第20回:印象とイメージがほとんど全て。【初歩から学ぶ面接合格戦略】(30回連載シリーズ)
【初歩から学ぶ面接合格戦略】(30回連載シリーズ)
第20回:印象とイメージがほとんど全て
★面接官の手元に、何が残るのか
面接が終わります。
受験者が、退室します。
面接官は、評価票に点数を書き込みます。
そのとき、面接官の手元に残っているものは何でしょうか。
発言の記録ではありません。
語られた内容を、逐語で覚えているわけでもありません。
残っているものを正確に捉えることが、面接準備の最後の鍵になります。

★印象とイメージを、分けて定義します
まず、二つの言葉を区別しておきます。
印象とは、面接の最中に面接官が受け取る感触です。
この人は明るいな。
落ち着いているな。
熱意がありそうだな。
瞬間ごとに生まれ、積み重なっていきます。
イメージとは、面接が終わったあとに面接官の中に残る像です。
一人の人物として、輪郭を持った姿です。
印象は、イメージの材料です。
そして、評価票に書き込まれるのは、イメージの方です。
★イメージは、情報量が削られた結果です
ここで、構造を見ておきます。
二十分の面接で語られる言葉は、数千字に及びます。
そのすべてが、面接官の中に残ることはありません。
残るのは、ごく一部です。
大量の言葉が削られ、最後に残った数行分。
それが、イメージです。
何が残り、何が消えるのか。
ここを理解することが、準備の核心になります。
★残るものと、消えるもの
実際に何が残るのかを、具体的に挙げます。
残りやすいものは、四つです。
1.情景を伴う場面。
教室の光景、生徒の表情、そこで交わされた言葉。
映像として浮かぶものは、強く残ります。
2.繰り返し現れた方向性。
別の質問でも、同じ方向を向いていた。
その重なりが、輪郭を作ります。
3.語り手の表情と声。
明るさ、落ち着き、視線の置き方。
内容より長く残る場合があります。
4.印象的な一言。
その人らしい、短い言葉。
評価票を書く段階でも、耳に残っています。
一方で、消えやすいものも四つあります。
1.制度や施策の名称。
2.並べられた複数の要素。
三つ挙げた長所は、三つとも消えます。
3.整った一般論。
誰が語っても同じ内容は、誰の像にもなりません。
4.長い説明。
長さに比例して、残る量が減っていきます。
この対比が、そのまま準備の指針になります。
★イメージは、一つしか残りません
ここが、今回で最も大切な性質です。
面接官の中に残る像は、一人分です。
複数の人物像が、同時に残ることはありません。
ですから、受験者が複数の方向を示すと、どれも残りません。
熱意も示し、冷静さも示す。
行動力も示し、慎重さも示す。
協調性も示し、主体性も示す。
すべてを示そうとすると、輪郭のない像になります。
そして、輪郭のない像は、評価票の各欄を動かしません。
脚本の人物設定を、一文で決めておく。
その理由が、ここにあります。
★イメージが形成される三つの時点
時間の流れで見ると、イメージは三つの時点で大きく動きます。
第一の時点は、入室から最初の質問までです。
この区間でできた最初の印象が、その後の受け取り方の枠を作ります。
同じ発言でも、最初の印象によって解釈が変わります。
明るい人だという枠ができていれば、その後の答えは前向きに受け取られます。
硬い人だという枠ができていれば、同じ答えが義務的に聞こえます。
第二の時点は、最も熱を込めて語った場面です。
面接官が最も強く反応した瞬間が、像の中心になります。
どの質問で熱を込めるか。
ここは、事前に決めておいてください。
その場の流れに任せると、中心のない面接になります。
第三の時点は、退室の直前です。
最後の数十秒が、持ち帰られる像の仕上げになります。
最後の回答の締めくくり。
立ち上がるときの姿勢。
礼をして、扉を閉めるまでの動作。
この三つの時点に、準備の重心を置きます。
★印象は、言語と非言語の両方から来ます
印象の材料を、二つに分けます。
内容が作る印象があります。
何を大切にしている人か。
どんな経験をしてきた人か。
見え方が作る印象があります。
信頼できそうか。
一緒に働きたいか。
子どもの前に立たせられるか。
二つが同じ方向を向いていれば、像は強く結ばれます。
ずれていれば、違和感として残ります。
寄り添う教師像を語りながら、硬い表情で話す。
挑戦する教師像を語りながら、小さな声で話す。
この不一致は、どちらの像も残しません。
残るのは、何か変だったという感触だけです。
★面接官同士の会話で、イメージが言語化されます
見落とされやすい場面があります。
面接が終わったあと、面接官同士で受験者について言葉を交わす場面です。
そのとき使われるのは、長い説明ではありません。
短い一言です。
落ち着いていたね。
子どものことをよく見ていそうだ。
ちょっと硬かったね。
元気はあるけれど、浅かったね。
この一言が、イメージの最終形です。
受験者が目指すべきものは、この一言の設計です。
自分は、どんな一言で語られたいか。
ここを決めてから逆算すると、準備すべきことが明確になります。
一言に向かわない要素は、入れなくてよい要素だと判断できます。
★では、何をすればよいのか
作業を、五つに整理します。
1.残したい一言を決めます。
短く、具体的に決めてください。
「いい人だった」では、弱すぎます。
「子どもの小さな変化に気づける人だった」まで絞ります。
2.その一言を裏づける場面を、三つ用意します。
別々の質問で出せるように、三つ用意します。
同じ方向の場面が重なると、輪郭が太くなります。
3.最初の三十秒と、最後の三十秒を作り込みます。
入室から着席まで。
最後の回答から退室まで。
この二か所は、完全に設計できます。
4.見え方を、その一言の方向にそろえます。
表情、姿勢、声の調子、間の取り方。
決めた一言と、同じ方向に寄せます。
5.それ以外の要素を、削ります。
五つの中で、最も難しい作業です。
そして、最も効果があります。
用意した材料のうち、決めた一言に向かわないものを外していきます。
削るほど、残る像ははっきりしていきます。
★第20回のまとめ
評価票に書き込まれるものは、イメージです。
イメージは、大量の言葉が削られたあとに残る、一人分の像です。
ですから、すべてを伝えようとする準備は機能しません。
残りやすいものを選び、消えやすいものを捨てる。
一つの方向に、すべてをそろえる。
最初と最後を、作り込む。
一つの像を、確実に残す。
ここが、面接準備の到達点です。
河野正夫

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