第7回:指導の工夫と学びの保障(授業づくり)【講師枠・臨採枠・現職枠で受験する人のために】
- 河野正夫
- 14 分前
- 読了時間: 6分
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第7回:指導の工夫と学びの保障(授業づくり)
子どもの学びを中心に据えた授業観と、個別・協働を支える実践設計
教員採用試験の面接において、「授業づくりにおける工夫」「子ども一人ひとりへの学びの保障」「ICTの活用」「協働的な学びの導入」といったテーマは、指導力を見極めるうえで欠かせない評価観点です。
とりわけ経験者枠においては、「実際にどのような授業を行ってきたか」「その中で子どもの学びをどう支えてきたか」が、理念と実践の両面から問われることになります。
本稿では、子どもを中心に据えた授業観を起点に、個別最適な学び・協働的な学び・ICT・ユニバーサルデザインといった複数の観点を織り交ぜながら、経験者として語るべき授業の構造と語りの技法を整理します。

授業観は「教師中心」から「学び中心」への転換を問われている
面接において問われる「授業観」とは、単なる教材の提示方法や進行の工夫にとどまらず、そもそも授業とは何のために行うものか、子どもにとっての学びの意味とは何かといった、教育観に根ざした視座を含んでいます。
とりわけ近年の教育動向では、「学習者主体」の授業への移行が重視されており、「教える授業」から「学びを保障する授業」への転換が求められています。
つまり、教員が「何を教えたか」よりも、「子どもが何を理解したか」「どのように気づいたか」「どう他者と関わったか」といった、学びのプロセス全体が重視されるようになってきています。
こうした授業観の変化を面接で語る際には、抽象的な用語の羅列ではなく、自らの実践との結びつきを具体的に示す必要があります。
経験を通じて、学び中心の授業観にどのようにたどり着いたか、それをどのように授業の構成や場面に反映しているかを語ることが重要です。
個別最適な学びを支える「見取り」と「手だて」
「個別最適な学び」とは、すべての子どもが自分のペースやスタイルに応じて学びを深められるようにするための教育的アプローチです。
面接では、「一人ひとりに配慮しています」という表現だけでは不十分です。
具体的にどのような「見取り」を行い、それに基づきどのような「手だて」を講じたのかが問われます。
たとえば、「ある児童が説明場面で集中できない様子が見られた」という観察から、「授業の導入を視覚支援に切り替える」「指示の量を減らす」「ICT教材を使ってテンポを保つ」といった具体策に至るまでのプロセスを丁寧に語ることが、実践的力量の証となります。
さらに、学びの保障とは、「できない子に補助を与えること」に限りません。
すでに理解している子どもに対して、より深い思考を促す課題を提示することで、学びの幅と深さの両方に対応できる授業設計が求められます。
協働的な学びと集団による学習の相互性
現代の教育では、「対話」や「協働」を重視した学びの場面が多く求められています。
これは、知識を個人で習得するだけでなく、他者と関わりながら学び合う力、言語化する力、関係性を築く力を育てるために欠かせないものです。
面接では、「グループ活動を取り入れています」といった表面的な語りにとどまらず、「どのような目的のもとに協働を設計したのか」「どのような関わりが生まれたか」「子どもたちにどんな変化が見られたか」までを含めて語ることが求められます。
たとえば、「理科の実験で意見交換の時間を設けたところ、意見がぶつかることもあったが、ファシリテーション役を子ども自身に設定することで、意見の尊重と合意形成が成立するようになった」といった語り方は、教育的意図と実践が結びついている印象を与えます。
ICTやユニバーサルデザインを授業にどう組み込むか
ICTの活用やユニバーサルデザインの視点は、授業設計において近年強く注目されている領域です。
これらを語る際には、「使っていること」そのものではなく、「なぜそのツールを選んだのか」「子どもの学びにどのような効果をもたらしたのか」といった目的意識と結果が語られる必要があります。
たとえば、「Googleスライドを使って意見を可視化した」「一人一台端末で振り返りジャーナルを記録させた」「デジタル教材でのタイムラグを逆手に取ってペア解説を組み込んだ」といった具体策と、それによって子どもの思考の深まりや意欲の変化が見られたという事実がセットで語られると、授業づくりの力量が伝わります。
ユニバーサルデザインの視点では、「すべての子どもにとって分かりやすく」「つまずきの手前で支援が届く」授業設計が大切になります。
板書の整理、教材の多様性、問いかけの工夫、身体の動きを取り入れた理解促進など、日々の細かな工夫が、学びの保障に直結します。
語りの構成:
指導の工夫と授業観を伝える4つの視点
面接で「授業づくり」に関する質問を受けた際には、次の4つの視点で語ると、理念と実践が融合した構造的な語りになります。
1.授業観の提示:
どのような学びを目指しているか
まず、自分の授業観を端的に言語化します。
たとえば、「学びの中で自ら問いをもてる授業」「他者との対話を通して考えを広げられる授業」など、目指す学びの姿を明確に伝えます。
2.実態の共有:
子どもたちの反応や学びの傾向
次に、実際の子どもたちの様子を具体的に描写します。
どのような困難があったか、どのような特性をもつ子がいたか、何を課題と感じたかを示すことで、次の「手だて」の必要性が理解されやすくなります。
3.工夫の紹介:
どのような方法で授業を設計したか
ここでは、ICTやユニバーサルデザイン、協働学習、個別最適化といったキーワードに関連する具体的な工夫を紹介します。
その工夫が、どのような理念や学習観に基づいているかを併せて示すと、単なる方法紹介に終わりません。
4.学びの成果と次への展望
最後に、その工夫によって子どもたちにどのような学びの変化が見られたかを語ります。
同時に、「今後はさらに〇〇の視点を強化したい」「個に応じた支援と集団による学びを両立させたい」といった展望を語ることで、継続的に成長していく姿勢を表現できます。
総括:
第7回のまとめ
☆授業観は「教える中心」から「学びの保障」への転換が求められている
☆個別最適な学びには、日々の「見取り」と「具体的な手だて」が欠かせない
☆協働的な学びでは、「意図」と「変化」の両面を語ることで説得力が増す
☆ICTやユニバーサルデザインの活用は、目的と結果を明確に語ることが重要
☆面接では、「授業観→実態→工夫→成果と展望」の構成で語ると効果的
次回(第8回)は、「保護者・同僚との連携の語り方」を扱います。教員は教室内だけでなく、家庭・職員室・地域といった多様なコミュニティと関わりながら子どもを支えています。
その中で、信頼を築き、協働を実現していく語り方について、実践を踏まえて解説していきます。
河野正夫
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