第8回:事実の伝達より、好感・共感・好印象 【初歩から学ぶ面接合格戦略】(30回連載シリーズ)
【初歩から学ぶ面接合格戦略】(30回連載シリーズ)
第8回:事実の伝達より、好感・共感・好印象
同じ経験が、二通りに語られる場面を見てください。
「講師として、二年間、二年生の担任を務めました。学級通信を週に一回発行し、保護者との連携を図りました。」
「講師として、二年間、二年生の担任を務めました。毎週の学級通信で、その週に子供たちが見せた小さな変化を一つだけ書き続けました。ある保護者の方から、家では見えない顔を知れたと言っていただいたとき、続けてきてよかったと思いました。」
語っている事実は同じです。
担任をしたこと、学級通信を出したこと、保護者と関わったこと。
差を作っているのは、語彙力でも、経験の豊かさでもありません。
事実の上に何を足したか、その一点です。
そして、この足し算は、才能とは関係のない作業です。
手順として覚えれば、誰でも同じ操作ができます。
今回は、その足し算の中身を分解していきます。

★事実は、土台です
事実を削る話ではありません。
いつ、どこで、何をしたのか。
その正確さは、面接の前提になります。
この回で扱うのは、その土台の上に何を積み上げるかという話です。
★三つの感情は、それぞれ生成源が違います
好感・共感・好印象。
この三つは、ひとまとめの標語として扱われがちです。
しかし、生まれてくる場所は、それぞれ違います。
好感は、人柄が見える一言から生まれます。
共感は、面接官が信じている価値観と重なった瞬間に生まれます。
好印象は、話の後味と、語り終えたときの空気から生まれます。
作り方が違うということは、狙って作り分けられるということです。
自分の回答が、三つのうちどれを作れているか。
ここを意識するだけで、原稿の見え方が変わります。
ここから先は、五つの技法として見ていきます。
★技法その一 そのときの自分を、一行足す
「~を行いました」で止まっている文を探してください。
その後ろに、そのときの自分の感情や気づきを一行だけ加えます。
行事の準備を担当しました。
そこに、一行足します。
準備の段階で、普段は目立たない生徒が黙々と動いていることに気づきました。
この一行が、人柄の輪郭を作ります。
足す内容は、立派な決意である必要はありません。
うれしかった、驚いた、申し訳なく思った。
そのときに動いた気持ちを、そのまま置くだけで届きます。
長さは一行で足ります。
何行も重ねると、感想文の色が濃くなっていきます。
★技法その二 制度名と数字を、人の姿に置き換える
「個別最適な学びを実践しました」
この一文を、実際の場面に置き換えてみてください。
その日、一人の生徒が同じ問題で止まっていた。
となりの生徒は、三問先へ進んでいた。
その二人に、違うプリントを渡した。
抽象的な言葉は、面接官の頭に残ります。
人の姿は、面接官の心に残ります。
数字も同じです。
参加率が八割になりました、という報告より、最後まで手を挙げなかった一人が手を挙げた場面の方が、強く届きます。
置き換えの手順は単純です。
その言葉を使った日の教室を思い出し、そこに誰がいたかを思い出す。
その一人を、文の中に登場させる。
これだけです。
★技法その三 主語を、自分から子供へ移す
「私は、粘り強く指導しました。」
この形の文は、自分の功績の報告になります。
主語を入れ替えてみてください。
「その子は、三週間目に、自分から質問に来るようになりました。」
子供の変化を語る形にすると、面接官の中に教師としてのあなたの姿が立ち上がります。
自分を語らずに、自分を伝える形です。
五つの技法の中で、好感が最も強く生まれる技法になります。
★技法その四 面接官の信条に触れる一語を置く
共感を作る技法です。
面接官は、管理職として日ごろ大切にしている価値観を持っています。
子供を見る目。
同僚との協働。
保護者への誠実さ。
このどれかに触れる一語を、自分の経験の中に埋め込みます。
一人で解決しようとせず、学年主任の先生に相談しました。
この一言で、協働という価値観に触れることができます。
保護者の方に、その日のうちに電話を入れました。
この一言で、誠実さという価値観に触れることができます。
言葉として掲げる必要はありません。
経験の中に、自然に置いておくだけで届きます。
★技法その五 語り終わりの一文を設計する
好印象は、最後の一文の後味で決まります。
事実の報告で終わる締めがあります。
「そうした経験をしてきました。」
これからの姿勢を置く締めがあります。
「そのとき気づいたことを、教壇に立ってからも続けていきたいと考えています。」
同じ話でも、最後の一文で、面接室に残る空気が変わります。
締めの一文は、あらかじめ用意しておいてください。
本番で考え始めると、語りの最後が失速します。
★自分の回答を点検してみましょう
手元の原稿で、すぐにできる作業があります。
まず、自分の回答から、事実だけを述べている行に線を引いてください。
いつ、どこで、何をしたか。
その行を、すべて消してみます。
残った行が、いくつあるでしょうか。
残りが少なければ、そこが伸びしろです。
消した行の後ろに、一行ずつ足していってください。
この作業を、用意してあるすべての回答に対して行います。
一つの回答につき、数行の追加で終わります。
その数行が、評価を動かします。
★第8回のまとめ
事実は土台です。
その上に、五つの技法を積みます。
そのときの自分を一行足す。
制度名と数字を、人の姿に置き換える。
主語を、自分から子供へ移す。
面接官の信条に触れる一語を置く。
語り終わりの一文を設計する。
好感・共感・好印象は、それぞれ違う装置で作れます。
装置の存在を知っている受験者が、狙って高い評価を取りにいけます。
河野正夫

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