5.成長を微分・積分で示す。 大学生の教採面接・合格術
- 河野正夫
- 2025年11月18日
- 読了時間: 11分
大学生の教採面接・合格術
5.成長を微分・積分で示す。
★はじめに
教員採用試験の面接において、自分の成長をどのように示すかは、合否を分ける重要な要素です。
多くの受験者は、自分の経験を時系列に並べて語ったり、一般的な自己PRをしたりしますが、それだけでは面接官の印象に残りません。
ここで有効なのが、数学の概念である微分と積分を用いた成長の示し方です。
もちろん、面接で数式を語るわけではありません。
微分と積分という考え方を借りて、自分の成長を効果的に伝える方法を身につけるということです。

★微分とは何か
微分という言葉は、高校の数学で学んだ記憶がある人も多いでしょう。
数学的には、関数の曲線のある点における傾きを求める操作を指します。
もう少し具体的に言えば、ある瞬間における変化の速さ、変化の方向性を示すものです。
例えば、車が走っている様子を考えてみましょう。
車の位置を時間ごとに記録していくと、その位置は時間とともに変化します。
この変化の様子を表す曲線があったとして、ある瞬間における曲線の傾きを見れば、その瞬間の車の速さと進む方向がわかります。
傾きが急であれば速く走っており、緩やかであればゆっくり走っています。
傾きが上向きであれば前進しており、下向きであれば後退しています。
この考え方を、人間の成長に当てはめることができます。
あなたの人生は、時間とともに変化し、成長していく過程です。
その過程のある特定の瞬間、つまり特定の出来事やエピソードにおいて、あなたがどの方向に向かって成長しているのか、その傾きを示すこと。
これが、成長を微分で示すということです。
★面接で成長の傾きを示す
面接では、「あなたの強みは何ですか」「教育実習でどのような経験をしましたか」といった質問が必ず出ます。
このとき、単に「私の強みはコミュニケーション能力です」「教育実習では5つの授業を担当しました」と答えるだけでは不十分です。
面接官が知りたいのは、その経験を通じて、あなたがどの方向に成長しているのかという点です。
例えば、教育実習での具体的なエピソードを一つ取り上げます。
ある授業で、予定していた内容が時間内に終わらず、子供たちの理解も不十分なまま授業を終えてしまったという失敗があったとします。
この出来事は、あなたの成長過程における一つの点です。
ここで重要なのは、この失敗という点において、あなたがどのような変化の兆しを見せたかです。
「失敗してしまいました」で終わるのではなく、「この失敗をきっかけに、授業の時間配分を意識するようになり、次の授業では重要な内容を前半に配置する工夫をしました」と語れば、あなたの成長の傾きが見えてきます。
失敗という点から、改善という方向への傾きが明確になります。
さらに、「指導教員から、子供たちの理解度を確認しながら進めることの大切さを教わり、授業中に子供たちの表情や反応を見る習慣がつきました」と続ければ、あなたの成長がさらに具体的な方向性を持っていることが伝わります。
このように、一つのエピソードから、あなたがどのように変化し、どの方向に向かって成長しているのかを示すこと。
これが成長を微分で示すということです。
面接官は、この傾きを見て、あなたが教員として今後どのように成長していくかを予測します。
★積分とは何か
次に積分について考えます。
積分は数学的には、微分の逆の操作であり、細かな変化を足し合わせて全体の量を求めることを意味します。
再び車の例で考えてみましょう。
車がある速さで走っている瞬間瞬間の速度がわかっているとします。
その速度を時間をかけて足し合わせていくと、車が全体でどれだけの距離を移動したかがわかります。
これが積分の考え方です。
人間の成長に当てはめると、これまでの人生で経験してきた様々な出来事、学び、失敗、成功。それらすべてを足し合わせて、現在のあなたという存在が形成されているという見方です。
一つ一つの経験は小さな変化かもしれませんが、それらが積み重なって、今のあなたの資質、能力、価値観、教育観を作り上げています。
★面接で成長の総体を示す
面接では、「あなたはどのような教員になりたいですか」「あなたの教育観を述べてください」といった、あなたという人間の全体像を問う質問が出ます。
