に限定した問いになります。
どちらを問われたのかで、答えの土台が変わります。
問いの言葉をよく聞いてから、口を開いてください。
なお、養護教諭や栄養教諭では、この二つが融合した形になります。
小学校教諭も、理念上はすべての教科を担当する立場ですから、同じく融合した形になります。
★面接官は、徳目の正しさを見ていません
この質問で、面接官が採点しているのは、答えの正しさとは違います。
この受験者は、教壇で何を語る人なのか。
その人物像を見ています。
言い換えれば、受験者の教育観に一本の芯が通っているかどうかを確かめる質問です。
芯があれば、その後の追質問にも同じ方向から答えが返ってきます。
面接官は、その一貫性を見ながら、教壇に立つあなたの姿を思い描いています。
★伝えたいことは、一つに絞ります
ここが、この質問の鉄則です。
複数を並べた瞬間に、どれも面接官の記憶に残らなくなります。
三つ挙げれば、一つあたりの語りは三分の一の長さになります。
どれも浅いまま、面接官の耳を通り過ぎていきます。
一つに絞り、その一つを深く掘る。
絞り込みの基準は、はっきりしています。
自分の経験で裏づけられるかどうかです。
語れる場面を持っている一語を選んでください。
ここで選んだ一語は、面接全体を支える柱になります。
自己アピールとも、志望動機とも、同じ方向を向いているかを確かめておいてください。
★絞り込みの地図として、資質・能力の三つの柱を使います
学習指導要領は、児童生徒に身に付けさせたい資質・能力として、三つの柱を挙げています。
知識・技能。
思考力・判断力・表現力。
学びに向かう力、人間性等。
この三つを、自分の想いを探すための地図として使ってください。
自分が伝えたいことが、この三つのどこに位置するのかを確認します。
位置が定まると、教育課程との整合が自動的に取れます。
指導主事の面接官が納得する土台が、ここで出来上がります。
★もう一つの地図は、生きる力の三本柱です
確かな学力。
豊かな心。
健やかな体。
こちらは、より人間像に近い言葉です。
自分の伝えたいことが、どの柱に根を張っているのか。
ここを確認しておくと、話の輪郭がさらにはっきりします。
★最上位の根拠は、教育基本法にあります
教育基本法は、教育の目的を定めています。
人格の完成。
そして、社会の形成者の育成。
あらゆる「伝えたいこと」は、最終的にこの二つへ着地します。
自分の想いが、この二つのどちらにつながっているのかを確かめてください。
ただし、この二語をそのまま口にすることは避けてください。
理由は、次の項目で説明します。
★法令の言葉を、自分の言葉に翻訳します
ここが、今回の山場です。
「人格の完成を目指して指導します」と述べた瞬間、語りは受験用の作文に変わります。
条文の言葉は、誰の口から出ても同じ響きしか持ちません。
やるべき作業は、翻訳です。
人格の完成とは、自分の言葉で言えば何でしょうか。
自分で自分を育てていける人になること。
誰かの前で、自分の考えを言える人になること。
言い方は、いくらでもあります。
社会の形成者とは、どんな姿でしょうか。
教室で誰かのために動ける子供の姿。
地域の行事で汗をかいていた生徒の姿。
自分が見てきた場面で表現してみてください。
翻訳ができているかどうかは、簡単に確かめられます。
その一文を、教室で子供たちの前に立って言えるかどうか。
子供に向かって言えない言葉は、翻訳がまだ終わっていません。
法令の言葉を使わずに、法令の理念を語る。
この形ができた受験者が、最も高い評価を受け取ります。
地中には、徹底した設計図があります。
地上に見えるのは、自分の言葉だけです。
★教科を通じて伝えたいことは、交差点にあります
教科版で問われた場合は、答えの位置が決まっています。
その教科の本質的な価値と、子供に育てたい力。
この二つが交差する地点です。
志望動機で作った交差点と、同じ根から出てきます。
面接全体を通して、一本の線が通ります。
面接官は、その一貫性を敏感に感じ取ります。
★融合型では、専門性が人間形成につながります
養護教諭であれば、心と体の健康を土台にした人間形成。
栄養教諭であれば、食を通じた人間形成。
小学校教諭であれば、すべての教科を貫く学びへの姿勢。
専門の領域から出発して、人としての育ちへつなげる。
この流れが、融合型の答えの形になります。
専門の領域を持つ立場であるから届けられるものがある、という視点で組み立ててみてください。
★「どう伝えるか」まで語ります
想いだけを述べると、理念の表明で終わります。
日々の授業で、どんな場面を作るのか。
学級経営の中で、どんな関わり方をするのか。
発言を最後まで聞き取る時間を作る。
うまくいかなかった過程に言葉をかける。
そうした具体が一つ入るだけで、現場で働く姿が面接官に見えてきます。
ここが、差のつく地点です。
★第7回のまとめ
伝えたいことは、一つに絞ります。
学習指導要領と教育基本法を、地中の設計図として使います。
その理念を、自分の言葉に翻訳します。
そして、伝える手立てまで語ります。
この四点がそろったとき、あなたの教育観は、面接官の中で一つの人物像を結びます。
河野正夫

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