第7回:大学生でも「教育者」の視点で書ける論作文。採点者に「現場で任せたい」と思わせる構成案と、合格答案の黄金比。【大学生のための教員採用試験 合格への完全ロードマップ(全20回)】
- 河野正夫
- 22 時間前
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第7回:大学生でも「教育者」の視点で書ける論作文。
採点者に「現場で任せたい」と思わせる構成案と、合格答案の黄金比。
【大学生のための教員採用試験 合格への完全ロードマップ(全20回)】
教員採用試験の対策において、多くの大学生が「正解がわからない」と最も不安を感じるのが論作文です。
筆記試験のように明確な答えがあるわけではなく、面接のようにその場の雰囲気で押し切ることもできません。
真っ白な原稿用紙を前に、「何を書けばいいのか」「自分の考えは子供っぽくないだろうか」と筆が止まってしまう学生は少なくありません。
しかし、論作文は決して「文章センス」を競う場ではありません。
採点者が評価しているのは、あなたの文才ではなく、「この学生は学校現場の課題を正しく理解し、教師として責任ある行動が取れるか」という教育者的視点の有無です。
準備不足の大学生であっても、合格答案の「型」と「視点」さえ身につければ、短期間で評価を劇的に高めることが可能です。
第7回では、大学生が陥りがちな「感想文」からの脱却法と、採点者が納得せざるを得ない「合格答案の黄金比」について徹底的に詳説します。

1. 「学生の作文」から「教育者の論作文」への脱皮
大学生の論作文が不合格になる最大の理由は、内容が「自分の思い出話」や「理想論の羅列」に終始してしまうことにあります。
これを「教育者の視点」に切り替えるためには、書き始める前のマインドセットを再構築する必要があります。
① 「自分」を主語にするのをやめる
学生の作文は「私はこう思います」「私はこうしたいです」と、自分自身の内面を語ることに集中しがちです。
しかし、プロの論作文の主語は常に「子供(児童生徒)」であるべきです。
「子供たちがどう変容するか」「そのために教師として何をすべきか」という因果関係を記述するのが論作文の本来の姿です。
自分の経験を書く際も、単なる思い出として終わらせるのではなく、「その経験から得た学びを、現場で子供たちの成長にどう還元するか」という橋渡しを必ず行わなければなりません。
② 理想論に「具体の肉」をつける
「子供たち一人ひとりに寄り添いたい」
「いじめのないクラスを作りたい」
といったスローガンは、誰も否定できない正論ですが、それだけでは「中身がない」と判断されます。
採点者が知りたいのは、「具体的に、朝の教室であなたは何をしますか?」という実行力です。
抽象:
子供たちの声に耳を傾ける。
具体:
毎朝の健康観察の際、一人ひとりと視線を合わせ、表情の微細な変化をノートに記録することで、悩みや不安の早期発見に努める。
このように、大学の講義で学んだ教育理論を、実際の教室の風景に落とし込んで記述する力が求められます。
2. 採点者を唸らせる「合格答案の黄金比」:
四段構成の極意
論作文には、読み手がストレスなく論理を追える「黄金の型」が存在します。
多くの自治体で課される800文字から1,200文字程度の制限時間を攻略するには、以下の四段構成が最も効率的であり、かつ評価が安定します。
【第1段:序論】
テーマの把握と現状分析(全体の10%〜15%)
ここでは、与えられたテーマがいかに現代の学校教育において重要であるかを述べ、自分の主張(結論)を提示します。
ポイント:
昨今の教育情勢(不登校の増加、ICTの普及など)に触れ、「だからこそ、この課題に取り組む必要がある」という大義名分を掲げます。
書き出しの例:
「今日、予測困難な社会において、子供たちが自ら課題を見つけ解決する力を育むことは、学校教育の喫緊の課題である。私は、〇〇を重視した指導こそが、その解決の鍵になると考える。」
【第2段:本論①】
具体的な実践案その1(全体の35%〜40%)
自分の主張を支える具体的な方策を一つ提示します。
ここでは主に「授業・学習指導」や「集団への働きかけ」について書くのが定石です。
ポイント:
どのような場面で、どのような意図を持って、何をするのかを具体的に書きます。
大学生であれば、教育実習での成功・失敗経験や、大学の専門講義で学んだ有効な指導法を根拠にすると説得力が増します。
【第3段:本論②】
具体的な実践案その2(全体の35%〜40%)
二つ目の実践案を提示します。
こちらは「個別の関わり」や「家庭・地域・同僚との連携」といった、多角的な視点からのアプローチを書くと、視野の広さをアピールできます。
ポイント:
教師一人の力で解決しようとせず、「チーム学校」として組織的に対応する姿勢を示すことが、近年のトレンドであり高い評価に繋がります。
