第15回:修辞(表現)【面接で満点合格を目指すためのレトリック理論講座】(20回連載シリーズ)
【面接で満点合格を目指すためのレトリック理論講座】(20回連載シリーズ)
第15回:修辞(表現)
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★修辞とは、どの言葉で言うかを決める工程です
レトリックの五つの工程、発想・構成・修辞・記憶・演出のうち、修辞は三番目に来ます。
第8回で扱った発想の工程で、自分の経験のどこから見るかを決めました。第10回で扱った構成の工程で、文の順番を決めました。
残っているのは、言葉です。
何を言うかは、もう決まっています。
その中身を、どの言葉で言うか。
これを決めるのが修辞です。
同じ中身でも、言葉が替わると、届き方が替わります。
子ども一人一人に寄り添います。
その日、一度も声をかけていない子がいないかを、帰りの会の前に確かめます。
言っている中身は、近いものです。
ただ、面接官の手元に残るものが違います。
もう一組、見てみます。
保護者との信頼関係を大切にしています。
学級通信に書いたことは、家庭訪問でも子供の状況に合わせてお伝えします。
これも、中身は近いものです。後ろのほうには、やっていることが見えます。
この回では、面接の言葉を選ぶときに効く操作を、五つ扱います。

★抽象語を、具体の言葉に替える
面接でよく使われる言葉があります。
寄り添う。
信頼関係。
個に応じた指導。
主体性。
きめ細かい支援。
どれも、間違った言葉ではありません。
学校の中で実際に使われています。
ただ、この言葉を聞いた面接官の側には、何も見えません。
寄り添うという言葉から、どんな行為が浮かぶでしょうか。
人によって違いますし、浮かばないこともあります。
この種の言葉が選ばれやすい理由があります。
どの質問にも当てはまるからです。
学級経営でも、授業でも、保護者対応でも、寄り添うという語は置けます。
置ける言葉は、安全に見えます。
替え方は、一つです。
その言葉を、実際にやっている行為の言葉にします。
寄り添うを、話しかけずに横に座っている、に。
信頼関係を築くを、約束したことをその日のうちに返す、に。
個に応じた指導を、同じ問題を三通りの解き方で用意する、に。
きめ細かい支援を、提出物が出ていない子に理由を聞いてから期限を決める、に。
主体性を育てるを、やり方を二つ示して、どちらにするかを決めてもらう、に。
抽象語のほうが、言うのは簡単です。
一語で済みます。
具体の言葉にすると、少し長くなります。
それでも、面接官が受け取れるのは、具体の側です。
目安があります。
その言葉を聞いた人が、場面を一つ思い浮かべられるかどうかです。
浮かばないなら、まだ抽象語のままです。
★教育の言葉を、自分の言葉で言い直す
学習指導要領や答申に出てくる言葉があります。
主体的・対話的で深い学び。
社会に開かれた教育課程。
個別最適な学び。
資質・能力の三つの柱。
これらは、正確な用語です。
意味も定まっています。
面接で使ってはいけない言葉ではありません。
ただ、用語をそのまま置いて終わると、二つのことが起きます。
一つ目は、その用語を知っているかどうかの話になることです。
知識の確認で終わります。
二つ目は、同じ用語が、ほかの受験者の答えにも入っていることです。
面接官は、一日に何度も同じ言葉を聞きます。
ですから、用語を置いたあとに、自分の言葉で言い直します。
「主体的・対話的で深い学びを目指しています。授業では、問いを出したあと、まず隣の人と話す時間を取ります。自分の考えが言葉になってから全体で出すほうが、意見が出てきます。」
用語が先、自分の言葉が後です。
用語だけで止めません。
言い直すときに使うのは、教室で実際に起きていることです。
辞書の説明を別の言い方にする作業ではありません。
もう一つ、決めておくことがあります。
中身を自分の言葉で言えない用語は、使いません。
用語を一つ置くと、そこから追質問が来ます。
言い直せない用語を置くと、その追質問で止まります。
覚えた語の数を増やすより、言い直せる語を三つか四つ持つほうが、面接では働きます。
★耳で分かる言葉を選ぶ
面接は、音で届きます。
紙に書いた原稿として読むと通る文が、声にすると聞き取れないことがあります。
とくに、漢語が続くときに起きます。
「本校の教育課程の編成に主体的に参画し、組織的な学校運営の一員としての自覚をもって職務に従事します。」
黙読すると、整っています。
声にすると、漢語の連なりが耳に届きます。
一つの意味を取る前に、次の語が来ます。
言い直します。
「学校全体で決めたことを、自分の学級でも同じようにやります。分からないことは、学年の先生方に聞いてから動きます。」
中身は近いものです。音で届く形になりました。
もう一つ、保護者への連絡を述べる場面で見てみます。
「保護者との情報共有の徹底を図り、学校と家庭の連携体制の構築に努めます。」
これも、声にすると残りません。言い直します。
「学級全体に伝えたことは、保護者の方にも子供の現状に合わせてお伝えします。先に学校から伝えるようにしています。」
目安を三つ書きます。
一つ目。
漢語を三つ以上続けません。
教育課程の編成、組織的な学校運営、職務への従事。
こうした語が並んだら、どれかを日常の言い方に替えます。
二つ目。
同じ音の語を近くに置きません。
たとえば、指導と児童です。
