第16回:インパクトフレーズ。【面接で満点合格を目指すためのレトリック理論講座】(20回連載シリーズ)
【面接で満点合格を目指すためのレトリック理論講座】(20回連載シリーズ)
第16回:インパクトフレーズ
<この回こそ、レトリックの表現方法の極意です!面接で合格したい方は、是非とも、ご一読ください!>
★インパクトフレーズとは
インパクトフレーズとは、面接が終わったあとに、面接官が口に出せる一行です。
前回、修辞の工程を扱いました。
レトリックの五つの工程、発想・構成・修辞・記憶・演出のうち、三番目の工程です。
答え全体の言葉を決める工程でした。
インパクトフレーズは、その中で、一行だけを特に磨いたものです。
二十分から三十分の面接で、面接官が受け取る言葉の量は限られます。
手元に残るのは、一語か二語、長くて一行です。
その一行を、自分で決めておく。これがこの回の作業です。
決めておかなければ、残る一行は面接官が選びます。
選ばれるのは、たいてい、こちらが力を入れていない箇所です。
もう一つ、効くところがあります。
残った一行から、追質問が来ます。
自分で決めた一行が残っていれば、話が自分の語れる場所に戻ってきます。

★気の利いた言い回しは要りません
インパクトフレーズという言葉を聞くと、うまい一行を作る方向に動きやすくなります。
ここで、実際に面接で使われている一行を、四つ挙げます。
どれも働きません。
理由を付けます。
「子どもたちの可能性を信じ、共に成長する教師になりたいです。」
言い古された形です。面接官は、この一行を一日に何度も聞きます。
この形が選ばれやすい理由もあります。
誰も反対しないからです。
反対されない言葉は、安全に見えます。
ただ、残る一行は、ほかの人が言っていない一行です。
この形は、全員が言える形になっています。
「私は、子どもの心に火を灯す教師になりたいです。」
比喩が入っています。
心に火を灯すという言い方は、教室の中の行為を指していません。
面接官は、学校で毎日子どもを見ている方です。
比喩を聞くと、中身がないところを言葉で埋めたように受け取ります。
「教育とは、人を育てる仕事です。」
格言の形です。
正しいことを言っていますが、この人が言う必要がありません。
誰が言っても同じ文になります。
「子ども一人一人の理解の状況を把握しながら、授業の中で個別に支援していくことを大切にしています。」
四十七字あります。
文として整っていますが、長すぎて一行になりません。
聞き終わったときに、どこが芯なのかが分かりません。
もう一つ、作りやすい形があります。
対になっている言葉の片方を裏返す形です。
厳しさと優しさ、
集団と個。
この二つを持ち出して、片方を言い直すと、形の整った一行になります。
ただ、この形は誰でも作れます。
既にある対立を動かしているだけですので、語っている本人の持ち物が入りません。
試験で働く一行は、別の作りになっています。
★四つの条件
働く一行には、だいたい次の四つが当てはまります。
1.短い
一息で言える長さにします。二十字から三十字くらいが目安です。
短くするときは、修飾語を外します。
きめ細かく、しっかりと、丁寧に。
こうした語を外すと、残るものがはっきりします。
2.聞いて分かる
音で届く言葉にします。
漢語を重ねません。
造語も作りません。
聞いた瞬間に意味が取れる一行にします。
意味の取りにくい一行を出すと、面接官がその言葉について聞いてきます。
説明に時間を使うことになります。
3.自分の経験から出ている
ここが中心です。
働く一行でよく見るのは、学校の中で定まっている言葉に、自分の定義を与えた形です。
「私にとっての指導は、待つことです。」
「私にとっての評価は、子どもが次に何をするかを決める材料です。」
「私にとっての教材研究は、つまずく場所を先に見つけておく作業です。」
指導、評価、教材研究。
どれも、学校で毎日使われている言葉です。
意味も定まっています。
その定まった言葉に、自分の定義を置きます。
すると、この人がその言葉をどう扱っているかが、一行で伝わります。
定義を置く言葉は、自分が毎日使っているものから選びます。
指導、評価、教材研究、授業、学級経営、支援、見守り。
この中から、自分がいちばん手を動かしてきた一語を取ります。
別の形もあります。意外な一点を指定する形です。
「私が一番時間をかけているのは、授業の最初の三分です。」
教材研究、板書、振り返り。
時間をかける先は、いくつもあります。
その中から最初の三分を指定したところに、この人の見方が出ます。
自分がやっていることの逆を言う形もあります。
「教えない勇気を持つことです。」
教える仕事の中で、教えないほうを先に置きました。
言葉は短く、比喩も入っていません。
形はこの三つに限りません。
共通しているのは、自分がやってきたことから出てきている点です。
思いついた言い方を当てる作業ではありません。
4.言い切りすぎない
働く一行は、全部を説明していません。
私にとっての指導は、待つことです。
この一行は、なぜ待つのかを言っていません。
聞いた側が、その先を考えます。
第5回で扱ったエンテュメーマ、つまり省略三段論法と同じ仕組みです。
言い切らずに止めると、聞き手が残りを埋めます。
埋めた分は、聞き手自身のものになります。
全部言い切ると、聞き手の考える場所がなくなります。そして、押しつけに近づきます。
私にとっての、という限定が入っているのも、同じ働きです。
この限定があると、一般論を述べた形になりません。
★作ってみます
一行は、一度では出てきません。
書き直していく過程を、そのまま説明します。
材料は、授業で分からないと言えない子がいた、という経験です。
一回目。
