第19回:面接質問の意図はもっと希薄。【初歩から学ぶ面接合格戦略】(30回連載シリーズ)
【初歩から学ぶ面接合格戦略】(30回連載シリーズ)
第19回:面接質問の意図はもっと希薄
★質問票には、評価項目が並んでいます
面接官の手元には、評価項目の並んだ用紙があります。
教育への情熱。
使命感。
コミュニケーション能力。
責任感。
協調性。
自治体によっては、それぞれの項目に対応する質問例まで用意されています。
この事実を知ると、受験者は自然にこう考えます。
この質問は、この項目を測っている。
だから、この要素を答えに入れよう。
今回は、この推論がどこで崩れるのかを見ていきます。

★分類と、測定指標は、まったく別のものです
ここが、今回の理論的な中心です。
質問票にある対応づけは、質問の分類です。
この質問は、協調性に関する話題を扱う。
この質問は、使命感に関する話題を扱う。
そうした整理にすぎません。
測定指標は、別のものを指します。
ある質問への答えが、ある特性の水準を客観的に示す。
そういう装置のことです。
分類は、話題の整理です。
測定は、数値化の手続きです。
この二つを同じものだと考えると、準備の方向が大きくずれていきます。
★一つの質問は、一つの特性を測れません
具体例で見てみます。
「これまでに、チームで何かを成し遂げた経験を教えてください」
この質問が、協調性の欄に分類されているとします。
では、受験者の答えを聞いた面接官が受け取るものは、協調性だけでしょうか。
話の構成力。
語彙の選び方。
声の調子。
そのときの表情。
チームの中での自分の位置づけ方。
仲間をどう語るか。
成果を自分のものとして語るか、みんなのものとして語るか。
面接官は、これらすべてを同時に受け取っています。
そして、受け取った内容は、協調性の欄だけに収まりません。
コミュニケーション能力の欄にも、責任感の欄にも、同時に影響します。
一つの質問が一つの特性に対応するという構造は、最初から成立していません。
★一つの特性も、一つの質問では決まりません
反対の方向からも見てみます。
協調性の欄に点数をつけるとき、面接官が参照しているものは何でしょうか。
協調性の質問への答えだけを思い出して、点数を決めているわけではありません。
志望動機の語り方。
追質問への反応の仕方。
三人の面接官への視線の配り方。
入室から着席までの様子。
面接全体から受け取った印象が、その欄に入ります。
ここでも、一対一の対応は成立していません。
★では、評点はどうやってつけられているのか
実際に起きていることを、順に見ていきます。
面接官は、多様な質問をします。
関連質問を重ねます。
そのやり取りを通じて、一人の人物像を形づくっていきます。
面接が終わります。
評価票の各欄に、点数を入れます。
そのとき参照されているものは、質問ごとの答えの記録ではありません。
形成された人物像です。
この人は、協調性がありそうだ。
だから、その欄は高めにする。
この人は、責任感がありそうだ。
だから、その欄も高めにする。
主観的に形成された一つの印象が、複数の欄に分配されていきます。
ここに、重要な帰結があります。
各欄は、独立していません。
印象が良ければ、複数の欄が同時に上がります。
印象が薄ければ、複数の欄が同時に下がります。
一つの欄だけが高く、他の欄だけが低いという評価票は、あまり生まれません。
★質問の出所によっても、設計の濃度が違います
面接で飛んでくる質問は、三つの種類に分けられます。
1.自治体が用意した、共通の質問票からの質問。
全受験者に共通して聞かれます。
ここには、まだ分類としての設計が残っています。
2.面接票やエントリーシートの記載から生まれた質問。
受験者ごとに、まったく違います。
面接官が、その場で書類を見ながら作っています。
3.直前の回答から派生した、関連質問。
完全に、その場で生まれます。
事前の設計は、どこにもありません。
三つ目に近づくほど、設計は消えていきます。
そして、面接時間の多くを占めているのは、二つ目と三つ目です。
事前に設計された質問は、面接全体のごく一部にすぎません。
★受験者にとっての帰結
ここまでを、三つに整理します。
1.質問と評価項目の対応表を作る準備は、機能しません。
この質問は協調性を見ている。
だから協調性を示す要素を入れる。
こうした対応表を精密に作っても、面接官の側に同じ対応表がありません。
2.どの質問にも、自分の人物像を乗せられます。
各欄は独立していないため、どの質問で作った印象も、複数の欄に届きます。
趣味の質問で作った好印象が、協調性の欄を押し上げることがあります。
学生時代の話で作った信頼感が、責任感の欄に影響することがあります。
3.面接全体の一貫性が、そのまま点数になります。
同じ人物が語っていると感じられれば、印象は強く形成されます。
強く形成された印象は、各欄に確実に反映されます。
★質問を軽く見てはいけません
ここで、歯止めを置いておきます。
質問に測定機能がないことと、質問に答えなくてよいことは、まったく違います。
問われたことに答えられない受験者は、その時点で対話の能力を疑われます。
質問の趣旨からずれた答えを返す受験者も、同様です。
そして、その疑いもまた、複数の欄に同時に影響します。
質問は、測定装置としては働きません。
しかし、対話の入り口としては、確実に働いています。
入り口を無視した受験者には、その先の評価が生まれません。
★準備の方向を、組み替えます
実際の作業に落とします。
これまで、質問ごとに答えを用意してきた方は、作業の重心を移してください。
質問ごとの正解を増やす作業から、どの質問からでも同じ人物像に届く語りを整える作業へ。
具体的には、こうします。
主要な五つから七つの回答を、紙に並べます。
そして、声に出して、続けて読んでみます。
そこに、同じ人物が現れているでしょうか。
志望動機では熱意ある人に見え、自己アピールでは慎重な人に見え、場面指導では厳しい人に見える。
この状態であれば、印象は形成されません。
同じ人物が現れていなければ、質問を百問用意しても、評価票の欄は動きません。
一貫性を整える作業は、回答を増やす作業より、はるかに短時間で終わります。
そして、効果ははるかに大きくなります。
★第19回のまとめ
質問票にある対応づけは、分類です。
測定指標ではありません。
一つの質問は、一つの特性を測れません。
一つの特性も、一つの質問では決まりません。
評点は、面接全体で形成された人物像から、各欄に分配されていきます。
狙うべきものは、質問ごとの正解ではありません。
面接全体で形成される、一人の人物像です。
河野正夫

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