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第20回(最終回):適切性(デコーラム)と統合 満点の語りへ。【面接で満点合格を目指すためのレトリック理論講座】(20回連載シリーズ)

執筆者の写真: 河野正夫
河野正夫
4 分前
読了時間: 8分

【面接で満点合格を目指すためのレトリック理論講座】(20回連載シリーズ)


第20回(最終回):適切性(デコーラム)と統合 満点の語りへ



★適切性(デコーラム)とは



適切性は、その場に合っているかどうかを見る働きです。


古典のレトリックでは、デコーラムと呼ばれてきました。


これまで十九回で、原理と技法を扱いました。



説得の三様式(エトス、パトス、ロゴス)、


五つの工程(発想、構成、修辞、記憶、演出)、


語りの型、


言葉の選び方、


覚え方、


届け方。



適切性は、その並びの中の一つではありません。


全体を見渡して、いまここで何を使うかを決める働きです。


古典でも、五つの工程のどれにも属さないものとして扱われてきました。


発想にも構成にも修辞にも効きますし、記憶と演出にも効きます。


工程の上から、全部を見ています。



一つ、はっきりさせておきます。


適切性は、無難にすることではありません。


その場に何が要るかで、合っているかどうかが決まります。


要るものを出すのが適切で、要らないものを出さないのが適切です。


全部を控えめにするのは、合っているとは言えません。





★技法をそろえた人が、つまずくところ



ここまで読んでこられた方は、手元に技法がそろった状態になっています。



PREP法、


STAR法、


ナラティブ、


ナンバリングとラベリング、


インパクトフレーズ、


フレーミング。



それぞれの持ち場も書きました。


この状態で起きる失敗があります。


全部を使おうとすることです。



二十分の面接で、どの答えもPREP法で組む。


質問が来るたびに数を宣言する。


経験を聞かれていない質問にもナラティブで答える。


答えのたびに磨いた一行を出す。



一つ一つは、正しく使っています。


それでも、面接全体としては失敗します。



理由は二つです。



一つは、型が見えてくることです。


同じ形が五回続けば、六回目は中身より形のほうが先に気になります。


用意してきた人として受け取られます。


第6回で扱ったモーダルチョイスでいえば、面接モードから受験作文モードへ戻っています。



もう一つは、強いものが効かなくなることです。


磨いた一行を毎回出せば、どの一行も残りません。


第16回で、一つの面接に一つか二つと書いたのは、このためです。



ですから、適切性は、使う判断ではありません。


使わない判断です。



十九回で増やしてきた手の中から、いまここで出すものを一つ選び、残りはしまっておきます。


最終回の中身は、増やす作業ではありません。


減らす作業になります。



★合わせる相手は、四つあります



何に合わせるのか。四つあります。



一つ目は、聞き手です。



面接官は二人か三人。



学校の管理職の方、


教育委員会の指導主事やセンター長、


人事課の方。


自治体によっては民間の方が入ります。



この方々は、採用人事の専門家ではありません。


多くは夏の数日間の充て職です。


ただ、学校のことは知っておられます。



ですから、学校の中で通る言葉は通りますが、面接の技法の名前は通りません。


結論から申し上げますと宣言する必要はなく、結論から言えば足ります。



二つ目は、場です。



教員採用試験は、良い教師を選ぶ場です。


ですから、試験の対策として語ることは成り立ちません。


面接の練習を重ねた話や、過去問を解いた話は、この場に合いません。


個人面接か集団面接かでも変わります。


個人面接の一回答は30秒から40秒、文字数では200文字から250文字です。


集団面接と集団討論は、順番が来たときに発言する形ですので、一回の発言は1分以内になります。



三つ目は、話題です。



子どものことを聞かれているのか、


制度のことを聞かれているのか、


自分のことを聞かれているのか。



子どものことなら、場面を出します。


制度のことなら、自分の言葉で言い直せる範囲で述べます。


自分のことなら、意味づけを出します。



四つ目は、自分です。


これは、このあとの節で扱います。



★一つの面接の中で、どう配分するか



十九回では、一つの答えの作り方を扱ってきました。


ここでは、面接一回を単位にします。



二十分から三十分で、質問は十問程度、来ます。


そのうち、技法を効かせるところを先に決めておきます。


最初の自己アピール。一分間程度でお願いしますと言われる場所です。


ここは数を宣言できます。


二点あります、と述べて、それぞれに場面を一つ付けます。


磨いた一行は、ここでは出しません。



志望動機。ここで、第14回で扱ったナラティブを使います。


前の自分、場面、変わったところ、今。


結論の文には、理由を組み込みます。


そして、磨いた一行を一つ出します。



学級経営や授業の工夫。PREP法で組みます。


結論、理由、具体例、結論。


数を宣言するのは、取組を並べるときだけにします。



経験を聞かれる質問。


これまでに苦労したこと、印象に残っている子ども。


STAR法で組みます。


