第13回:STAR法。【面接で満点合格を目指すためのレトリック理論講座】(20回連載シリーズ)
【面接で満点合格を目指すためのレトリック理論講座】(20回連載シリーズ)
第13回:STAR法
★STAR法とは
STAR法は、経験を語るときの順番を決める型です。
四つの頭文字を並べた名前になっています。
S Situation 状況
T Task 課題
A Action 行動
R Result 結果
いつ、どこで、何があったか。これが状況です。
そこで何が問題だと考えたか。これが課題です。
自分が何をしたか。これが行動です。
どうなったか。これが結果です。
この四つを、この順に並べます。
もともとは、民間企業の採用面接で使われてきた型です。
応募者が過去に実際にどう動いたかを聞き取るために広まりました。
レトリックの五つの工程、発想・構成・修辞・記憶・演出のうち、STAR法は構成の工程で使う型です。
前回のPREP法と同じ場所にあります。

★どのような質問で使うか
STAR法は、経験を聞かれたときに使います。
実際の質問で挙げると、こうなります。
これまでに印象に残っている子どもとのエピソードを教えてください。
これまでに苦労した経験を話してください。
失敗した経験と、そこから学んだことを教えてください。
学級担任として、力を入れて取り組んだことを教えてください。
講師として続けてきたことを教えてください。
共通しているのは、過去にあったことを一つ挙げて、その話をしてくださいという形です。
面接官が、こうした質問をする理由があります。
実際に動いたことを聞けば、着任したあとの動きが見えてくるからです。
考えを述べるだけの答えでは、そこが伝わりません。
一方で、どう考えますか、どう対応しますか、何が大切だと思いますか、という質問には、この型を使いません。
そちらで使う型は、このあとの節で整理します。
★一つの質問で、通してみます
実際に作ってみます。
これまでに印象に残っている子どもとのエピソードを教えてください。
「はい。中学二年生の担任をしていたときに、学級に、ほとんど話をしない生徒がいました。班の活動になると、手が止まってしまいます。私は、話せるようにすることを目標にすると、その生徒の負担になると考えました。そこで、言葉を使わずに参加できる場をつくることを課題にしました。班の話し合いで、中身を紙に書く記録係という役割をつくって、その生徒に頼みました。二か月ほど経ったころ、書いた紙を自分で読み上げました。それから、班の中では話すようになりました。」
四つの部分に分けると、こうなっています。
状況は、中学二年生の学級に、ほとんど話をしない生徒がいて、班の活動で手が止まっていた、というところです。
課題は、話せるようにすることを目標にすると負担になるので、言葉を使わずに参加できる場をつくる、と考えたところです。
行動は、記録係という役割をつくって頼んだ、というところです。
結果は、二か月ほどで自分から読み上げ、班の中では話すようになった、というところです。
★課題(T)が抜けやすい
STAR法で、いちばん抜けやすいのが課題の部分です。
抜けると、こうなります。
「はい。中学二年生の担任をしていたときに、ほとんど話をしない生徒がいました。班の話し合いで、記録係という役割をつくって、その生徒に頼みました。二か月ほど経ったころ、書いた紙を自分で読み上げました。」
状況、行動、結果の三つは入っています。
話としては成り立っていますし、短くまとまっています。
本人は、型どおりに話したつもりになります。
ただ、なぜ記録係だったのかが出てきません。
同じ生徒を前にして、別の手もあります。
少しずつ話す練習をする。隣の席の生徒に声をかけてもらう。
班を少人数にする。どれも考えられる手です。
その中から記録係を選んだ理由が、課題の部分に入ります。
話せるようにすることを目標に置かない、という判断です。
ここに、その人の見方が出ます。
課題が抜けると、行動だけが残ります。
行動は、聞いた人がそのまま使えます。
記録係をつくったという話は、誰でも真似できます。
課題が入ると、その行動がその人の判断から出てきたことが伝わります。
もう一つ、課題の置き方で気をつけることがあります。
その生徒が話せないことが課題でした。
この書き方は、課題を子どもの側に置いています。
すると、子どもの問題点を挙げた形になります。
課題は、自分が何をするかに関わる形で書きます。
言葉を使わずに参加できる場をつくる。
これは自分の側の課題です。
確かめ方があります。
課題の文は、〜と考えました、〜を課題にしました、〜が必要だと思いました、という形で終わります。
原稿にこの形の文が一つもなければ、課題が抜けています。
★結果(R)には、子どもの変化を置きます
結果の部分に何を置くか。
置くのは、子どもの変化です。
二か月ほど経ったころ、書いた紙を自分で読み上げました。それから、班の中では話すようになりました。
これが結果です。
子どもが、前と違う姿を見せたところを述べます。
置かないほうがよいものもあります。
自分の成果や、周りからの評価です。
この取組は、学年の先生方からも評価していただきました。
私の学級経営は、うまくいったと思います。
教員採用試験は、良い教師を選ぶ場です。
子どもがどう変わったかを語れば、教師としての力は伝わります。
自分の成果を語ると、話の中心が子どもから自分に移ります。