どちらも学校で毎日使う語で、音が近くなります。
一つの文に両方入るときは、文を分けます。
数の読み方も、同じです。
十分という書き方は、じゅうぶんとも、じゅっぷんとも読めます。
時間のことを言うなら、十分間、と言います。
三つ目。
声に出して読みます。
息が続かない箇所は、文が長すぎます。
自分が読んで詰まる箇所は、聞いている側も詰まります。
★文を短くする
一つの答えは、30秒から40秒です。文字数では、200文字から250文字です。
この中に入る文の数は、四つから六つです。
一文は、30字から45字くらいになります。
長くなるのは、理由と条件を一文に詰めたときです。
「私は、子ども一人一人の実態が異なることを踏まえ、学級全体への指導と個別の支援の両方を大切にしながら、保護者とも連携して、安心して過ごせる学級をつくりたいと考えています。」
一文で、四つのことを言っています。
聞き終わったときに、どれが主なのかが分かりません。
分けます。
「私は、安心して過ごせる学級をつくりたいと考えています。そのために、学級全体への指導と、個別の支援を分けて考えています。保護者の方にも、学級全体に伝えたことは、学級通信で同じようにお伝えします。」
三つの文になりました。
一文に一つのことが入っています。
分け方は単純です。
一文の中に、ながら、踏まえ、つつ、とともに、という語が入っていたら、そこで切ります。
ただし、全部を短く切りそろえる必要はありません。
十字の文ばかりが続くと、ぶつぶつした話し方になります。
短い文と、少し長い文を混ぜます。
言いたいところを短く、説明のところを少し長く。
この形にすると、聞いている側が、どこが主なのかを受け取れます。
★へりくだりを足さない
敬体で話そうとすると、へりくだりの表現が増えます。
させていただいております。
お話をさせていただきました。
携わらせていただいた経験がございます。
丁寧にしようとして足した言葉です。
ただ、足すほど、中身が後ろに下がります。
直します。
させていただいております、を、しています、に。
お話をさせていただきました、を、お話ししました、に。
携わらせていただいた経験がございます、を、担当しました、に。
です・ます調で十分です。
面接官は、丁寧さの度合いを測っていません。
もう一つ、重ねたくなる形があります。
かなと思います。
のような気がします。
だと思われます。
自分の経験を述べるところでこの形を使うと、本人も確信していない話に聞こえます。
やったことは、やりました、と述べます。
考えていることは、考えています、と述べます。
なお、へりくだりを外すことと、敬称を外すことは別です。
同僚の先生方、学年主任の先生、養護教諭の先生。
学校の中の方を指すときは、敬称を付けます。
ここは短くしません。
★言葉を替えても、角度は替わりません
ここまで、言葉の操作を五つ扱いました。
最後に、この工程の範囲を書いておきます。
修辞は、三番目の工程です。
発想で角度を決め、構成で順番を決めたあとに来ます。
ところが、準備を始めるとき、最初に手が付くのは言葉です。
言い回しを直すのは、すぐにできます。
原稿を見て、抽象語を具体に替えれば、見た目が変わります。
それでも、答えの中身は変わりません。
寄り添いたいと考えています、という一文を、横に座っています、に替えても、何を語るかは動いていません。
語る角度が決まっていないままです。
言葉を直しても良くならないときは、前の工程に戻ります。
第8回で扱った発想の工程に戻って、その経験を自分の何を示す話として語るのかを決め直します。
第10回で扱った構成の工程に戻って、どの順に並べるかを決め直します。
修辞は、決まったものを仕上げる工程です。
決まっていないものを、修辞で決めることはできません。
★直す手順
手元に原稿があるとして、手を入れる順番を書きます。
1.声に出して読む
まず読みます。詰まる箇所、息が続かない箇所に印を付けます。黙読では見つかりません。
2.長い文を切る
ながら、踏まえ、つつ、とともに。これらの語のところで切ります。一文に一つのことだけを残します。
3.抽象語を探して、具体に替える
寄り添う、信頼関係、個に応じた、主体性。見つけたら、実際にやっている行為の言葉にします。
4.へりくだりを外す
させていただく、ございます、かなと思います。見つけたら、です・ます調に戻します。
5.もう一度、声に出して読む
時間をはかります。30秒から40秒に入っていれば、そのままで使えます。
この順でやると、一つの答えに十分間ほどかかります。
順番には理由があります。
先に声に出すと、直す場所が自分で分かります。
先に抽象語を替えると、文が長くなりますので、文を切る作業を前に置きます。
★まとめ
修辞は、どの言葉で言うかを決める工程です。
レトリックの五つの工程、発想・構成・修辞・記憶・演出のうち、三番目に来ます。
扱った操作は、五つです。
抽象語を、具体の言葉に替える。
教育の言葉を、自分の言葉で言い直す。
耳で分かる言葉を選ぶ。
文を短くする。
へりくだりを足さない。
どれも、新しい言葉を覚える作業ではありません。
すでに持っている言葉を、置き換える作業です。
そして、言葉を替えても、語る角度は替わりません。
直しても良くならないときは、発想と構成の工程に戻ります。
河野正夫

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