第18回:演出。【面接で満点合格を目指すためのレトリック理論講座】(20回連載シリーズ)
【面接で満点合格を目指すためのレトリック理論講座】(20回連載シリーズ)
第18回:演出
★演出とは、声と体で届ける工程です
レトリックの五つの工程、発想・構成・修辞・記憶・演出のうち、演出は五番目です。
最後の工程になります。
発想で角度を決め、構成で順番を決め、修辞で言葉を決め、記憶で頭に入れました。
ここまでは、机の上でできる作業です。
演出は、それを声と体で届ける工程です。
間、速さ、声の大きさ、目線、表情、姿勢。面接室で面接官が受け取るのは、この形になったものです。
先に、二つのことを述べます。
一つ目。
演出で、中身は作れません。
角度が決まっていない答えを、声の出し方で良くすることはできません。
前の四つの工程でできたものを、そのまま届ける工程です。
二つ目。
それでも、この工程がいちばん重くなる場合があります。
第2回から第5回で扱った説得の三様式を思い出してください。
エトス(語り手への信頼)、
パトス(聞き手の感情が動くこと)、
ロゴス(筋道)の三つです。
説得の強さは、エトスが最も強く、次にパトス、ロゴスが最も弱いという順になります。
このうち、ロゴスは構成と修辞で作ります。パトスは、発想で選んだ場面で動きます。
エトスは、演出で決まる部分が大きくなります。
面接官が、この人と一緒に働きたいかどうかを考えるとき、見ているのは言葉の中身だけではありません。
どう話すかを見ています。
そして、二十分から三十分の面接では、答えの中身は受験者どうしで似てきます。
学級担任をした、授業をした、保護者と話した。
似た経験を、似た型で語ります。
そこで分かれるのが演出です。
演出は、エトスを伝えるいちばん太い経路になります。
この回では、面接室で答えているあいだの操作を、五つ扱います。

★間を取る
最初に扱うのは、間です。
演出の操作の中で、いちばん効いて、いちばん練習しやすいところです。
声の大きさや表情の動きは、その人の持っているものに左右されます。
間は、誰でも同じように取れます。
取る場所を、三つ決めます。
一つ目。
質問を聞き終わってから、答え始めるまでに一拍。
はい、と答えてすぐ本文に入ると、用意してきた答えを出した形になります。
一拍おくと、いま考えて答えている形になります。
長さは、一秒くらいです。黙りすぎると、答えに困った形に見えます。
二つ目。
結論の一文を言い終わってから、一拍。
第10回で、面接の答えは一文目に結論を述べると説明しました。
その一文のあとに一拍おくと、面接官がその結論を受け取る時間ができます。
ここで間を取らないと、結論と理由が続いて聞こえます。
どこまでが結論なのかが分かりません。
三つ目。
最後の一行の前に、一拍。
第16回で、インパクトフレーズを扱いました。結論か締めに入れる一行です。
締めに入れる場合、その直前で一拍おきます。
間のあとに来る言葉は、強く残ります。
この三か所を、原稿に書き込みます。
斜線を一本入れておけば足ります。
本番で、そのとおりにします。
間は、三か所にとどめます。
文ごとに間を入れると、途切れた話し方になります。
間が多いと、一つ一つの間が効かなくなります。
★速さを変える
一つの答えの中で、速さを変えます。
全部を同じ速さで話すと、どこが大事なのかが伝わりません。
読み上げているように聞こえます。
変える場所は、二つです。
場面を語るところは、少し遅くします。
国語の授業で、分からなかったと書いた子が十人以上いました。
ここは、面接官に絵を見てもらう箇所です。
速く話すと、絵が浮かびません。
理由を述べるところは、ふつうの速さにします。
手が挙がる子だけで進むと、分からないと言えないまま終わる子がいるからです。
ここは、筋を追ってもらう箇所です。
速さを落とす必要がありません。
そして、結論の一文と最後の一行は、一語ずつ切るように言います。
速さを落とすのとは少し違い、語の切れ目を細かく取る形になります。
目安は、一つの答えの中で二段階です。
三段階に分けようとすると、作った感じが出ます。
速さと一緒に、声の大きさも決めます。
いちばん大きくするのは、最初の一文です。
ここで声が通らないと、面接官が聞く構えを作れません。
部屋の広さは、入ってから分かります。
広い部屋で、面接官との距離が離れているときは、全体を少し上げます。
声を張るというより、口の開きを大きくします。
★フィラーワードをゼロにする
えー。あのー。えーっと。そうですね。
こうした語をフィラーワードと呼びます。
目標は、減らすことではありません。
ゼロにすることです。
フィラーワードは、日常の会話では出ません。
友人と話しているときに、えーっと、を連発する人はいません。
面接や発表のような、形式のある場で出てきます。
出る理由は、言葉を探しているあいだに音を出してしまうからです。
黙っているのが怖くなります。
ですから、直し方は一つです。
言葉を探しているあいだ、黙ります。
さきほどの間の話と、同じ操作になります。
