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第5回:ロゴス 筋道をどう通すか。【面接で満点合格を目指すためのレトリック理論講座】(20回連載シリーズ)

執筆者の写真: 河野正夫
河野正夫
20 時間前
読了時間: 8分

【面接で満点合格を目指すためのレトリック理論講座】(20回連載シリーズ)


第5回:ロゴス 筋道をどう通すか



★最も弱い経路に、なぜ一回を使うのか



第2回で、ロゴスを最も弱い経路としました。


エトスが最も強く、パトスが次に強く、ロゴスが最も弱い。


この順序は、変わりません。


それでも、一回分を使う理由があります。


弱いけれども、崩れると他の二つが死ぬからです。



筋道が通っていなければ、信頼は続きません。


話が散らかっていれば、感情も動きません。



ですから、今回の方向は、ロゴスを厚くすることではありません。


最小限の労力で、確実に満たす方法を扱います。





★ロゴスは、正しさではありません



ここが、出発点です。


多くの受験者は、ロゴスを正しさだと考えています。



正確な知識。


法令との整合。


施策との一致。



これらは、内容の属性です。



面接のロゴスは、別のものを指します。


聞き手が、最後まで追いかけられるかどうか。



正しさは、内容の中にあります。


筋道は、聞き手との関係の中にあります。



ここを混同すると、正しさの量を増やす方向へ進みます。


そして、増やすほど追いかけにくくなります。



正しいことを言っているのに伝わらないという状態は、ここから生まれます。



★三つの経路に共通すること



ここで、三回分をつなげておきます。



エトスは、聞き手が判断するものでした。


自分で名乗れません。



パトスは、聞き手の中に生じるものでした。


自分が感情的になることではありません。



ロゴスは、聞き手が追いかけられるかどうかでした。


自分が正しいこととは、別です。



三つとも、判定の場所が聞き手の側にあります。



第1回で述べた本質が、ここで三方向から確認できます。



★面接のロゴスは、二つの形で動きます



では、面接のロゴスは、どういう形を取るのでしょうか。



古典レトリックは、二つの形を挙げています。



例証。


エンテュメーマ。



数学で習うような厳密な証明は、面接では使いません。


この二つだけで動きます。



順に見ていきます。



★例証 一つの場面が、主張を支えます



例証とは、具体的な事例から主張を支える形です。



「生徒が自分から動き出す場面を大切にしています」



この主張だけでは、ロゴスが立ちません。


根拠がないからです。



ここに、一つの場面を置きます。



発表を嫌がっていた生徒が、班の中でなら話せるようになり、やがて全体の場でも手を挙げた。



主張と場面が対応していれば、それでロゴスは成立します。


面接のロゴスは、ほとんどがこの形です。


そして、ここに大きな利点があります。



例証は、パトスと同時に働きます。



場面を語れば、映像が立ち上がります。


映像が立ち上がれば、感情も動きます。



一つの材料で、二つの経路を満たせます。



★エンテュメーマ 結論を聞き手に置かせます



ここが、今回の中心です。



エンテュメーマという言葉は、聞き慣れないと思います。


日本語では、省略三段論法と訳されることがあります。



簡単な例から説明します。



友人に、こう言う場面を考えてください。



「傘を持っていったほうがいいよ。空が暗いから」



この一言で、相手は納得します。



では、ここで省略されているものは何でしょうか。



省略を全部埋めると、こうなります。



空が暗い。


空が暗いときは、雨が降ることが多い。


だから、傘を持っていったほうがいい。



真ん中の一行が、省略されていました。


そして、聞き手は、その一行を自分で埋めています。


無意識に、瞬時に埋めています。



これが、エンテュメーマです。



ここで、大切な点があります。


省略を全部埋めて話すと、どうなるでしょうか。



「空が暗い。空が暗いときは、雨が降ることが多い。だから、傘を持っていったほうがいい」



こう言われた相手は、どう感じるでしょうか。


そんなことは分かっている、と感じます。


子ども扱いされたように感じます。



つまり、全部言うことは、効率が悪いだけではありません。


聞き手を見下した形になります。



★面接では、どう使うのでしょうか



面接に当てはめてみます。


全部言う形を、まず見てください。



「その生徒は、卒業の日に、あのとき話を聞いてくれてありがとうと言ってくれました。生徒に寄り添えば、生徒は信頼を寄せてくれます。ですから私は、生徒に寄り添える教師だと考えています」



