第11回:ナンバリングとラベリング。【面接で満点合格を目指すためのレトリック理論講座】(20回連載シリーズ)
【面接で満点合格を目指すためのレトリック理論講座】(20回連載シリーズ)
第11回:ナンバリングとラベリング
★二つの技法の名前
今回は、ナンバリングとラベリングという二つの技法を扱います。
どちらも、話を聞きやすくするための技法です。
話の中身を変えずに、受け取りやすさだけを上げます。
覚えることは少なく、使い始めたその日から効きます。
順番に説明します。

★ナンバリングとは
ナンバリングとは、これから語る項目の数を、話の最初に示す技法です。
言い方は、こうなります。
私が考える理由は、三つあります。
取り組みたいことは、二点あります。
順番に、二つ申し上げます。
大きく二点に分けて、お答えします。
この一言を先に置くだけです。
置く場所は、冒頭の返事のすぐあとです。
はい、と答えてから、数を示します。
効果は、聞き手の側に出ます。
面接官は、三つあります、と聞いた時点で、今からいくつ話を聞けばよいのかがわかります。
終わりが見えている話は、楽に聞けます。
一つ目が終わったとき、まだ二つ来ると知っているので、安心して待てます。
数を言わないと、面接官は、いつ終わるのかわからないまま聞くことになります。
一つ目が終わったところで、答えが終わったと受け取ることもあります。
そこへ二つ目が始まると、声が重なります。
話す側にも効果があります。
三つあります、と宣言した人は、三つで終わります。
宣言しないと、話しているうちに思いついたことを足してしまい、長くなることがあります。
そして、終わりが伝わります。
宣言した数を言い終われば、答えが終わったことが面接官に届きます。
★ラベリングとは
ラベリングとは、それぞれの項目に、一言で表す見出しを先に付ける技法です。
言い方は、こうなります。
一つ目は、信頼関係の構築です。
二つ目は、ICTの有効活用です。
三つ目は、家庭との連携です。
この見出しを言ってから、中身の説明に入ります。
効果は、結論が先に来ることです。
見出しを聞いた面接官は、これから何の話が始まるのかを、聞く前に知ります。
ですから、続く説明を、その見出しの中身として受け取れます。
置き場所が先に決まっているので、説明が頭に入ります。
一つの項目で、違いを見てみます。
見出しを付けない場合は、こうなります。
教室に入ることが難しいときには、保健室や相談室など、その子が落ち着いて過ごせる場所を用意します。
見出しを付けると、こうなります。
一つ目は、居場所の確保です。教室に入ることが難しいときには、保健室や相談室など、その子が落ち着いて過ごせる場所を用意します。
説明の文は、一字も変えていません。
前に見出しを足しただけです。
見出しを付けずに説明から入ると、面接官は、これは何の話だろうと考えながら聞くことになります。
考えながら聞いているので、説明の半分しか入りません。
★二つを組み合わせます
ナンバリングとラベリングは、組み合わせて使います。
不登校傾向の児童生徒への対応について聞かれた場合で、やってみます。
まず、二つの技法を使わない形です。
「はい。教室に入ることが難しいときには、保健室や相談室など、その子が落ち着いて過ごせる場所を用意します。保護者の方とも小まめにやりとりをして、学校と家庭で見ている姿をそろえます。学年の先生方や養護教諭の先生、スクールカウンセラーとも、気づいたことを共有していきます。」
内容は足りています。ただ、三つのことを述べているという形が、聞いている側に見えません。
次に、二つの技法を使った形です。
「はい。私が大切にしたい対応は、三つあります。
一つ目は、居場所の確保です。教室に入ることが難しいときには、保健室や相談室など、その子が落ち着いて過ごせる場所を、学校の中に用意します。
二つ目は、家庭との連携です。保護者の方と、その子の様子を小まめにやりとりして、学校と家庭で見ている姿をそろえます。
三つ目は、校内での情報の共有です。学年の先生方や養護教諭の先生、スクールカウンセラーと、気づいたことをその日のうちに共有します。」
中身は、ほとんど同じです。足したのは、三つあります、という一言と、三つの見出しだけです。
それだけで、聞きやすさが変わります。
★もう一つ、別の例で見ます
項目が二つの場合も、同じように作れます。
授業づくりで工夫していることは何ですか、という質問で、やってみます。
「はい。二点あります。
一つ目は、めあての示し方です。授業の最初に、今日できるようになることを一文で板書して、声に出して読みます。文が長くなると子どもが覚えられませんので、一文に収まる長さにしています。
二つ目は、振り返りの取り方です。授業の終わりに、わかったことと、まだわからないことを、どちらも書ける形にしています。わからないと書いてくれた子のところは、次の時間の初めに取り上げます。」
項目が二つのときは、一つあたりの説明を長く取れます。二文か三文まで入ります。
★なぜ聞きやすくなるのか
前回、話し言葉は巻き戻せないという話をしました。
文章の読者は、わからなくなったら前に戻れます。
面接官は戻れません。音は一度だけ流れます。
ですから面接官は、聞きながら、同時に頭の中を整理しています。
ナンバリングとラベリングは、その整理を手伝う技法です。
数は、いくつ入れる箱を用意すればよいかを教えます。
見出しは、それぞれの箱に何を入れればよいかを教えます。
箱が先に用意されていると、説明がそこに入ります。
面接室には、面接官が二人か三人います。