「一人一人の理解に寄り添う授業をしたいです。」
抽象語で止まっています。
寄り添うという語から、何も見えません。
最初に出てくる一行は、たいていこの形になります。
二回目。
「分からないという声なき声を聞き取りたいです。」
比喩が入りました。
一回目より良くなった感じがします。
言葉に重みが出たように読めます。
ただ、実際には悪くなっています。
声なき声という言い方は、面接では浮きます。
抽象語を、比喩で言い直しただけです。
ここで、前回扱った操作に戻ります。
抽象語を、実際にやっている行為の言葉に替えます。
三回目。
「授業の終わりに、分からなかったと書ける欄を作っています。」
やっていることが、そのまま入りました。
具体になりました。
ただ、これはまだ行為の説明です。
やっていることが分かるだけで、一行としては残りません。
四回目。
三回目を見て、その行為は何のためだったのかを考えます。
欄を作ったのは、分からないと言える場がなかったからです。
この言葉を、授業という語の定義に入れます。
「私にとっての授業は、分からないと言える場をつくる時間です。」
授業という定まった言葉に、自分の定義を置きました。
比喩は入っていません。
そして、なぜそう考えるのかは言っていません。
三回目を通ったほうが、四回目が出やすくなります。
抽象語から直接、気の利いた一行へ飛ぼうとすると、二回目の形になりやすくなります。
★置き場所は、結論か締めのどちらかです
一行を作ったら、答えのどこに入れるか。
置ける場所は二つあります。
一つ目は、結論の位置です。
あなたが大切にしていることは何ですか。
「教えない勇気を持つことです。」
一文目が、そのまま一行になりました。
面接官は、何の話かを受け取り、同時にその一行を持ちます。
あとに続く理由と具体例が、この一行を支える形になります。
この形が取れるのは、作った一行が、問いに正対する文として成り立つときです。
大切にしていることは何かと聞かれて、教えない勇気を持つことです、と答えれば、問いに正対しています。
二つ目は、締めの位置です。
作った一行が、問いへの答えとして一文目に置けないこともあります。
私にとっての授業は、分からないと言える場をつくる時間です。
この一行は、授業で工夫していることは何ですかという問いへの、直接の答えになっていません。
工夫の中身を述べていないからです。
ですから、締めに置きます。
第12回で扱ったPREP法に当てはめます。
結論、理由、具体例、結論の順で話す型です。
「はい。私が授業で工夫しているのは、授業の終わりに、分からなかったと書ける欄を作ることです。手が挙がる子だけで進むと、分からないと言えないまま終わる子がいるからです。国語の授業で、登場人物の気持ちを扱ったときに、分からなかったと書いた子が十人以上いました。次の時間の初めに、そこをもう一度取り上げました。書いた子は、最初に手を挙げた子の中には入っていませんでした。私にとっての授業は、分からないと言える場をつくる時間です。」
最後のPの位置に、一行が入りました。
どちらに置くかの見分け方は、一つです。
その一行が、問いの言葉に正対する文として成り立つかどうか。
成り立つなら一文目に置きます。
成り立たないなら締めに置きます。
★一つの面接に、一つか二つ
一つの面接で出す数は、一つか二つにしておくと働きます。
三つ以上置くと、分かれます。
面接官の手元に残る量には限りがありますので、三つ置けば三つに分かれます。
そして、磨いた一行が何度も出てくると、用意してきた言葉だと伝わります。
ですから、どの質問で出すかを先に考えておきます。
志望動機、自己アピール、教育観を問う質問。
このあたりが、入れやすい場所です。
決めた質問が来ないこともあります。
そのときは、近い質問で出します。
授業について聞かれたとき、学級について聞かれたとき。
自分の一行が入る場所は、一つの面接の中にいくつかあります。
残りの質問では、ふつうに答えます。
ふつうの答えが続いたあとに一行が来ると、その一行が立ちます。
★ラベリングとの違い
第11回で、ラベリングを扱いました。
項目ごとに一言の見出しを付ける技法です。
居場所の確保、家庭との連携、校内での情報の共有。
どちらも短い言葉を作る作業ですので、混ざりやすくなります。
四つの点で違います。
一つ目。
ラベリングの見出しは、名詞で止めます。
インパクトフレーズは、文の形になります。
二つ目。
見出しは、一つの答えの中に二つか三つ置きます。
インパクトフレーズは、面接全体で一つか二つです。
三つ目。
見出しは、項目の頭に置きます。
インパクトフレーズは、結論か締めに置きます。
四つ目。
見出しの仕事は、聞き取りを助けることです。
インパクトフレーズの仕事は、記憶に残ることです。
両方を使うこともできます。
項目に見出しを付けて答えを並べ、最後に一行を置く形です。
★まとめ
インパクトフレーズとは、面接が終わったあとに、面接官が口に出せる一行です。
気の利いた言い回しは要りません。
比喩も、格言も、対になっている言葉の裏返しも、面接では働きません。
働く一行は、自分がやってきたことから出てきます。
学校の中で定まっている言葉に自分の定義を与える。
時間をかけている一点を指定する。
やっていることの逆を言う。
どの形でも、元になるのは自分の手元にあるものです。
作るときは、一度で出そうとしません。
抽象語から始めて、実際にやっている行為まで降りて、その行為が何のためだったかを考えて、一行を立てます。
置き場所は、結論か締めです。
問いに正対する文として成り立つなら一文目、成り立たないなら締めに置きます。
河野正夫

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