【第4段:結論】
まとめと情熱(全体の10%)
これまでの内容を総括し、教師としての決意を述べて締めくくります。
ポイント:
第1段で提示した主張と矛盾がないかを確認し、最後は「情熱」で結びます。
結びの例:
「以上の実践を通して、私は子供一人ひとりの可能性を信じ、共に成長し続ける教師として、〇〇県の教育に貢献したい。」
3. 大学生が陥りがちな「NG表現」と「減点ポイント」
どんなに内容が良くても、形式面でのミスや「学生らしすぎる言葉」は、採点者の期待を裏切ります。以下のポイントを厳しくチェックしてください。
① 文末の不一致と接続詞の多用
「です・ます(敬体)」と「だ・である(常体)」の混在は初歩的なミスですが、緊張するとやってしまいがちです。
また、「そして」「でも」「だから」といった口語的な接続詞は避け、「また」「しかし」「したがって」といった硬い表現を使いましょう。
② 根拠のない「断定」と「精神論」
「絶対に解決できます」
「愛があれば伝わります」
といった言葉は、教育現場では無責任な言葉として捉えられかねません。
「〇〇という手法を用いることで、解決の糸口を探る」
「一人ひとりの状況に即した支援を継続的に行うことで、信頼関係の構築を図る」
といった、プロらしい抑制の効いた表現を心がけてください。
③ 誤字脱字と教育用語の誤用
論作文において、誤字脱字は「確認不足=児童生徒の成績処理もいい加減なのではないか」という不信感に直結します。
特に、「学習指導要領」を「学習指導要項」と書いたり、「関心・意欲・態度」のような古い用語を、古い定義のまま使ったりするのは、準備不足を露呈する致命的なミスです。
4. 論作文の質を底上げする「逆算的」トレーニング法
「書く練習」を始める前に、大学生が効率的に論作文のストックを作る方法を伝授します。
① 「1テーマ・3キーワード」を準備する
「いじめ」「不登校」「ICT活用」「主体的・対話的で深い学び」など、頻出テーマに対して、自分なりの具体的な実践案(キーワード)を3つずつ用意しておきます。
試験本番でテーマが提示されたら、そのストックの中から最適なキーワードを選んでパズルのように組み合わせるのです。
ゼロから考える時間を削ることが、合格への近道です。
② 「音読」による推敲
自分で書いた文章を、一度声に出して読んでみてください。
1文が長すぎて息が切れないか(60文字程度が理想)。
接続詞の繋がりが不自然ではないか。
同じ言葉を何度も繰り返していないか。 耳から入る情報は、目で見ているときには気づかない論理の破綻を教えてくれます。
③ 採点者の視点を知るために「添削」を受ける
自分では完璧だと思っても、第三者、できれば現場経験のある教官や、大学の教職支援室のスタッフに添削を受けてください。
優れた指導者が指摘するのは「文章の綺麗さ」ではなく、「この書き方では現場の先生は納得しないよ」という視点のズレです。
そのズレを修正する過程こそが、論作文対策の真髄です。
5. 第7回のまとめ:原稿用紙は、あなたと試験官の「対話の場」である
論作文は、あなたが初めて「一人の教師」として試験官と向き合う場です。
大学生である今の自分に何ができるか、ではなく、現場に出た自分ならどう動くか。その覚悟を文章に宿してください。
主語を「子供」にし、教師としての変容への働きかけを記述する。
「黄金の四段構成」を守り、読み手にストレスを与えない論理を展開する。
抽象的な理想論を排除し、月曜日の朝に実践できる「具体策」を書く。
教育用語を正確に使い、形式面(誤字脱字・文体)で隙を見せない。
文章は、書いた分だけ確実に上手くなります。
今日から、過去問の中から一つテーマを選び、まずは構成メモ(プロット)を作ることから始めてください。
次回の連載では、論作文や面接に「説得力という名の魂」を吹き込むための、最新データの活用術を学びます。
第8回:教育時事の血肉化術。中教審答申や「令和の日本型学校教育」を、自分の言葉として論作文に組み込むトレーニング。
「キーワードは知っているけれど、使い方がわからない」という状態を脱し、最新の教育政策を自分の武器にするための具体的な方法を伝授します。
【今回の合格ワーク:構成案の作成】
1. 「子供一人ひとりの良さを生かす教育」というテーマで、本論に書くための「具体的な実践案」を2つ、箇条書きで出してください。
2. その実践案が、子供たちにどのようなプラスの変化をもたらすか、100文字以内で記述してください。
3. 自分が最も書きやすい「序論」のテンプレートを、300文字程度で自作してみましょう。
論作文の攻略は、真っ白な原稿用紙を埋める恐怖に打ち勝つことから始まります。
あなたの熱い教育観を、論理という名の筆に乗せて、採点者に届けていきましょう。
河野正夫


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