一人が質問をしているとき、別の一人は手元の紙を見ていることがあります。
全員が、同じように集中して聞いているわけではありません。
数と見出しが入っていると、途中から聞き始めた面接官にも、話の形が伝わります。
メモを取りながら聞いている面接官もいます。
見出しが付いていると、そのままメモに書けます。
居場所の確保、家庭との連携、校内での情報の共有。
三語が紙に残ります。
★見出しの言葉を選ぶ
ラベリングで使う見出しには、選び方があります。五つ挙げます。
1.短くする
見出しは、一息で言える長さにします。目安は、十字くらいまでです。
居場所の確保。家庭との連携。めあての示し方。当番の決め方。この程度の長さです。
長くなると、見出しなのか説明なのかが、聞いている側に区別できなくなります。
2.聞いてすぐ意味がわかる語にする
造語を作りません。自分だけの言い回しも避けます。
意味の取りにくい見出しを出すと、面接官がその言葉について聞いてきます。説明に時間を取られて、話したかった中身が削られます。
3.名詞で止める
居場所の確保。家庭との連携。情報の共有。このように名詞で止めると、見出しらしく聞こえます。
居場所を確保することが大切だと思います、という形にすると、見出しにならず、一つの主張になってしまいます。
4.説明の中身と合わせる
居場所の確保という見出しを付けたなら、続く説明は居場所の話にします。
見出しと説明がずれると、聞いている側が混乱します。これは、見出しを付けなかった場合より悪くなります。
5.三つの見出しの大きさをそろえる
居場所の確保、家庭との連携、校内での情報の共有。この三つは、どれも取組の種類の名前です。大きさがそろっています。
ここに、毎朝、必ず名前を呼んで声をかけること、という三つ目を入れると、そろいません。三つ目だけが具体的な行為の名前になっています。
この場合は、声のかけ方、のように言い直します。
題材ごとに、見出しの例を挙げておきます。
学級経営なら、朝の時間の使い方、当番の決め方、席の替え方。
授業なら、めあての示し方、発問の作り方、振り返りの取り方。
保護者対応なら、事実の確認、学校として伝える内容をそろえること、記録の残し方。
どれも、学校の中で実際に行われていることの名前です。
難しい言葉を探す必要はありません。
★数の決め方
いくつにするかは、与えられた時間で決めます。
一つの回答は、三十秒から四十秒が目安です。
この長さなら、二点か三点が入ります。
三点にすると、一つあたりの説明は一文か二文になります。
取組や手順を答える質問では、この形で足ります。
二点にすると、一つあたりの説明を長く取れます。
考えや経験を答える質問では、こちらのほうが語りやすくなります。
一分間程度でお願いします、と言われたときは、三点でも余裕があります。
決めた数は、守ります。
三つあります、と言ってから二つしか述べないと、聞いている側は三つ目を待ちます。
逆に、二つと言ってから三つ述べると、宣言した意味がなくなります。
数を宣言する前に、頭の中で項目を数えておきます。
★原稿の作り方
準備の段階で、この形を作る手順を書いておきます。
1.答える項目を書き出す
まず、その質問に答えたいことを書き出します。
この段階では、見出しを気にしません。
2.それぞれに見出しを付ける
書き出した項目に、短い見出しを付けます。
付けにくい項目は、中身がまだはっきりしていない項目です。
3.見出しの大きさと形をそろえる
全部を名詞で止めます。長さも近づけます。
そろわない項目は、言い直すか、外します。
4.数を数えて、宣言の一言を作る
残った項目の数を数えて、冒頭の一言を作ります。
三つあります。二点あります。
5.声に出して、時間をはかる
最後に、声に出して読みます。三十秒から四十秒に収まっていれば、そのままで使えます。
超えていれば、説明を短くするか、項目を一つ外します。
★使うときの注意
最後に、一つだけ注意を書きます。
二十分から三十分の面接で、すべての回答をこの形にすると、形が目立ちます。
三つあります、一つ目は、二つ目は、という言い方が続くと、用意してきた原稿を読んでいるように聞こえます。
第6回で、語りの様式を選ぶという話をしました。
面接の語りは、中身を日常のところから持ってきて、形式だけを公式にします。
ナンバリングとラベリングは、形式の側の技法です。
使いすぎると、形式だけが前に出ます。
ですから、質問の種類で使い分けます。
取組や手順を聞かれた質問では、使います。
何をどの順でやるのかを並べる形が合っているからです。
自分の経験や、どう考えているかを聞かれた質問では、一点に絞って、場面を一つ語る形も使えます。
この場合は、数を宣言しません。
一つの面接の中で、この形を使う回答が二つか三つあれば十分です。
★まとめ
ナンバリングは、これから語る項目の数を、先に示す技法です。
聞き手に終わりを見せます。
ラベリングは、それぞれの項目に、一言の見出しを先に付ける技法です。
聞き手に置き場所を渡します。
二つを組み合わせると、同じ中身が、はっきりと伝わるようになります。
足すのは、数を言う一言と、短い見出しだけです。
見出しは、短く、聞いてすぐわかる言葉にして、名詞で止めます。
数は、与えられた時間で決めて、決めた数を守ります。
そして、すべての回答で使う必要はありません。
取組や手順を聞かれたときに使うと、いちばん効きます。
河野正夫

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