第25回:暗記と理解・定着の違い。【初歩から学ぶ面接合格戦略】(30回連載シリーズ)
【初歩から学ぶ面接合格戦略】(30回連載シリーズ)
第25回:暗記と理解・定着の違い
★脚本ができあがったあと、何をするのでしょうか
脚本が、完成しました。
戦略に基づいて設計されています。
自分の経験と、自分の言葉で書かれています。
声に出して、音の検証も済んでいます。
さて、ここから何をするでしょうか。
多くの受験者が、次の作業として暗記を始めます。
何十回も読み返します。
そらで言えるようにしていきます。
言葉が一つも抜けなくなるまで、繰り返します。
この工程が、本当に必要な作業なのか。
今回は、ここを考えていきます。

★三つの状態を定義します
まず、言葉を三つに分けます。
暗記とは、言葉の順序を記憶している状態です。
理解とは、なぜその言葉が選ばれたのかが分かっている状態です。
定着とは、その内容が、自分のイメージとして身についている状態です。
この三つは、段階として連なっています。
暗記は、出発点です。
理解は、経由点です。
定着が、到達点です。
多くの受験者は、出発点で足を止めています。
★暗記で止まると、本番で何が起きるか
暗記したまま本番を迎えると、四つのことが起こります。
1.追質問で崩れます。
暗記した言葉の外側に出された瞬間、手元に何もなくなります。
用意した文の続きを探しても、どこにもありません。
2.一語忘れると、全体が止まります。
順序で覚えているため、途中が抜けると復旧できません。
一つの言葉が出てこないだけで、沈黙が生まれます。
3.語り方が、平板になります。
思い出す作業をしている間、表情は動きません。
声の抑揚も消えます。
目線は、宙を泳ぎます。
4.受験作文として響きます。
暗記した言葉には、音に特徴的な硬さが出ます。
語尾がそろい、間の位置が機械的になります。
四つ目が、最も深刻です。
面接官は、暗記された語りを毎年聞いています。
数秒で、見分けがつきます。
★それでも、暗記には効用があります
ここは、公平に書いておきます。
暗記には、確かな効用があります。
緊張の中でも、最低限の内容が出てきます。
話の順序が崩れません。
沈黙を避けられます。
話す長さの見当がつきます。
ですから、暗記そのものを否定する話ではありません。
暗記で止まることが、問題だという話です。
暗記は、通過すべき段階です。
そこに居座ってしまうと、本番で力を失います。
★理解とは、設計意図が分かることです
第二段階に進みます。
脚本には、必ず設計があります。
なぜ、この場面を選んだのか。
なぜ、この順序で並べたのか。
なぜ、この言葉を使ったのか。
なぜ、ここで言い切らずに止めたのか。
この設計意図が分かっていれば、言葉を変えても、同じ効果を出せます。
別の言い方で語っても、狙いは達成されます。
前後を入れ替えても、着地点は変わりません。
理解のある受験者は、脚本から自由になります。
脚本に縛られないために、脚本を理解する。
ここが、第二段階の意味です。
★理解できているかを、確認します
自分が理解しているかどうかは、簡単に確かめられます。
方法が、二つあります。
一つ目。
脚本の一文ごとに、「なぜ、この文があるのか」と問いかけます。
答えられない文があれば、そこはまだ暗記の段階です。
その文は、書いた人の意図のまま、自分の中を素通りしています。
二つ目。
同じ内容を、三通りの言い方で語ってみます。
三通り出てくれば、理解しています。
一通りしか出てこなければ、言葉の順序を覚えているだけです。
この二つの確認は、今日からできます。
★定着とは、イメージが身についた状態です
第三段階です。
ここが、今回の中心になります。
面接官の中に残るのは、イメージです。
定着とは、そのイメージを、自分の側でも持っている状態を指します。
自分は、どんな教師として面接室にいるのか。
その像が自分の中にあれば、どの質問に対しても、そこから言葉が出てきます。
ここで、大切な区別があります。
暗記されているのは、言葉です。
定着しているのは、イメージです。
言葉は、忘れます。
緊張すれば、なおさら消えていきます。
イメージは、消えません。
自分が何者であるかを、人は忘れないからです。
★定着は、役作りによって生まれます
ここで、役作りという考え方に触れておきます。
俳優は、台詞を覚えるだけでは舞台に立てません。
その役が、どういう人物なのか。
どこで生まれ、何を大切にし、何を恐れているのか。
その人物像を、自分の中に作ります。
作られた人物像があるから、台詞が自然に出てきます。
台詞を思い出している状態とは違います。
その人物として、話している状態です。
面接も、同じです。
脚本の言葉を覚えるのではありません。
脚本が描いている人物を、自分の中に作ります。
その作り方には、具体的な手順があります。
ここでは、定着の到達点が役作りであることを押さえておいてください。
★暗記から定着へ移る四つの工程
実際の手順を示します。
1.脚本を音読します。
まず、言葉を体に入れます。
この段階は、暗記で構いません。
2.一文ごとに、設計意図を言語化します。
なぜこの文があるのかを、自分の言葉で説明してみます。
説明できない文には、印をつけておきます。
3.脚本を見ずに、別の言い方で語ってみます。
言葉が変わっても、狙いが同じであれば、それでよしとします。
同じ着地点に、別の道で到達できるかを確かめます。
4.人物像を、一文で言います。
自分は、面接室で何者としているのか。
それを、短い一文にします。
ここまで到達すると、脚本を手放せます。
★定着した受験者の本番
到達点を、描いておきます。
定着している受験者は、本番で脚本を思い出しません。
思い出す必要が、ないからです。
質問を聞きます。
自分の中の人物像から、言葉が出てきます。
暗記した言葉と同じ場合もあります。
違う言葉が出てくる場合もあります。
どちらでも、構いません。
向かっている方向が、同じだからです。
そして、表情と声が自由になります。
思い出す作業をしていないため、相手の顔を見ながら話せます。
相手の反応を見て、長さを調整することもできます。
これが、定着した状態の面接です。
★第25回のまとめ
暗記は、出発点です。
理解は、経由点です。
定着が、到達点です。
暗記されるのは、言葉です。
定着するのは、イメージです。
言葉は忘れますが、イメージは消えません。
脚本を完成させたあと、何十回も読み返す作業に入る前に、一度立ち止まってください。
その作業が、暗記に向かっているのか。
それとも、定着に向かっているのか。
向かう先で、本番の語りはまったく違うものになります。
河野正夫

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