第22回:面接講座と合格期待値。【初歩から学ぶ面接合格戦略】(30回連載シリーズ)
【初歩から学ぶ面接合格戦略】(30回連載シリーズ)
第22回:面接講座と合格期待値
★合格実績の数字は、何を意味しているのでしょうか
面接講座を選ぶとき、多くの受験者が、まず実績を見ます。
合格者100名。
合格率80%。
今年も多数の合格者を輩出。
その数字は、おそらく事実でしょう。
ただし、その数字が意味していることは、一つだけです。
他の誰かが合格した、という事実です。
自分が合格するかどうかは、その数字からは分かりません。
今回は、講座を選ぶときに本当に見るべきものを整理していきます。

★合格期待値を定義します
ここで、一つの考え方を導入します。
合格期待値とは、講座の質と、自分への適合度の積です。
講座の質 × 自分への適合度 = 合格期待値
掛け算である点が、重要です。
どれほど質の高い講座でも、自分に適合していなければ、積はゼロに近づきます。
逆に、質が中程度でも、自分に完全に適合していれば、積は大きくなります。
どちらか一方がゼロに近ければ、全体がゼロに近づく。
これが、掛け算の性質です。
多くの受験者は、左側の数字だけを見て講座を選びます。
しかし、結果を決めるのは、二つの数字の積です。
★多くの講座は、標準的な受験者を想定しています
なぜ、適合度に差が生まれるのでしょうか。
講座とは、複数の受講者に同じ内容を届ける形式です。
ですから、想定する受験者像を定めなければ、成立しません。
そして、その想定は、必然的に標準的・一般的・平均的な受験者になります。
これは、講座の欠陥ではありません。
形式上、そうならざるを得ないという話です。
受講者が三十人いれば、三十通りの内容を届けることはできません。
最大公約数を取るしかありません。
人数が増えるほど、最大公約数は小さくなります。
大人数の講座で、個別の効果が薄れていく理由は、ここにあります。
★適合度は、受験者によって大きく違います
では、誰にとって適合度が高く、誰にとって低いのでしょうか。
標準的な経歴の受験者であれば、適合度は高くなります。
新卒の大学生。
講師経験が数年。
年齢も一般的な範囲。
想定された受験者像と重なるため、講座の内容がそのまま使えます。
一方で、ユニークな経歴やプロフィールを持つ受験者では、適合度が下がります。
年齢が高い。
前職が特殊な業界である。
ブランクがある。
免許の取得経路が通常と違う。
家庭の事情を抱えている。
一度教職を離れて、戻ってきた。
こうした条件は、標準の想定から外れます。
標準向けに設計された内容を、そのまま当てはめても、自分の課題には届きません。
★みんなで学ぶことの効用と限界
集団で学ぶことには、確かな効用があります。
孤独にならない。
進度の目安ができる。
他の受験者の様子が見える。
意欲が維持される。
心理面では、大きな支えになります。
ただし、ここで区別が必要です。
効用と効果は、別のものです。
意欲が上がることと、合格可能性が上がることは、同じではありません。
そして、ユニークな背景を持つ受験者の場合、こういう事態が起こります。
同じ講座を受けた他の受講者が、全員合格する。
自分だけが、不合格になる。
全員に効いた指導が、自分には効かなかったということです。
この経験をすると、多くの方が自分を責めます。
同じ指導を受けたのに、自分だけができなかった、と。
しかし、起きていたことは別です。
適合度の低い指導を、そのまま受け取っていただけです。
★志望先の難易度が、必要な指導の水準を決めます
もう一つ、見落とされやすい要素があります。
教員採用試験の難易度は、志望先によって極端に違います。
倍率が一倍台で、受験すれば通ると揶揄される志望先があります。
一方で、倍率が数十倍に達する志望先もあります。
定員が一名という区分も、実際に存在します。
同じ指導、同じ演習で、この両方に対応できるでしょうか。
低倍率の志望先であれば、標準的な準備で足ります。
標準に届いていれば、合格の可能性は十分にあります。
高倍率の志望先では、事情が変わります。
標準的な準備をした受験者は、全員が標準的な語りをします。
そこでは、差がつきません。
差がつくのは、標準を超えた部分だけです。
ですから、難易度の高い志望先を目指す場合、標準的な講座の到達点では足りません。
講座の内容が優れていても、到達点そのものが届いていないという状態が起こります。
★合格期待値を、自分で計算します
ここまでを、実際の判断に落とします。
講座を選ぶとき、次の三つを自分に問いかけてください。
1.その講座が想定している受験者像は、自分と重なるか。
受講者の中心層は、どんな人たちか。
自分は、その中に入るか。
2.自分のユニークな部分に、その講座は触れてくれるか。
年齢。
経歴。
ブランク。
前職。
自分だけが抱えている条件について、個別に扱ってもらえるか。
3.自分の志望先の難易度は、その講座の標準的な到達点を超えていないか。
倍率。
定員。
求められる水準。
三つとも満たされていれば、合格期待値は高くなります。
一つでも外れていれば、その部分を別の手段で補う必要があります。
講座に通っているから大丈夫、という判断は危険です。
★合格実績の正しい読み方
数字との付き合い方も、整理しておきます。
見るべきものは、合格者数の多さではありません。
自分と似た条件の受験者が、そこで合格しているかどうかです。
年齢が近いか。
経歴が似ているか。
志望先の難易度が同じか。
抱えている条件が似ているか。
同じ条件の合格者が一人もいない講座であれば、実績がどれほど多くても、自分にとっての期待値は読めません。
百人の合格者がいても、全員が新卒の大学生であれば、四十代の社会人にとっての参考値にはなりません。
★講座を否定する話ではありません
ここで、歯止めを置いておきます。
大規模な教採対策予備校も、SNSで人気のある教採対策塾も、指導そのものは優れています。
長年の蓄積があり、多くの受験者にとって、有効に機能しています。
問題は、質ではありません。
適合です。
自分が標準の想定に収まるなら、そうした講座は効率的で確実な選択になります。
収まらないなら、別の形を考える必要があります。
この判断を、他人の評判に任せず、自分で下せるようになること。
それが、今回の目的です。
★第22回のまとめ
合格期待値は、講座の質と、自分への適合度の積です。
他人の合格数は、自分の期待値を示しません。
多くの講座は、標準的な受験者を想定して設計されています。
人数が増えるほど、個別の課題には届きにくくなります。
そして、志望先の難易度によって、必要な到達点が変わります。
自分の経歴と、自分の志望先の難易度。
この二つから、必要な指導の形を逆算してください。
河野正夫

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