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【大学生のための面接合格術】第20回(最終回):場面指導

  • 執筆者の写真: 河野正夫
    河野正夫
  • 5月27日
  • 読了時間: 10分

【大学生のための面接合格術】


第20回(最終回):場面指導



教員採用試験の面接において、「場面指導」は、近年ますます重視されている形式です。


これは、実際の学校現場で起こりうる具体的な場面を提示し、


「あなたならどう対応しますか」


「実際にやってみてください」


と問うものです。知識を問う質問とは異なり、受験者が現場でどう動くか、その実践力と人間性が、最も生々しく表れる場面となります。


今回は、いよいよ最終回として、大学生のみなさんが、場面指導に的確に対応できるよう、考え方と具体的な方法をお伝えしていきます。





1.場面指導とは何か



まず、場面指導がどのような形式で行われるのかを確認します。場面指導には、大きく分けて二つの形式があります。



★口頭で対応を述べる形式



「授業中に立ち歩く子どもがいたら、どう対応しますか」


というように、具体的な場面が提示され、それに対する対応を口頭で説明する形式です。



★実演(ロールプレイ)形式



面接官が子どもや保護者の役を演じ、受験者が教師として、その場で実際に対応してみせる形式です。


「では、私が立ち歩いている子どもです。声をかけてみてください」


というように、実演を求められます。



自治体によって、どちらの形式が採用されるかは異なります。


また、集団面接や個人面接の中で出されることもあれば、独立した試験として行われることもあります。


受験する自治体の過去の傾向を、必ず確認しておいてください。



場面指導で出される場面は、実際の学校現場で起こりうる、多様な状況に及びます。



授業中の指導、


生活指導、


いじめ、


不登校、


保護者対応、


子ども同士のトラブル、


けがや事故、


子どもの問題行動


など、



これまでの全19回でお伝えしてきた内容のすべてが、場面指導の題材となりえます。



2.場面指導で面接官が見ているもの



場面指導を通して、面接官は何を見ているのか。


次の点を理解しておいてください。



第一に、子どもへの基本姿勢です。


子どもを頭ごなしに叱るのか、まず話を聴くのか。


子どもを一人の人間として尊重しているか。


子どもへの愛情と、適切な距離感を持っているか。


これらが、対応の端々に表れます。



第二に、実践的な判断力です。


提示された場面で、何を優先し、どう動くか。


安全確保、事実確認、組織への報告など、適切な優先順位で判断できるかが見られています。



第三に、組織人としての適性です。


一人で抱え込まず、必要に応じて他の教員や管理職、専門職と連携しようとするか。


これまでの連載で繰り返しお伝えしてきた「組織的対応」の姿勢が、ここでも問われます。



第四に、臨機応変な対応力です。


想定外の展開になっても、慌てず、柔軟に対応できるか。


特に実演形式では、面接官が予想外の反応を返してくることもあります。


その場で考え、対応する力が試されます。



第五に、人間性そのものです。


場面指導では、受験者の素の人間性が表れやすくなります。


言葉づかい、表情、声の調子、子どもへのまなざしなど、教師としての温かさと誠実さが、自然と伝わります。



3.場面指導に対応する基本の型



場面指導には、どのような場面にも応用できる、基本の型があります。


次の流れを身につけておくと、初めて見る場面でも、落ち着いて対応できます。



第一段階:安全の確保


まず、子どもの安全が脅かされていないかを確認します。


けが、事故、暴力、危険な行為などがある場合は、何よりも先に安全を確保します。



第二段階:子どもの話を聴く


次に、子どもの話を、丁寧に聴きます。頭ごなしに叱ったり、決めつけたりせず、「何があったのか」「どう感じているのか」を、子どもの側から聴き取ります。


子どもの行動の背景には、必ず理由があります。


「困った行動をする子は、困っている子」という、第11回でお伝えした視点を思い出してください。



