第21回:志望自治体の施策と面接。【初歩から学ぶ面接合格戦略】(30回連載シリーズ)
【初歩から学ぶ面接合格戦略】(30回連載シリーズ)
第21回:志望自治体の施策と面接
★施策を調べたあと、多くの受験者が同じ場所でつまずきます
志望する自治体の教育大綱を読みます。
求める教師像を、何度も読み返します。
その年の重点施策の名称を、覚えます。
ここまでは、正しい作業です。
準備として、必ず必要になります。
問題は、その次に起こります。
覚えた言葉を、そのまま語りに差し込んでしまう。
「本県が掲げる、誰一人取り残さない教育の実現に向けて、私は……」
この瞬間に、語りは受験用の作文へ転落します。
今回は、調べた施策をどう使うのかを扱います。

★施策は、貼り付ける材料ではありません
最初に、今回の中心を示しておきます。
施策は、語りに貼り付ける装飾ではありません。
施策は、面接官の信条がどこを向いているかを知るための地図です。
この捉え方に変えると、施策の読み方も、使い方も、まったく変わります。
★なぜ、地図になるのでしょうか
構造を見ておきます。
施策とは、その自治体の教育行政が、何を課題と認識しているかの表明です。
いま、この地域の子どもたちに何が起きているか。
どこに手を打たなければならないか。
行政(教育委員会)として、何を優先するか。
それが、文書の形になっています。
そして、面接官は、その行政(教育委員会・学校)の中で日々働いている人です。
指導主事は、その施策を現場に伝える立場にあります。
校長は、その施策を自分の学校で実行する立場にあります。
人事課の管理職は、その施策を担う人材を採用する立場にあります。
ですから、施策に書かれていることは、面接官が日ごろ考えていることと重なります。
施策を読むとは、面接官の信条の方向を読む作業にあたります。
★三つの層に分けて読みます
実際の読み方を示します。
自治体の文書は、三つの層に分けて読んでください。
第一層は、理念です。
求める教師像。
教育大綱の基本目標。
抽象度が高く、どの自治体も似た表現になります。
子どもに寄り添う。
学び続ける。
信頼される。
ここだけを覚えても、どの自治体でも通用する一般論にしかなりません。
第二層は、重点課題です。
いじめへの対応。
不登校児童生徒への支援。
特別支援教育の充実。
ICTの活用。
教員の働き方。
その自治体が、いまどこに手を打とうとしているか。
ここから、面接官の関心の所在が見えてきます。
第三層は、固有の事情です。
地域の産業。
人口の動き。
外国にルーツを持つ児童生徒の割合。
離島や山間部の有無。
統廃合の状況。
ここに、その自治体にしかない輪郭があります。
最も価値が高いのは、第三層です。
ここを読み込んだ受験者は、他の受験者と違う視野を持つことになります。
★施策と、自分の持ち札を照合します
ここで、棚卸しした持ち札が再び登場します。
書き出した札を、施策の三つの層と突き合わせていきます。
どの札が、その自治体の課題意識と重なるか。
どの経験が、第二層や第三層に触れているか。
重なる札が、その自治体での主力になります。
ここで、大切な点があります。
この作業は、施策に合わせて自分を作り変える作業ではありません。
自分が持っているもののうち、どれを前に出すかを決める作業です。
自分にない経験を、施策に合わせて作り出す必要はありません。
むしろ、作り出した話は、追質問で必ず崩れます。
★施策は、語りの背後に置きます
ここが、今回の実践上の山です。
施策の名称を、口に出す必要はありません。
施策が示す方向と、自分の経験が同じ方向を向いていれば、面接官はその一致を感じ取ります。
例を挙げます。
その自治体が、不登校児童生徒への支援を重点に掲げているとします。
語るべきものは、施策の名称ではありません。
登校できなかった生徒と関わった、自分の経験です。
その生徒が、どんな様子だったか。
自分は、どう関わったか。
何を感じ、何を学んだか。
この語りが、面接官の関心と同じ方向を向いていれば、それだけで十分に届きます。
もう一つ、例を挙げます。
その自治体に、外国にルーツを持つ児童生徒が多いとします。
語るべきものは、多文化共生という言葉ではありません。
言葉の通じない相手と向き合った、自分の経験です。
前職での外国人同僚とのやり取り。
講師として関わった、日本語がまだ十分でない生徒。
留学や海外での経験。
自分の持ち札の中から、その方向を向いているものを出します。
地中には、調べ尽くした設計図があります。
地上に見えるのは、自分の言葉だけです。
「日本庭園の原理」が、ここで働きます。
★施策の名称を出してよい場面
例外もあります。
直接問われた場合です。
「本県の教育大綱をご存じですか」
「本市の重点施策について、どうお考えですか」
この場合は、正確に答えてください。
調べていない受験者であることが、その場で分かってしまいます。
ただし、名称を述べて終わらせないでください。
名称を述べたあと、自分の経験や考えにつなげます。
知識の確認で終わる答えは、面接官の中に何も残しません。
調べてきた受験者という以上の像は、生まれません。
★施策を語るときに起きる三つの失敗
受験者が陥りやすい形を、挙げておきます。
1.施策の名称を並べて、自分の経験が消える。
正確に覚えているほど、名称を使いたくなります。
名称が増えるほど、自分の姿は見えなくなります。
2.施策と、自分の志望動機がつながっていない。
施策の話と、自分の話が、別々に並んでいる状態です。
面接官の中で、二つが一つになりません。
3.施策の言葉で語るため、語彙が借り物になる。
これが、最も深刻です。
行政文書の語彙は、その人の語り口を消してしまいます。
どれだけ正確に語っても、誰が語っても同じ響きになります。
施策の内容は、自分の言葉に翻訳してから使ってください。
★複数の自治体を受験する場合
現実的な問題にも触れておきます。
複数の自治体を併願する場合、自治体ごとに語りを作り直す必要があるのでしょうか。
作り直す必要はありません。
中心となる人物像は、同じものを使います。
持ち札も、同じものを使います。
変えるのは、どの札を前に出すかという配分だけです。
自治体ごとに別人になろうとすると、どこの自治体でも中途半端になります。
一人の自分を持ち、その見せ方の角度を変える。
この方が、はるかに強く機能します。
★第21回のまとめ
施策は、暗記して貼り付ける材料ではありません。
施策は、面接官の信条がどこを向いているかを知るための地図です。
三つの層に分けて読みます。
理念。
重点課題。
固有の事情。
地図を読んだら、自分の持ち札と照合します。
そして、どの札を前に出すかを決めます。
語るときは、施策の言葉を使いません。
自分の言葉で、自分の経験を語ります。
それでも、方向が同じであれば、面接官には確実に届きます。
河野正夫

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