第5回 自己アピール 【初歩から学ぶ面接合格戦略】(30回連載シリーズ)
【初歩から学ぶ面接合格戦略】(30回連載シリーズ)
第5回 自己アピール
★自己アピールは、最も準備の効く質問です
面接では、さまざまな質問が飛んできます。
その中で、自己アピールは、ほとんどの面接で問われる質問です。
そして、この質問には、大きな特徴があります。
何を語るかを、受験者自身が選べるという特徴です。
志望動機や教育課題への考えは、問われ方によって答えの方向が決まります。
けれども自己アピールは、自分の持っている材料の中から、自分で一つを選んで差し出す質問です。
選べるということは、準備が結果に直結するということでもあります。

★面接官は、自己アピールで何を見ているか
自己アピールは、あなたという人物の予告編です。
面接官は、この短い語りを聞きながら、頭の中で一つの場面を思い描いています。
この人が教室に立っている場面です。
子供たちの前で、保護者の前で、職員室で、どのように振る舞う人なのか。
第3回でお伝えした「好感・共感・好印象」は、この質問で最も強く働きます。
つまり、能力の高さを証明する質問というよりも、一緒に働く姿を想像してもらう質問です。
その視点で材料を選ぶと、語る内容が変わってきます。
自分の優秀さを伝える話よりも、人と関わってきた話のほうが、面接官の中に場面が浮かびます。
★材料は、実績の大きさで選ぶ必要はありません
自己アピールの準備で、多くの方が最初に立ち止まるところがあります。
語れるほどの実績が自分にはあるだろうか、という迷いです。
ここで、基準を一つ持っていただきたいと思います。
選ぶべき材料は、大きな実績ではなく、教職の仕事につながる経験です。
基準は、次の3つです。
1.子供や人と関わった経験であること。
2.自分が何かを判断し、動いた場面が含まれていること。
3.教員になってからも同じ力を使う場面が想像できること。
大学のゼミで後輩の相談に乗り続けた経験。
講師として担任の先生を支え、休み時間に一人の子と関わり続けた経験。
会社で新人の育成を任され、伝え方を工夫した経験。
どれも立派な材料です。
大会の成績や資格は、それ自体が評価されるというより、そこに向かう過程の中で何をしたかが評価されます。
日々の暮らしの中にある経験のほうが、教室での姿を思い描いてもらいやすい場合も多くあります。
★組み立ての型
第4回でお伝えしたPREP法を、自己アピールの形に展開します。
次の4段で組み立てます。
1.強みを一言で示します。
2.その強みが育った経験を語ります。
3.その経験の中で、自分が何をしたかを具体的に語ります。
4.教員として、その強みをどう活かすかで締めます。
この順番には理由があります。
最初に結論を置くと、聞き手はその後の話を整理しながら聞けます。
途中の具体的な場面が、その結論を裏づけます。
そして最後に教職の場面へ着地させることで、話が採用の判断につながります。
特に大切なのは、3段目の具体的な場面です。
「粘り強く取り組みました」という言い方だけでは、聞き手は場面を思い描けません。
誰に対して、何をして、その結果どうなったのか。
ここを一文か二文で語れると、強みの言葉に実感が宿ります。
★材料は一つに絞ります
面接での一つの回答は、1分前後です。
文字に置き換えると、300文字ほどになります。
この分量の中に、強みを二つも三つも詰め込むと、どれも浅くなります。
一つの強みを、一つの経験で支える。
この形が、限られた時間の中で最も深く伝わります。
伝えたいことが複数ある場合は、面接全体の中で配分していきます。
面接には、志望動機も、教育課題への質問も、場面に関する質問もあります。
自己アピールで語りきれなかった材料は、別の質問で使えます。
★冒頭の一文で決まります
「私の強みは、○○です。」
この形で言い切って始めてください。
聞き手は、最初の10秒ほどで、その後をどう聞くかの姿勢を決めます。
最初に結論が示されると、面接官は安心して耳を傾けます。
前置きから入る形は、聞き手に整理の負担をかけます。
一言目を短く、はっきりと。これだけで、印象は変わります。
★語り方も、内容の一部です
同じ原稿でも、話す人の表情や間の取り方で、伝わり方は大きく変わります。
自己アピールは、話し手の温度が最も出る質問です。
自分の経験を語るときに、その場面を思い出しながら話せているか。
面接官は、そこを敏感に感じ取ります。
原稿を整えたら、必ず声に出して練習してください。
書いた文章を黙って読むだけでは、言いにくい箇所に気づけません。
声に出すと、長すぎる一文や、息の続かない言い回しがすぐに分かります。
話しながら直し、直してからまた話す。
この往復が、本番で落ち着いて語れる状態をつくります。
★追質問に耐える形にしておきます
自己アピールは、ほぼ確実に追質問を呼びます。
その経験は、いつのことですか。
そのとき、うまくいかなかったことはありましたか。
語ったエピソードの前後の事情を、自分の中に持っておいてください。
語る部分は300文字でも、その背後に厚みがあると、追質問で崩れません。
★まとめ
自己アピールは、自分の中にあるものを、届く形に整える作業です。
大きく見せる工夫よりも、選び方と組み立て方が結果を分けます。
材料を一つ選び、型に沿って組み立て、声に出して確かめる。
この手順を踏めば、自己アピールは確実に強くなります。
そして、この作業を一度きちんと行うと、他の質問の答えも作りやすくなります。
自分の経験を語る言葉が、すでに手元にそろっているからです。
次回は、志望動機(学校種・教科編)を扱います。
河野正夫

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