えー、と言う代わりに、一拍おきます。
これだけで、フィラーワードは消えます。
そうですね、という一語にも、気をつけます。
えー、より出やすく、本人は丁寧な受け答えだと思っています。
働きは同じです。
質問を復唱して時間を稼ぐ形も、同じ働きになります。
学級経営で工夫していることですね、と言ってから答え始めると、その数秒で言葉を探しています。
面接官には伝わります。
自分がどれだけ使っているかは、聞かないと分かりません。
話しているあいだ、自分の耳には入っていません。
ですから、録音します。
自分の答えを一つ録って、聞き直します。
えー、を数えます。
数えられる形になれば、消す作業に入れます。
一つの答えでゼロになったら、次の答えでやります。
全部の答えでゼロになるまで続けます。
★目線と表情
面接官は二人か三人います。
目線の決め方を書きます。
質問をした面接官に答えます。これが基本です。
そして、答えの途中で、ほかの面接官にも目線を向けます。
向けるのは、理由を述べているあたりです。
結論を言うときと、最後の一行を言うときは、質問した面接官に戻します。
全員に均等に向けようとすると、首が動きすぎます。
一つの答えで、一度か二度、ほかの面接官を見れば足ります。
考えているあいだに下を見るのは、短くします。
一拍のあいだだけです。
下を見たまま話し始めると、答えが届きません。
表情については、一つだけ決めておきます。
子どもの話をするところで、表情が動きます。
ここは、作る必要がありません。
実際にあった場面を思い出して話せば、自然に動きます。
第17回で、文より場面を覚えると説明しました。
場面を思い出して話していると、表情はそこで動きます。
原稿を思い出して話していると、表情が止まります。
目が上のほうへ行きます。面接官は、それを見ています。
表情の作り方を練習するより、場面を思い出す形で話す練習をするほうが早くなります。
★姿勢と手
姿勢と手については、動かす範囲を先に決めます。
姿勢は、背中を椅子に付けません。
浅く座って、上半身を立てます。
長く話していると前に出てきますので、答えのあいだに戻します。
手は、膝の上です。
話しているうちに動きたくなります。
動かしてはいけないわけではありませんが、範囲を決めておきます。
膝の上から離れない範囲にします。
範囲を決める理由があります。
手が大きく動くと、面接官の目がそちらへ行きます。
言葉より手を見られます。
そして、動く量が多い人は、話が熱くなるほど増えます。
自分では気づきません。
範囲を決めておけば、増えません。
面接官が話しているあいだの体の扱いも、決めておきます。
質問を聞いているあいだは、相手を見ます。
うなずきは、質問の終わりに一度で足ります。
何度もうなずくと、早く答えたい人に見えます。
ここは、録音では分かりません。
鏡の前で話すか、動画で撮ります。
★練習のしかた
前の四つの工程は、机の上でできます。
演出だけは、声を出さないと身につきません。
手順を四つ書きます。
1.原稿に斜線を入れる
間を取る三か所に、斜線を一本ずつ入れます。
質問のあと、結論のあと、最後の一行の前。
2.一つの答えを録音する
30秒から40秒の答えを一つ、声に出して録ります。
3.聞き直して、三つを数える
フィラーワードの数。斜線のところで間が取れているか。
場面のところで速さが落ちているか。
この三つだけを見ます。
四つ以上を一度に見ると、どれも直りません。
4.同じ答えを、もう一度録る
直したうえで、もう一度録ります。
二回で足ります。
三回目からは、同じ言い方になってきて、読み上げに近づきます。
これを、答えの数だけ繰り返します。
一つの答えで十分間ほどです。
鏡や動画は、姿勢と手を見るときに使います。
こちらは、全部の答えでやる必要がありません。
一つか二つで足ります。
一人でできるのは、ここまでです。
目線と、聞いているあいだの姿は、人に見てもらわないと分かりません。
相手が座っていないと、目線の動きが出ないからです。
★まとめ
演出は、五つの工程の五番目です。
発想、構成、修辞、記憶でできたものを、声と体で届ける工程です。
この工程で、中身は作れません。
ただ、エトス、つまり語り手への信頼は、ここで決まる部分が大きくなります。
答えの中身が似てくる場では、どう話すかが分かれ目になります。
扱った操作は、五つです。
間を取ります。
質問のあと、結論のあと、最後の一行の前。
この三か所です。
速さを変えます。
場面は少し遅く、理由はふつうに。
声の大きさは、最初の一文をいちばん大きくします。
フィラーワードをゼロにします。
言葉を探しているあいだは、黙ります。
目線は、質問した面接官に答えて、途中でほかの面接官にも向けます。
表情は、場面を思い出して話せば動きます。
姿勢と手は、動かす範囲を先に決めます。
そして、この工程は、声に出さないと身につきません。
録音して、聞き直します。
河野正夫

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