第28回:面接はサイエンス。【初歩から学ぶ面接合格戦略】(30回連載シリーズ)
【初歩から学ぶ面接合格戦略】(30回連載シリーズ)
第28回:面接はサイエンス
<合格のためには、今回の記事は、必読です!>
★サイエンスとは何かを、定義します
最初に、言葉の中身をはっきりさせておきます。
科学とは、次の手続きのことです。
観測する。
測定する。
仮説を立てる。
検証する。
理論化する。
再現できる状態にする。
この六つがそろって、科学になります。
精密な機器は、必要条件ではありません。
白衣も、実験室も、必要ありません。
手続きが、科学を科学にします。
ですから、面接も科学の対象になります。
手続きを踏めば、科学として扱えます。

★現在の面接指導は、何に基づいているか
日本の教員採用試験の面接指導は、多くの場合、次の四つに基づいています。
1.指導者の経験のみ。
2.指導者の美学や精神論。
3.指導者の思いつきや思い込み。
4.限られた合格者のサンプル。
一つずつ、検討していきます。
★経験のみに基づく指導の限界
経験は、貴重な材料です。
長年、受験者を見てきた目には、見るべき値があります。
ただし、材料と理論は別のものです。
一人の指導者が見てきた受験者の数には、限りがあります。
その経験は、特定の自治体・学校種・教科に偏るかもしれません。
特定の年代に偏ります。
特定の属性に偏ります。
偏った標本から導いた規則は、別の条件では機能しません。
そして、もう一つ大きな問題があります。
経験則は、反証されません。
その規則どおりにやって不合格になった場合、どう処理されるでしょうか。
多くの場合、本人の努力不足、あるいは、こういうこともあるとして処理されます。
規則そのものが疑われることはありません。
反証されない規則は、科学の外側にあります。
★美学と精神論に基づく指導の限界
誠実であれ。
熱意を持て。
一生懸命やれ。
子どもへの愛を示せ。
これらは、人として正しい言葉です。
聞いていて、気持ちも引き締まります。
しかし、検証できません。
誠実さを、どう測るのでしょうか。
熱意が、どの程度あれば足りるのでしょうか。
測定できないものは、改善の対象になりません。
測れないものは、動かせません。
精神論で指導を受けた受験者は、次の面接で何を変えればよいのかが分かりません。
もっと頑張る、という以外の答えが出てこないからです。
★思いつきと思い込みに基づく指導の限界
必ず「はい」で始める。
必ず三点挙げる。
必ず笑顔を保つ。
必ず一分以内にまとめる。
こうした規則には、たいてい根拠が示されません。
誰が、いつ、どのように検証したのか。
その手続きが、存在しません。
ここで誤解のないように書いておきます。
規則が間違っているとは限りません。
有効な場合もあります。
問題は、正しいかどうかを確かめる方法がないことです。
★限られたサンプルに基づく指導の限界
ここが、最も見落とされやすい点です。
合格者の語りを集めて分析し、そこから規則を作る。
一見、科学的な手続きに見えます。
しかし、合格者だけを見ると、重大な誤りが生まれます。
同じことをしていた不合格者が、視野に入らないからです。
例を挙げます。
合格者の全員が、明るく話していたとします。
だから、明るく話すことが合格要因だと結論づけます。
ところが、不合格者も全員が明るく話していたとしたら、どうでしょうか。
明るさは、合格要因ではありません。
合格者と不合格者を分けた要因は、別のところにあります。
比較する対象を持たない分析は、結論を出せません。
合格者の共通点を数えるだけでは、科学になりません。
★なぜ、こうなるのでしょうか
ここは、指導者の資質の問題ではありません。
構造的な理由があります。
面接の結果は、一度しか観測できません。
同じ受験者で、条件を変えて試すことができません。
不合格の理由は、開示されません。
評価票は、本人にも指導者にも見えません。
手元にあるサンプルは、自分の受講生に限られます。
全国の受験者全て(しかも、合格者及び不合格者)のデータを持っている人は、いません。
この条件下では、誰が指導しても経験則に寄ります。
構造が、そうさせています。
ですから、この構造を越える方法が必要になります。