第三段階:事実を確認する


一方の話だけで判断せず、関係する子どもや状況から、事実を確認します。


特に、子ども同士のトラブルでは、双方の話を公平に聴くことが重要です。



第四段階:指導・支援を行う


事実を踏まえ、その子に応じた指導・支援を行います。


叱るべき場面では、行為の何が問題かを、子どもが理解できるように伝えます。


同時に、子どもの良さや成長を認める視点も忘れません。



第五段階:組織で共有し、連携する


対応の内容を、学年や管理職に報告・共有します。


必要に応じて、保護者、専門職、関係機関と連携します。


一人で抱え込まないことが、すべての場面に共通する原則です。



この基本の型を土台にしながら、提示された場面の特性に応じて、対応を調整してください。



4.場面別の対応の考え方



代表的な場面について、対応の考え方を示します。



★授業中に立ち歩く・私語をする子どもへの対応


頭ごなしに叱るのではなく、まずその子に近づき、なぜそうしているのかに目を向けます。


授業が分からない、体調が悪い、何か困りごとがあるなど、背景を考えます。


その場では授業を止めない範囲で対応し、後で個別に話を聴くという判断もあります。



★子ども同士のけんか・トラブルへの対応


まず双方の安全を確保し、興奮が収まってから、それぞれの話を公平に聴きます。


一方的にどちらかを責めず、双方の気持ちを受け止めたうえで、どうすればよかったかを一緒に考えます。



★いじめが疑われる場面への対応


被害を受けた子どもの安全と心のケアを最優先にします。


第12回でお伝えした通り、一人で抱え込まず、いじめ防止対策組織に報告し、組織として対応します。



★子どもがけがをした場面への対応


まず子どもの安全と手当てを最優先にします。


状況に応じて、養護教諭、管理職に連絡し、必要なら救急対応を行います。保護者への連絡も行います。



★保護者からの苦情・相談への対応


第16回でお伝えした通り、まず丁寧に話を聴き、事実を確認し、誠実に対応します。


一人で抱え込まず、組織として対応します。



★子どもが「死にたい」ともらした場面への対応


極めて慎重な対応が必要な場面です。


子どもの話を否定せず、真剣に受け止め、一人で抱え込まず、速やかに管理職、養護教諭、スクールカウンセラー、保護者と連携します。


子どもの命を守ることを最優先に、組織で対応します。



これらは一例です。どの場面でも、


「安全確保」


「話を聴く」


「事実確認」


「指導・支援」


「組織で連携」


という基本の型が、対応の軸となります。



5.実演形式で意識すべきこと



実演(ロールプレイ)形式の場合、口頭で述べる場合とは異なる、いくつかの注意点があります。



★子どもの目線に合わせる


実演では、子ども役の面接官に対して、実際に教師として接します。


子どもに語りかけるときは、しゃがんで目線を合わせる、穏やかな表情を作るなど、実際の動作も意識します。



★言葉づかいを子どもに合わせる


相手が小学生なのか、中学生なのか、高校生なのかによって、言葉づかいを調整します。子どもに伝わる、温かく分かりやすい言葉を選びます。



★まず受け止める言葉から始める


いきなり指導や叱責から入るのではなく、「どうしたの」「何かあったの」と、子どもを受け止める言葉から始めます。



★想定外の反応にも、慌てず対応する


子ども役の面接官が、反抗的な態度を取ったり、黙り込んだりすることもあります。


慌てず、その反応も受け止めながら、粘り強く関わる姿勢を見せます。


完璧に「解決」できなくても、誠実に関わろうとする姿勢が評価されます。



★「この後、組織で対応します」と言い添える


実演の中ですべてを完結させる必要はありません。


「この後、学年主任に報告します」「養護教諭と連携します」など、組織的対応につなげる言葉を、自然に添えてください。



6.場面指導で避けたい誤り



場面指導で陥りがちな誤りを整理します。



誤り①:いきなり叱る・決めつける


子どもの話を聴かず、いきなり叱責したり、「あなたが悪い」と決めつけたりする対応は、最も避けるべきです。