このとき、一つの経験だけを語るのではなく、これまでの様々な経験を統合して、現在のあなたがどのような資質を持っているかを示すことが求められます。
例えば、「私は、子供一人一人に寄り添える教員になりたいと考えています」という教育観を述べるとします。
これだけでは抽象的です。ここに積分の考え方を取り入れます。
「私は大学時代、学習支援ボランティアで、学習に困難を抱える子供たちと関わりました。そこで、一人一人の理解の仕方が異なることを学びました。また、塾講師のアルバイトでは、同じ説明でも子供によって理解度が違うことを経験しました。さらに、教育実習では、クラスの中に様々な個性を持つ子供たちがいて、全員に同じ対応では届かないことを実感しました。これらの経験を通じて、子供一人一人の違いを理解し、それぞれに合った関わり方をすることの大切さを学びました。だから私は、子供一人一人に寄り添える教員になりたいと考えています」
このように語ることで、あなたの教育観が、一つの経験からではなく、複数の経験が積み重なって形成されたものであることが伝わります。
学習支援ボランティア、塾講師、教育実習という三つの経験を足し合わせることで、「子供一人一人に寄り添う」という教育観の説得力が増します。
これが、成長を積分で示すということです。
★微分と積分の組み合わせ
面接では、微分的な語り方と積分的な語り方の両方が必要です。
微分は、あなたの成長の方向性を示し、面接官にあなたの今後の可能性を予測させます。
積分は、あなたの現在の全体像を示し、面接官にあなたという人間の厚みを理解させます。
例えば、「あなたの強みを教えてください」という質問に対して、次のように答えることができます。
「私の強みは、子供の気持ちに共感する力だと考えています(積分による全体像の提示)。
私は大学時代、学童保育でアルバイトをし、様々な年齢の子供たちと日常的に関わりました。
また、教育実習では、不登校気味の子供との関係づくりに苦労しながらも、少しずつ信頼関係を築くことができました。
さらに、学習支援ボランティアでは、家庭環境に課題を抱える子供たちの話を聞く中で、子供たちが抱える見えない困難に気づくようになりました(これまでの経験の積み重ね・積分)。
特に教育実習での経験は大きく、最初はなかなか心を開いてくれなかった子供が、毎日声をかけ続けることで、少しずつ話をしてくれるようになりました。
この経験から、子供の表面的な態度だけでなく、その背景にある気持ちを理解しようとする姿勢が大切だと学びました(微分による成長の方向性)。
今後は、この共感する力をさらに深め、子供たちが安心して学べる環境を作れる教員になりたいと考えています(今後の成長の方向性)」
この答えでは、まず自分の強みを明確に述べ(積分による結論)、その強みがどのような経験から形成されたかを複数の例で示し(積分のプロセス)、さらに特定の経験における成長の瞬間を詳しく語り(微分による傾きの提示)、最後に今後の方向性を示しています(微分の延長)。
★具体的なエピソードの重要性
成長を微分で示すためには、具体的なエピソードが不可欠です。
抽象的な語りでは、成長の傾きは見えてきません。
「頑張りました」「成長しました」という言葉だけでは、どのような変化があったのか、どの方向に向かっているのかが伝わりません。
具体的なエピソードとは、いつ、どこで、誰と、何があったのか、という詳細を含む語りです。
さらに、その時あなたが何を感じ、何を考え、どう行動し、その結果どうなったのか、という一連の流れを示します。
例えば、「子供との信頼関係を大切にしています」という抽象的な語りを、具体的なエピソードで示すとこうなります。
「教育実習で、ある子供が授業中に全く発言しないことが気になりました。休み時間に個別に話しかけてみると、人前で話すことが苦手だと教えてくれました。そこで、授業中に全体の前で発表させるのではなく、まずペアで考えを共有する時間を作りました。すると、その子は隣の友達には自分の考えを話すことができました。この小さな成功を積み重ねることで、実習の最後には、小さな声ではありますが、全体の前でも発言できるようになりました。この経験から、子供たちには一人一人違うペースがあり、その子に合った段階を踏むことで、少しずつ成長できることを学びました」