★コミュニケーション理論とレトリック理論は、サイエンスです
ここから、本題に入ります。
レトリックは、古代ギリシャに起源を持つ学問です。
アリストテレスが『弁論術』を書いて以来、人が人を納得させる仕組みは、二千年以上にわたって体系的に研究されてきました。
どのような語りが、人の心を動かすのか。
なぜ、動くのか。
どういう条件で、動かなくなるのか。
これらが、学問として積み上げられています。
そして現代では、コミュニケーション理論として、厳密な観測と実験の対象になっています。
どのような語りが、どのような受け手に、どのような反応を生むのか。
膨大なデータと、精緻な理論が蓄積されています。
経験則ではありません。
再現可能な理論です。
★欧米では、この理論が実務で使われています
応用の広がりを見てください。
マーケティング理論。
広報理論。
選挙戦略。
企業の危機管理広報。
世論の分析。
これらは、すべてコミュニケーション理論とレトリック理論の応用分野です。
そして、いずれも厳密なサイエンスに基づいて運用されています。
どの言葉を選ぶか。
どの順序で並べるか。
どの表情で語るか。
どの媒体で、どのタイミングで届けるか。
すべてが、観測と検証を経て決定されます。
大きな金額が動き、組織の存続が左右される場面です。
そこで、思いつきや精神論が使われることはありません。
★教員採用試験の面接も、同じ場です
ここで、教員採用試験の場面に接続します。
面接は、人が人を評価する場です。
そこで働いているのは、マーケティングや選挙戦略で扱われているものと、同じ仕組みです。
好感を、どう生むか。
共感を、どう生むか。
好印象を、どう残すか。
相手の信条に、どう接続するか。
記憶に、何を残すか。
これらは、すべて理論として扱える対象です。
そして、理論として扱えば、再現できます。
一人の受験者でうまくいった方法が、別の受験者でも機能します。
条件が違えば、条件に応じて調整できます。
これが、理論を持つことの意味です。
★科学的なアプローチとは、具体的に何をすることか
この連載で扱ってきたことを、科学の手続きとして並べ直してみます。
観測。
面接官が誰で、何を見ているかを特定します。
測定。
自分の語りと見え方を、録音と動画で記録します。
仮説。
この語りなら、この反応が返るという予測を立てます。
検証。
実際に試し、返ってきた反応を記録します。
理論化。
うまくいった理由を言語化し、他の質問にも適用します。
再現。
条件を変えても同じ結果が出るかを確かめます。
この手続きを踏めば、面接は科学的に扱えます。
そして、この六つのどこかが抜けている準備は、まだ科学になっていません。
★自分の準備が科学的かを点検します
実際に使える判定基準を示します。
いま受けている指導、あるいは自分で立てた準備について、次を問いかけてください。
1.その規則には、根拠があるか。
2.その根拠は、検証されたものか。
3.うまくいかなかった場合に、何を修正すればよいかが分かるか。
4.測定できる形になっているか。
答えられない項目があれば、その部分はまだ科学の外側にあります。
四つのうち、特に三番目が重要です。
結果が出なかったときに、次に何を変えるべきかが分かる。
これが、科学的な準備の最大の利点です。
精神論で臨んだ場合、変えられるものは気持ちだけになります。
科学的に臨んだ場合、変えられる要素が明確に残ります。
★第28回のまとめ
面接の指導は、経験、美学、思いつき、限られたサンプルに基づいて行われることが多くあります。
その背景には、構造的な理由があります。
観測が一度しかできず、理由も開示されない。
この条件が、経験則への依存を生みます。
一方で、コミュニケーション理論とレトリック理論は、二千年の蓄積を持つサイエンスです。
マーケティング、広報、選挙戦略。
大きなものが動く場面では、この理論が厳密に運用されています。
面接も、同じ場です。
観測し、測定し、仮説を立て、検証し、理論化し、再現する。
この手続きを踏んだ受験者が、合格を確実なものにしていきます。
河野正夫

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