状況、課題、行動、結果。課題の部分を落としません。



教育課題を問う質問。


手順を述べる前に、どう見ているかを一言述べます。



追質問。


五つの型のどれかで来ますので、蓄えから一つ取り出します。


その場で作りません。



通して見ると、



磨いた一行を出すのは一度か二度、


数を宣言するのは二度か三度、


ナラティブは一度です。



残りは、結論を先に述べて場面を一つ付ける形で足ります。


これが配分です。


技法の半分以上は、使わないまま終わります。



★自分の立場に合わせる



四つ目の、自分です。


同じ技法でも、立場によって使い方が変わります。



教育実習しか経験のない方は、場面の数が少なくなります。


ですから、一つの場面に意味を三つ用意して、質問ごとに意味を変えます。


第14回で扱った作業が、ここでいちばん効きます。


経験していないことを聞かれたら、経験していないと一文で述べて、考えを一つ述べます。



講師の方は、場面が多くあります。


多い分、どれを出すかの選択が要ります。


そして、正規採用に至っていないことを引け目として語りません。


多様な学年を持ってきたというのが、経験になります。



民間から受験される方は、前の職場の話をどこまで出すかを決めます。


そのまま出すと、場に合いません。


前の仕事で毎日やっていたことに、教師としての意味を与えてから出します。



現職の方は、いまの勤務校での経験を中心にします。


講師時代の話に寄ると、現職が見えなくなります。


年齢についても、一つ書いておきます。


年数のある方が、若い受験者の語り方をまねる必要はありません。


持っている場面の数が違いますので、選び方のほうで差が付きます。



★統合とは、工程が同時に働いている状態です



五つの工程を、順に扱ってきました。


発想、構成、修辞、記憶、演出です。


準備の段階では、この順に進みます。


角度を決め、順番を決め、言葉を決め、頭に入れ、声に出す。



ところが面接室では、順になりません。同時に働きます。


一つの答えを三十秒話しているあいだ、こちらは角度を選び、順番どおりに出し、言葉を選び、覚えた場面を思い出し、間を取っています。


五つが重なっています。



ですから、工程のどれかが抜けていると、その三十秒の中で止まります。



角度が決まっていなければ、何を話すかで迷います。


順番が決まっていなければ、話しながら組み立てることになります。


場面を覚えていなければ、文を思い出す作業になります。


間を練習していなければ、言葉を探す音が出ます。



統合とは、この五つが一つの三十秒の中で同時に働いている状態です。


工程の順に積み上げてきた方は、すでにこの状態の近くにいます。


残っているのは、声に出す回数です。



★満点とは何か



この連載の題に、満点とあります。最後に、その中身を述べます。


満点は、減点がない状態を指しません。



この試験の面接では、評価が主観で決まります。


質問票の評価項目は、分類であって指標ではありません。


構造化面接の手法も取られていません。


面接官は、紙の項目に印を入れながら、同時に一つのことを考えています。



この人と一緒に働きたいか。



ですから、満点は、面接官がそう思った状態です。


減点を避ける準備では、そこへ届きません。


間違いのない答えをそろえても、働きたいと思わせる材料にはなりません。



届くのは、第2回から第5回で扱った三様式のうち、上の二つです。


エトス、つまり語り手への信頼と、


パトス、つまり聞き手の感情が動くこと。


ロゴス、つまり筋道は、必要ですが、そこで分かれません。



エトスは、物事の見方と、声と間で伝わります。


パトスは、場面で動きます。


そして、どちらも技法の数では決まりません。


その場に合っていることで決まります。


合っていない強い技法は、合っている素直な一文に負けます。


適切性が最後に来るのは、このためです。



★まとめ



適切性は、その場に合っているかどうかを見る働きです。


五つの工程のどれにも属さず、全体を見渡して、いまここで何を使うかを決めます。


技法がそろった状態で起きる失敗は、全部を使おうとすることです。


適切性は、使う判断ではありません。


使わない判断として働きます。



合わせる相手は四つです。



聞き手、場、話題、自分。



一つの面接を通して見ると、



磨いた一行を出すのは一度か二度、


数を宣言するのは二度か三度、


ナラティブは一度です。



技法の半分以上は、使わないまま終わります。


統合は、五つの工程が一つの三十秒の中で同時に働いている状態です。



満点は、減点がない状態ではありません。


面接官が、この人と一緒に働きたいと思った状態です。



二十回にわたって、原理と技法を扱ってきました。


ただ、どの回の内容も、読んだだけでは手元に残りません。



残るのは、自分の材料に当てたものだけです。


手元の出来事を一つ書き出して、角度を決め、三十秒で声に出してみてください。


一問できれば、二問目は速くなります。



例えば、十問そろえて面接室に入るとき、持っているのは技法ではありません。


自分の言葉になった十問です。


そこから先は、その場に合うものを選ぶだけになります。




河野正夫



 
 
 

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