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第18回:面接官の意図は実は希薄。【初歩から学ぶ面接合格戦略】(30回連載シリーズ)

執筆者の写真: 河野正夫
河野正夫
1 日前
読了時間: 6分

【初歩から学ぶ面接合格戦略】(30回連載シリーズ)


第18回:面接官の意図は実は希薄



★面接官は、採用のプロフェッショナルではありません



面接官として面接室に座るのは、学校の管理職、教育委員会の中間管理職、そして、自治体によっては民間人面接官です。


この方々は、優れた人材を採用しようという熱意を持っています。


教育については、深い経験も持っています。


しかし、人事採用のプロフェッショナルではありません。


面接という対人コミュニケーションのプロフェッショナルでもありません。


面接官の仕事をするのは、夏の数日間だけです。


一年のうちの、わずかな期間です。


この事実は、面接の準備の仕方に、大きな影響を与えます。





★この回で扱う「意図」を定義します



まず、言葉の範囲をはっきりさせておきます。


ここで言う意図とは、その特定の面接に関して面接官が持つ、質問ごとの評価目標と評価基準のことです。



この質問で、この能力を測る。


この質問で、この資質を判断する。


この基準を満たしていれば、何点をつける。



そうした設計思想を指します。


この意味での意図は、実は希薄です。



★評価目標としての意図が希薄である理由



理由は、構造にあります。



面接官は、面接技法の訓練を受けた専門家ではありません。


短期間の説明を受けて、面接室に座ります。



質問項目は、自治体から示される場合が多くあります。


しかし、その一つひとつを、どの評価観点に、どう紐づけるか。


そこまで体系的に設計された資料が、面接官の手元にあるわけではありません。


ですから、こういう処理は実際には起きていません。



一問目の答えを聞いて、コミュニケーション能力の欄に四点をつける。


二問目の答えを聞いて、教育に対する情熱の欄に三点をつける。



こうした機械的な採点は、行われていません。



★では、面接官は何をしているのでしょうか



面接官は、関連質問を重ねながら、主観的に判断しています。



この人を、子どもの前に立たせたらどうだろうか。


この人に、保護者対応を任せたらどうだろうか。


この人と、職員室で机を並べたらどうだろうか。



一連のやり取りを通じて、こうした印象を形づくっていきます。



個々の質問は、その印象を作るための材料にすぎません。


質問そのものが、独立した測定装置として働いているわけではありません。



★面接官が普段から思っていることは、別の層にあります



ここが、今回で最も丁寧に読んでいただきたい部分です。


評価目標が希薄であることと、面接官が何も持っていないことは、まったく違います。


面接官は、管理職として、日ごろ大切にしている考えを持っています。



子どもの安全を、何より優先したい。


問題を一人で抱え込まない教員に来てほしい。


保護者と誠実に向き合える人であってほしい。


同僚と力を合わせられる人を迎えたい。



これは、その日の面接のために用意された評価基準ではありません。


その人が、長年の職務の中で抱き続けてきた信条です。



面接官が質問するとき、事前に設計された採点表は手元になくても、この信条は常に働いています。


受験者の語りを聞きながら、自分の信条と照らし合わせています。



★受験者が合わせるべきなのは、信条の方です



ここから、準備の方向が決まります。



質問ごとの採点基準を当てにいく準備は、当たりません。


基準そのものが、精密には存在しないからです。



この質問はコミュニケーション能力を見ている。


だからこの要素を入れる。



こうした対応表を作っても、面接官の側にその対応表がありません。



一方で、面接官が日ごろ信じていることを、自分の経験と自分の言葉で語ること。


これは、常に効きます。



相手が信じてきたことが、別の人生を歩んできた人の経験によって裏づけられる。


その瞬間に、共感と納得が生まれます。



この連載で繰り返し述べてきた原理は、採点基準への対応策ではありません。


人が人を評価する場で働く、普遍的なレトリックの原理です。


採点設計が希薄な場であっても、この原理は確実に機能します。



★意図が希薄だと、何が起きるか



受験者にとっての帰結は、三つあります。



1.一問ごとの正解を探す準備は、費用対効果が低くなります。



想定問答を百問作り、それぞれに完璧な答えを用意する。


この作業に膨大な時間をかけても、評価は思ったほど動きません。



2.面接全体を通した印象が、結果を決めます。



十五分から二十分のやり取りを終えたあと、面接官の中に何が残っているか。

そこが、評価票の点数になります。



3.質問ごとの出来不出来に、一喜一憂する必要がありません。



一問うまくいかなくても、全体の印象が良ければ、評価は保たれます。


逆に、一問ごとに整った答えを並べても、印象が薄ければ結果は動きません。



面接の途中で、うまく答えられなかった質問が出てきます。


そこで焦ると、残りの時間すべてに影響します。


一問の失敗は、全体の中では小さな出来事だと覚えておいてください。



★意図が希薄だから、受験者が主導権を握れます



ここが、今回の中心です。



質問に精密な採点設計がないということは、その質問に何を乗せるかを、受験者の側で決められるということです。


面接官は、答えを採点表と照合しているわけではありません。


その語りから受け取った印象で、判断しています。


ということは、どの質問から始まっても、自分が残したい印象へ向かうことができます。



趣味を問われたとします。


その答えの中に、自分の人物設定を乗せられます。



学生時代の話を問われたとします。


その答えの中に、自分の教育観を乗せられます。


質問が何であっても、着地点は自分で決められます。


脚本の人物設定が効く理由は、ここにあります。


一本の線を持っていれば、どの入り口から入っても、同じ場所に出られます。



★ただし、質問を無視してはいけません



ここには、歯止めが必要です。


どの質問からでも自分の方向へ進めるとはいえ、問われたことに答えないまま自分の話を始めてはいけません。



趣味を聞かれて、いきなり教育論を語り始める。


学生時代のことを聞かれて、志望動機を述べ始める。



これをやると、対話が成立しない人だと判断されます。


面接官の中に、強い違和感が残ります。



順序を守ってください。


まず、問われたことに答えます。


その上で、自分の方向へつなげます。


この順序さえ守れば、自由度は非常に高くなります。



★面接官の主観に届くための三つの確認



自分の回答を点検するとき、次の三つを確認してください。



1.この回答から、面接官はどんな人物像を受け取るか。


2.その人物像は、自分が残したい像と一致しているか。


3.三人の面接官のうち、誰の主観にも受け入れられる内容か。



採点基準を当てにいく視点は、ここでは使いません。


印象を基準に点検します。


この視点で自分の原稿を読み返すと、直すべき箇所が見えてきます。



★第18回のまとめ



その面接のための評価目標としての意図は、希薄です。


面接官は、採用の専門家ではありません。


質問ごとの採点設計を持って、面接室に座っているわけではありません。


しかし、面接官が普段から抱いている信条は、常にそこにあります。


狙うべきは、採点設計ではありません。


面接官が日ごろ信じていることです。



一問ごとの正解を探す準備から離れて、面接全体で一つの人物像を届ける。


意図が希薄であることは、受験者にとって不利な条件ではありません。


主導権を握れる条件です。




河野正夫



 
 
 

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