三行目を言った瞬間に、何が起きるでしょうか。



面接官は、押しつけられたと感じます。


そして、自分で判断する余地を失います。



エンテュメーマの形にします。



「その生徒は、卒業の日に、あのとき話を聞いてくれてありがとうと言ってくれました」



ここで止めます。


結論は、言いません。



すると、面接官の中で何が起きるでしょうか。



この人は、生徒の話を聞ける人なのだろう。


そういう結論が、面接官の側で生まれます。



自分で置いた結論は、与えられた結論よりはるかに強く残ります。



前の連載で、言い切らずに止めると述べました。


その理由が、ここにあります。



エンテュメーマは、聞き手に仕事をさせる技術です。


仕事をした聞き手は、自分の結論として納得します。



★どこまで省略すればよいのでしょうか



省略には、加減があります。



省略しすぎると、聞き手は埋められません。


話が飛んだように感じます。


省略が足りないと、押しつけになります。



目安は、一段だけです。


場面を語り、そこから出てくる当たり前の一歩を、聞き手に渡す。


このくらいが、ちょうど埋められる幅です。


二段も三段も飛ばすと、届きません。



★筋道を通す五つの条件



実際の作業に落とします。


五つの条件を満たせば、ロゴスは通ります。



1.問いに正対する。



これが、最も重要です。


面接でロゴスが崩れる最大の原因は、論理の粗さではありません。


聞かれたことと、答えたことがずれることです。



学級経営の方針を問われて、志望動機を語り始める。


困難への対処を問われて、理念を述べる。



この時点で、筋道は切れています。


まず、問いに正対してください。



2.結論を先に置く。



最初の一文で、何を答えるのかを示します。


聞き手は、方向が分かっていれば追いかけられます。


分からないまま聞くと、途中で追えなくなります。



3.根拠は一つに絞る。



三つ並べると、どれも浅くなります。


一つに絞ると、細部まで語れます。


細部のある根拠が、最も強く働きます。



4.一文に、一つの内容だけを入れる。



二つの内容を一文に入れると、音では追えません。


短く切ってください。



5.抽象の階段を上りすぎない。



抽象的な言葉が二つ続くと、聞き手の中で像が消えます。


主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善の推進。


この種の連なりは、音として聞くと内容が残りません。


抽象を一つ置いたら、次は具体に降りてください。



★知識は、ロゴスの材料にすぎません



ここで、誤解を一つ解きます。



教育法規を覚える。


学習指導要領を読み込む。


自治体の施策を調べる。



これらは、ロゴスの材料を集める作業です。



ただし、集めた材料を並べることは、ロゴスではありません。


知識は、筋道に組み込まれてはじめてロゴスになります。



主張があり、その主張を支える位置に知識が置かれている。


この形でなければ、知識は働きません。


並べただけの知識は、聞き手にとって追いかける対象になりません。



★ロゴスは、最小限で確実に満たします



配分の話です。


ロゴスは、必要条件です。


満たさなければ、他の二つが立ちません。


しかし、満たした以上に積み増しても、評価は伸びません。



ですから、こう考えてください。



ロゴスは、確実に満たす。


そして、そこで止める。



浮いた時間を、エトスとパトスに移す。


多くの受験者は、ロゴスを厚くする方向に時間を使っています。


その時間の一部を移すだけで、語りの強さが変わります。



★自分のロゴスを点検します



今日からできる作業です。


用意してある回答を、声に出して読んでください。



そして、五つの条件を確認します。



問いに正対しているか。


最初の一文に結論があるか。


根拠は一つに絞られているか。


一文に二つの内容が入っていないか。


抽象語が続いていないか。



ここで一つ、便利な方法があります。


自分以外の人に読んでもらい、要点を一言で言い返してもらってください。


言い返せれば、筋道は通っています。


言い返せなければ、どこかで切れています。



★第5回のまとめ



ロゴスは、正しさではありません。


聞き手が追いかけられるかどうかです。



面接のロゴスは、二つの形で動きます。


例証と、エンテュメーマです。


とりわけ、エンテュメーマが強く働きます。


結論を言わずに止めると、聞き手が自分で結論を置きます。



筋道を通す条件は、五つです。



問いに正対する。


結論を先に置く。


根拠を一つに絞る。


一文に一つの内容。


抽象を続けない。



そして、ロゴスは最小限で確実に満たします。


ここまでで、三つの経路がそろいました。



次回は、第一部の最後として、語りの様式の選択を扱います。





河野正夫


 
 
 

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