第26回:面接における役作り。【初歩から学ぶ面接合格戦略】(30回連載シリーズ)
【初歩から学ぶ面接合格戦略】(30回連載シリーズ)
第26回:面接における役作り
★役作りとは、選び取る作業です
役作りと聞くと、別人になることだと受け取る方がいらっしゃいます。
面接における役作りは、違います。
自分の中にすでにある要素のうち、どれを前に出すかを選び取る作業です。
考えてみてください。
人は、場面によって見せる面が変わります。
家族の前での自分。
職場での自分。
初対面の相手に会うときの自分。
子どもたちの前に立つときの自分。
どれも、嘘ではありません。
どれも、自分です。
面接室で見せる面を、意図的に選ぶ。
それが、役作りです。

★無から作ると、必ず崩れます
先に、歯止めを置いておきます。
自分にない面を、ゼロから作ってはいけません。
作った役は、必ず崩れます。
追質問で、細部を聞かれたときに、根拠が出てきません。
話しているうちに、表情と言葉がずれていきます。
緊張が強まった瞬間に、素の自分が顔を出します。
役作りは、素材の中から選ぶ作業に限られます。
自分の中にある面を、磨いて前に出す。
ここから外れると、違和感が生まれます。
★第一工程 人物設定を一文にします
ここから、作り方に入ります。
脚本に置いた人物設定の一文を、役の核として据え直します。
自分は、面接室で何者としているのか。
例えば、
「一人の子どもの小さな変化を見逃さず、その変化を学級全体の力に変えていける教師」
この一文が、役の設計図になります。
これから作るすべての要素は、この一文から導き出されます。
★第二工程 その人物の過去を持ちます
ここで、俳優の技法を借ります。
舞台俳優は、脚本に書かれていない部分まで、自分で設定します。
その役が、どこで生まれたか。
どんな家庭で育ったか。
何を大切にしてきたか。
何を恐れているか。
台詞の背後にある人生を持っているから、台詞が自然に出てきます。
面接では、この作業が容易です。
自分の人生が、そのまま素材だからです。
人物設定の一文に至るまでに、自分の中で何があったか。
いつ、その考えを持つようになったか。
どんな出来事が、きっかけだったか。
その考えが、強まった場面はどこか。
この道筋を、三つから五つの場面として持ちます。
場面を持っている受験者は、どこから質問されても崩れません。
答えが、その場面から出てくるからです。
★第三工程 その人物の身体を持ちます
次は、外から見える部分です。
決めた人物は、どんな姿勢で座るでしょうか。
どんな速さで話すでしょうか。
どこを見ているでしょうか。
どんなときに、表情がゆるむでしょうか。
ここで、順序が大切になります。
姿勢や表情を先に決めてはいけません。
人物を決めてから、その人物の身体を導き出します。
小さな変化を見逃さない教師であれば、相手の話をよく聞く姿勢になります。
うなずきが深くなります。
話す速さは、ゆっくりになります。
挑戦を続ける教師であれば、前に出る姿勢になります。
声に力が入ります。
表情の動きが大きくなります。
外側から作ると、不自然になります。
内側から導くと、自然になります。
★第四工程 その人物の答え方を持ちます
最後に決めるのは、答えの内容とは別のものです。
その人物の、答え方を決めます。
質問を聞いたとき、すぐ話し出すか、一拍置くか。
分からないことを聞かれたとき、どう応じるか。
褒められたとき、どう受けるか。
異なる見方を示されたとき、どう返すか。
これらは、どんな質問が来ても、共通して現れます。
そして、答え方が一貫していると、面接官の中で人物像が安定します。
内容は質問ごとに変わります。
答え方は、最初から最後まで同じです。
この一貫性が、イメージを強く結ばせます。
★役と自分の距離
ここが、今回の中心です。
役は、自分から遠すぎても、近すぎても機能しません。
遠すぎると、演じきれません。
普段おとなしい方が、熱血教師の役を作ったとします。
最初の数分は持ちます。
しかし、追質問で焦った瞬間に、素の自分が出てきます。
そこで、落差が違和感として残ります。
近すぎると、役になりません。
普段のままで面接室に入ると、場面に合わない面まで出てしまいます。
友人と話すときの口調。
職場での気のゆるみ。
そうしたものが、混じります。
適切な距離は、自分の延長線上の、一割から二割先です。
普段の自分を、面接という場に合わせて少し整えた姿。
ここが、最も安定して維持できます。
計算し尽くした上で、計算を感じさせない。
日本庭園の原理が、役作りでも働きます。
★役は、本番であなたを守ります
役作りには、大きな効用があります。
緊張の中で、素の自分だけで立つのは困難です。
役があると、支えになります。
その人物ならどう答えるか、という基準が手元にあるからです。
想定外の質問が来たときも、同じです。
正解を探す必要がありません。
その人物として答えれば、それが答えになります。
そして、失敗したときにも効きます。
一問うまく答えられなくても、役は崩れません。
役が崩れなければ、面接官の中のイメージも崩れません。
一問の失敗を、全体の崩壊につなげないための装置。
それが、役です。
★役作りの練習方法
実際の練習を、四つ挙げます。
1.人物設定の一文を、声に出して言います。
毎日の練習の、いちばん最初に置いてください。
これから誰として話すのかを、自分に確認する作業です。
2.日常の中で、その人物として振る舞う時間を作ります。
職場での会話。
人との挨拶。
電話での受け答え。
面接室だけで役を出そうとしても、間に合いません。
日常で慣らしておきます。
3.鏡や動画で、その人物の身体を確認します。
自分が思っている姿と、実際に見える姿には、差があります。
その差を埋めていきます。
4.想定外の質問に、その人物として即興で答えます。
四つの中で、最も効果があります。
脚本のない状態で、役が機能するかを確かめる作業です。
ここで答えられれば、役は定着しています。
★役作りが完成した状態
到達点を、描いておきます。
本番で、演じているという感覚がなくなります。
その人物として、自然に座っています。
その人物として、自然に話しています。
面接官の側から見ると、一人の教師がそこにいます。
試験を受けに来た人がいるのではありません。
教師として立っている人が、座っています。
この状態になったとき、好感・共感・好印象は、自然に生まれます。
★第26回のまとめ
役作りとは、自分の中にある要素を選び取る作業です。
四つの工程があります。
人物設定を、一文にする。
その人物の過去を、場面として持つ。
その人物の身体を、人物から導き出す。
その人物の答え方を、決めておく。
役と自分の距離は、一割から二割先に置きます。
そして、役は本番であなたを守ります。
言葉は忘れても、役は残ります。
河野正夫

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