変化は、見える形で述べます。
二か月という長さ、自分で読み上げたという行為、班の中では話すようになったという範囲。
こうした具体が入ると、変化が伝わります。
数えていないものを、何パーセントという形にはしません。
作った数字は、追質問で崩れます。
うまくいかなかった経験を聞かれることもあります。
その場合、結果は良くなりません。
結局、班の中でも話せるようにはなりませんでした。
ここで終わらせずに、一文足します。
あとから気づいたことです。
あとで振り返ると、役割を私が決めてしまっていました。
その生徒に、どの係がよいかを聞いていませんでした。
結果が良くないときは、結果のあとに、気づいたことを置きます。
この形にすると、失敗の話が、見方の話になります。
結果のあとに、もう一文置ける場合もあります。
その経験を今どう使っているか、という一文です。
字数に余裕があるときだけ足します。
★200文字から250文字に収める
一つの回答の長さは、30秒から40秒です。
文字数では、200文字から250文字です。
四つの部分の配分は、こうなります。
状況 40字から50字
課題 40字から60字
行動 60字から80字
結果 40字から60字
前回のPREP法では、具体例の部分がいちばん長くなりました。
STAR法では、四つがほぼ同じくらいの長さになります。
長くなりやすいのは、状況です。
いつ、どの学年、どんな学級だったか。
説明したいことが次々に出てきます。
学級の人数、学校の様子、その生徒の家庭のこと。
状況に入れるのは、課題を理解するために必要なことだけにします。
それ以外は、聞かれてから答えます。
削る手順は、こうなります。
1.状況から、課題に関わらない説明を外します。
2.行動を一つに絞ります。二つやったことがあっても、一つだけ述べます。
3.結果を一文にします。
★PREP法との使い分け
前回、PREP法を扱いました。
結論、理由、具体例、結論の順で話す型です。
二つの型は、質問の形で使い分けます。
経験を聞かれたときは、STAR法です。
これまでに苦労した経験を話してください。
印象に残っている子どものエピソードを教えてください。
考えや取組を聞かれたときは、PREP法です。
学級経営で大切にしていることは何ですか。
保護者から相談があったとき、どのように対応しますか。
見分け方は、質問の中に過去を指す言葉があるかどうかです。
これまでに、経験、エピソード、取り組んだこと。
こうした言葉が入っていれば、STAR法を使います。
二つを組み合わせる形もあります。
PREP法の具体例の部分を、小さなSTARで組みます。
「私が大切にしているのは、言葉以外の参加の形をつくることです。話すことが苦手な生徒が、参加できないままになってしまうからです。中学二年生の担任のときに、班の活動で手が止まる生徒がいました。言葉を使わずに参加できる場をつくろうと考えて、紙に書く記録係を頼みました。二か月ほどで、自分から読み上げるようになりました。ですから、参加の形を増やすことを続けています。」
具体例の部分に、状況、課題、行動、結果が小さく入っています。
質問が、両方をまとめて聞いてくることもあります。
これまでの経験を踏まえて、どのように取り組みますかという形です。
このときは、STAR法で経験を述べて、最後に取組の一文を足します。経験が先、これからが後です。
★材料の作り方
STAR法は、材料がなければ組めません。
語れる経験を、手元にそろえておきます。
手順を四つ書きます。
1.経験を書き出す
これまでに関わった子ども、受け持った学級、保護者とのやりとり、授業で起きたこと。
うまくいった話も、うまくいかなかった話も、両方書きます。
2.一つ選んで、課題を書く
選んだ経験について、自分が何を問題だと考えたかを、一文で書きます。
これが書けない経験は、使いません。
書けないのは、そのとき判断をしていなかったか、まだ思い出せていないかのどちらかです。
3.行動と結果を書く
やったことを一つ、子どもの変化を一つ書きます。
4.状況を最後に書く
課題、行動、結果がそろってから、状況を書きます。
先に状況を書くと、長くなります。
あとから書くと、課題を理解するために必要なことだけが残ります。
第8回で扱った発想の工程と、同じ作業になります。
手元にあるものを全部出して、そこから選ぶ。
この順です。
材料は、三つか四つ用意しておきます。
経験を聞く質問は、形を変えて何度も出てきます。
そろえるときに、出どころを散らします。
授業の話、学級の話、保護者とのやりとり、同僚の先生方と動いた話。
四つとも授業の話にすると、別の質問で同じ場面を繰り返すことになります。
★まとめ
STAR法は、状況、課題、行動、結果の順で経験を語る型です。
経験を聞かれたときに使います。
考えや取組を聞かれたときは、PREP法を使います。
いちばん気をつけるところは、課題の部分です。
状況、行動、結果の三つがそろうと、できた形になりますので、抜けても気づきにくくなります。
〜と考えました、で終わる一文が入っているかを確かめます。
結果には、子どもの変化を置きます。
自分の成果は置きません。
うまくいかなかった経験のときは、結果のあとに、気づいたことを一文足します。
長さは、200文字から250文字です。
長くなりやすいのは状況ですので、課題に関わらない説明は外します。
河野正夫

コメント