このように、具体的な場面を描写することで、あなたがどのように考え、どう行動し、その結果どのような変化が生まれたかという成長の傾きが明確になります。
★複数の経験をつなぐ
成長を積分で示すためには、複数の経験をつなぐ語り方が必要です。
一つの経験だけでは、それが偶然の出来事なのか、あなたの本質的な資質なのかが判断できません。
複数の異なる場面で同じような行動や学びが見られることで、それがあなたの確かな資質であることが証明されます。
例えば、「私は課題解決力があります」という強みを示す場合、一つの経験だけでなく、複数の経験を提示します。
「学習支援ボランティアで、ある子供がどうしても分数の計算ができないという課題に直面しました。いろいろな説明を試しましたが理解されず、困っていたところ、ピザを切る図を使って説明すると理解してくれました。また、教育実習では、クラス全体が騒がしくなってしまい、授業が進まないという課題がありました。指導教員に相談し、席替えと授業のルールの明確化を試みたところ、徐々に落ち着いてきました。さらに、大学のゼミ活動では、グループ研究が行き詰まったときに、メンバー全員で問題点を整理し、役割分担を見直すことで、研究を進めることができました。これらの経験から、課題に直面したときに、一つの方法にこだわらず、様々な角度から解決策を探る姿勢が身についたと考えています」
このように、異なる場面での複数の経験を提示することで、あなたの課題解決力が一過性のものではなく、様々な状況で発揮される確かな資質であることが示されます。
★失敗からの学びも成長の証
成長を示す上で、成功体験だけでなく、失敗からの学びも重要です。
微分的に見れば、失敗は成長の傾きが変わる転換点です。
それまでの方向性が誤りだと気づき、新しい方向へと向かい始める瞬間です。
「教育実習で、最初の授業は完全に失敗しました。準備した内容が多すぎて時間内に終わらず、子供たちも理解できないまま授業が終わってしまいました。この失敗を振り返り、指導教員から、授業の核となる内容を絞ることの大切さを教わりました。次の授業では、一番伝えたいことを明確にし、そこに時間をかけることを意識しました。結果として、子供たちの理解度は格段に上がりました。この経験から、授業づくりにおいて、何を削るかという判断が、何を入れるかと同じくらい重要だと学びました」
この語りでは、失敗という点から、改善という新しい方向への傾きが生まれています。
面接官は、この傾きを見て、あなたが失敗から学び、成長できる人材であることを理解します。
★未来への方向性
微分は、現在の傾きから未来の方向を予測させる力を持ちます。
面接では、過去の経験だけでなく、今後どのように成長していきたいかという未来への方向性を示すことも重要です。
「これまでの経験を通じて、授業づくりの基礎は学びましたが、まだまだ不十分だと感じています。採用後は、先輩教員の授業を積極的に見学し、効果的な発問の仕方や、子供たちの思考を深める授業展開を学びたいと考えています。また、教育に関する書籍や研修を通じて、理論と実践の両面から学び続けたいと思います」
このように、現在の自分の状態を正直に認めた上で、今後どの方向に成長していきたいかを示すことで、面接官はあなたの成長の軌跡を未来へと延長して予測できます。
★結論
成長を微分・積分で示すという考え方は、面接での語り方を劇的に変える力を持ちます。
微分は、具体的なエピソードから、あなたの成長の方向性と傾きを示します。
積分は、これまでの複数の経験を足し合わせて、現在のあなたという存在の全体像を示します。
面接官は、あなたの過去の経験だけでなく、その経験からどのように学び、どの方向に成長しているかを見ています。
一つ一つのエピソードに成長の傾きを持たせ、複数の経験を統合して自分の資質を語ることで、あなたの成長の軌跡は面接官の心に明確に描かれます。
数学の概念を借りた比喩ではありますが、この視点を持つことで、あなたの面接での語りは格段に説得力を増します。
自分の経験を振り返り、成長の傾きと全体像を明確にしてください。
それが、合格への確かな道となります。
河野正夫


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