まず話を聴く姿勢が、すべての出発点です。



誤り②:一人ですべて解決しようとする


すべてを自分一人で抱え込み、解決しようとする対応は、現代の学校の枠組みから外れています。


組織で連携する視点を、必ず示してください。



誤り③:体罰・威圧的な指導


体罰は、学校教育法で明確に禁止されています。


叩く、大声で怒鳴る、長時間立たせるなどの威圧的な指導は、絶対に示してはなりません。



誤り④:その場しのぎの対応


問題を表面的に収めるだけで、背景に目を向けない対応は、適切ではありません。


子どもの行動の背景を理解しようとする姿勢を示してください。



誤り⑤:完璧を演じようとする


すべてを完璧に解決してみせようと、無理に立派な対応を演じると、かえって不自然になります。


新任教員らしい、誠実で謙虚な姿勢の方が、面接官に好印象を与えます。



7.場面指導の準備の仕方



場面指導は、付け焼き刃では対応できません。


日頃からの準備が、当日の対応力を支えます。



第一に、これまでの全19回でお伝えしてきた内容を、もう一度振り返ってください。


場面指導で問われる場面は、これまで扱ってきたテーマと深く結びついています。



児童生徒理解、


いじめ、


不登校、


特別支援、


学級経営、


保護者対応、


危機管理


など、それぞれの基本的な考え方を理解していれば、場面指導にも応用できます。



第二に、想定される場面を、できるだけ多く準備しておいてください。


受験する自治体の過去の出題、面接対策本、指導者からの情報などをもとに、多様な場面を想定し、自分なりの対応を考えておきます。



第三に、声に出して練習してください。


特に実演形式に備えるには、実際に声に出し、できれば指導者や仲間に子ども役をしてもらって、繰り返し練習することが効果的です。


頭で考えるのと、実際に口に出すのとでは、大きく異なります。



第四に、教育実習やボランティアで、子どもと関わった経験を思い出してください。


実際の子どもとの関わりの記憶が、場面指導でのリアルな対応を支えます。



8.最終回にあたって



全20回にわたる連載も、これで最終回となります。


最後に、大学生のみなさんに、お伝えしたいことがあります。



この連載では、自己アピールから場面指導まで、教員採用試験の面接で問われる、さまざまなテーマを扱ってきました。


多くの知識、法令、考え方をお伝えしてきましたが、それらすべての根底に流れているのは、ただ一つのことです。


それは、「子どもの最善の利益を、何よりも大切にする」という姿勢です。



面接で問われるどの場面でも、判断に迷ったときは、「子どもにとって、何が最も良いか」に立ち返ってください。


この一点を見失わなければ、たとえ想定外の質問が来ても、答えの方向を誤ることはありません。



そして、大学生であるみなさんには、現場経験の少なさという弱みがある一方で、若さ、学び続ける姿勢、新鮮な感性、そして教師になるという純粋な熱意という、かけがえのない強みがあります。


経験のなさを取り繕おうとするのではなく、「これから現場で、一人ひとりの子どもから、先輩の先生方から、学び続けていく」という謙虚で前向きな姿勢を、堂々と示してください。


それが、若い受験者の最大の魅力です。



面接は、自分を偽って合格を勝ち取る場ではありません。


自分がどのような教師になりたいのか、なぜ教師を目指すのか、自分の言葉で誠実に語る場です。


この連載でお伝えしてきたことを土台にしながら、最後は、みなさん自身の言葉で、みなさん自身の教育への思いを語ってください。



全20回の連載を通して、みなさんの面接準備に、少しでもお役に立てたなら幸いです。


みなさんが、自分らしい誠実な言葉で面接官の心を動かし、教壇に立つ夢を実現されることを、心から願っています。


そして、いつか教師となったみなさんが、目の前の子どもたちの最善の利益のために、生き生きと働く姿を思い描きながら、この連載を締めくくります。



最後まで読んでくださり、ありがとうございました。


みなさんの合格を、心から祈っています。




河野正夫




 
 
 

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