第27回:語りの型は重要ながら型にはまると沈没する。【初歩から学ぶ面接合格戦略】(30回連載シリーズ)
【初歩から学ぶ面接合格戦略】(30回連載シリーズ)
第27回:語りの型は重要ながら型にはまると沈没する
★型は、必要なものです
最初に、はっきりさせておきます。
今回は、型を否定する回ではありません。
結論を先に置く。
一文を短く切る。
具体例を入れる。
最後に結論へ戻る。
これらは、すべて型です。
そして、すべて有効です。
型のない語りは、聞いている側に負担をかけます。
どこへ向かう話なのかが分からないまま、言葉が流れていきます。
型は、持っておくべきものです。
問題は、その使い方にあります。

★型が働く層と、型が壊す層
ここが、今回の中心です。
型が働くのは、一つの回答の内部です。
一つの質問に答える一分以内の語り。
この中では、構造があるほど伝わります。
結論が先にあり、理由が続き、場面が入る。
聞いている側は、楽に理解できます。
型が壊すのは、面接全体の運用です。
同じ形式を、全問にわたって反復する。
すると、聞いている側に、反復として知覚されます。
層が違います。
一つの回答の中では型を使う。
面接全体では、型を見せない。
この二階建ての構造を押さえてください。
★「はい」と「以上です」の指導について
具体例を一つ、取り上げます。
指導者によっては、面接の回答を必ず「はい」で始め、「以上です」で終わると指導しています。
確かに、分かりやすい話し方です。
答えの始まりが、はっきりします。
答えの終わりも、はっきりします。
面接官は、聞き取りやすくなります。
一問だけを切り出せば、良い形です。
しかし、二十分から三十分の面接で、すべての回答をこの形で続けるとどうなるでしょうか。
一問目。
「はい。私は……以上です」
二問目。
「はい。私は……以上です」
三問目。
「はい。私は……以上です」
四問目あたりで、面接官は形式に気づきます。
十問目には、次に何が来るか分かっています。
話し始める前から、終わり方まで予測できます。
そして、形式が見えた瞬間に、語りの性質が変わります。
その人の言葉として聞かれていたものが、受験のために用意された語りとして受け取られます。
自然さが失われます。
評価が下がります。
★なぜ、反復が自然さを奪うのでしょうか
構造を見ておきます。
人の自然な会話には、ゆらぎがあります。
短く答える場面があります。
長く語る場面があります。
すぐ答える場面があります。
少し考えてから答える場面があります。
完全に一定の形式は、自然な会話には現れません。
ですから、一定であること自体が、情報を発します。
これは作られたものだ、という情報です。
レトリックは、それがレトリックだと分かった瞬間に、すべての力を失います。
形式の反復は、レトリックを自分から名乗り出させる行為になります。
★面接官の側で起きていること
面接官の受け取り方も、見ておきましょう。
面接官は、一日に何十人もの受験者を見ます。
同じ形式が並ぶと、個体の区別がつかなくなります。
誰がどの話をしたのか、記憶の中で混ざっていきます。
そして、形式の整った語りは、記憶に残りません。
面接官の中に残るのは、情景を伴う場面と、印象的な一言です。
整った形式は、その両方を押しのけてしまいます。
形式を整えるほど、残らない語りになる。
ここに、落とし穴があります。
★どうするのか その一 型を複数持ちます
ここから、実践に入ります。
型を一つだけ持つと、反復になります。
複数持てば、使い分けられます。
結論から入る型。
「私が大切にしたいのは、安心して過ごせる学級です」
場面から入る型。
「講師として担任をしたとき、こんなことがありました」
問いを受け止めてから入る型。
「難しい場面だと思います。私であれば、こう動きます」
短く一言で返す型。
「子どもの安全を、何よりも先に確認します」
質問の性質によって、入り方を変えます。
同じ人物が語っていても、入り方が違えば、形式は見えません。
★その二 長さを変えます
すべての回答を同じ長さで返すと、形式が見えます。
長く語る回答を、三つから四つに絞ってください。
残りは、短く返します。
短い回答が混じると、長い回答の重みが増します。
逆に、すべてを長くすると、どれも平板になります。
面接官は、どこが大切な話なのかを判断できません。
長さの配分も、戦略の一部です。
★その三 「以上です」を使う場所を決めます
「以上です」には、使ってよい場面があります。
長く語った回答の最後。
複数の要素を挙げた回答の締め。
こうした場面では、終わりを示す働きがあります。
一方、一言で答えた回答に「以上です」を付けると、過剰になります。
「はい」も同じです。
毎回付けると、形式として見えます。
使うべき場面を、あらかじめ決めておいてください。
全問で使うという決め方は、やめてください。
三問に一度、あるいは長い回答のときだけ。
そうした配分にします。
★その四 語り終わりを、毎回変えます
締めの形を、いくつか用意しておきます。
実践の決意で締める。
「そうした学級を、作っていきたいと考えています」
子どもの姿で締める。
「あの生徒が見せた表情を、何度も思い出します」
短く言い切って止める。
「ここを、大切にしています」
余白を残して止める。
「その子は、卒業の日に、ありがとうと言ってくれました」
締めが変わると、同じ人物が語っていても、反復にはなりません。
★型から自由になる条件
ここで、一つ確認しておきます。
型を外して話せるのは、語りが定着している受験者だけです。
暗記で止まっている状態では、型を外すと崩れます。
型が、唯一の支えになっているからです。
定着していれば、型を手放しても、人物像が残ります。
型は、支えから選択肢に変わります。
ですから、順序があります。
まず、型を身につけます。
次に、語りを定着させます。
その上で、型を使い分けます。
最初から型を外そうとすると、ただ崩れた語りになります。
★型は、見えなくなるまで使い込みます
到達点を示します。
型を使っていることが面接官に見えている状態は、まだ途中です。
型が体に入り、型に沿っていることを本人も意識しなくなった状態。
ここが、到達点です。
日本庭園を思い出してください。
設計は、徹底します。
その設計が見えないところまで、仕上げます。
語りの型も、同じです。
徹底して型を使い込み、型が見えなくなるまで磨く。
そこまで到達した語りは、自然な対話として面接官に届きます。
★第27回のまとめ
型は、必要なものです。
ただし、型が働くのは、一つの回答の内部です。
面接全体で反復すると、形式が見えてしまいます。
型を、複数持つ。
回答の長さを、変える。
締めの形を、変える。
「はい」と「以上です」は、使う場所を決める。
そして、型が見えなくなるまで使い込む。
型を持たない受験者は、沈みます。
型にはまった受験者も、沈みます。
型を持ち、型を使い分けられる受験者が、合格を勝ち取ります。
河野正夫

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