第2回:面接は選別の場である。“加点”ではなく“減点”の構造
- 河野正夫
- 2025年6月8日
- 読了時間: 5分
【1倍程度の低倍率で落ちないために】(連載全20回)
第2回
面接は選別の場である
“加点”ではなく“減点”の構造
教員採用試験における面接は、しばしば「自己アピールの場」や「自分の良さを積極的に伝えるチャンス」と理解されがちです。
確かに、それは間違いではありません。
しかし、その本質はむしろ逆であり、採用側にとっての面接とは「加点のための場」ではなく、「減点を避けるための場」、すなわち選別のためのフィルタ機能を果たす空間であるという認識が不可欠です。
本稿では、まず面接という場の構造的性質を「減点主義」という概念を用いて分析し、そのうえで、なぜわずかな不適切さが「採用見送り」という判断につながるのかを論じていきます。
最終的には、面接を突破するために必要なのは「いかに良く見せるか」ではなく、「いかに悪く見られないか」であるという戦略的転換の必要性を明らかにします。

1. 面接の本質は“適性確認”である
教員採用面接の最大の目的は、「教育現場で継続的に信頼される人材かどうか」を評価することです。
つまり、他者との比較で誰が一番優秀かを順位付けする場ではなく、「現場に入れて問題がないか」を一人ひとり個別にチェックする選抜の場なのです。
この点において、教員採用面接は、大学入試や一般企業の選考とは大きく異なります。
この構造は、「教員の不適任な採用は、子どもの学習環境と命に直結する」という職務の性質からも導かれます。
したがって、採用担当者は、「加点して合格させる人」を探しているのではなく、「減点すべき理由がない人」「採っても安全な人」を絞り込んでいるのです。
2. 減点評価のリアリティ
“加点”される場面の希少性
実際の評価において、「加点」がなされるのは非常に限定された場面に限られます。
たとえば、特別支援教育の深い知見をもっている、困難事例への対応経験が豊富である、教育施策に精通し論理的に語れる、といったような専門性の高さが際立っているような場合です。
しかし、多くの受験者は、一定の教職課程を修了し、同様の指導観を持ち、現場経験も類似しています。
その中で、「加点されるほど突出している」人はむしろ例外であり、大半の受験者は「可もなく不可もなく」というゾーンに属しています。
したがって、面接官は「良いところを探す」のではなく、「悪いところがないかを見極める」という観点から面接を進めることになります。
3. 減点ポイントはどこに現れるのか
では、具体的にどのような要素が減点対象となるのでしょうか。以下に主な観点を整理します。
☆語り口が極端に自己中心的である
例:「私は~ができます」「私は~をしてきました」が連続する語りは、協調性や謙虚さに欠ける印象を与えます。
☆質問の意図を取り違えた回答
的外れな答えは、思考力や読解力の不足を疑われる要因となります。
☆身振りや表情に硬さや違和感がある
例えば、終始笑顔がない、逆に不自然なほど笑っている、落ち着きがないなど、非言語的情報も「違和感」の根拠になります。
☆教育観が極端に偏っている
たとえば「子どもは厳しく叱るべきだ」「教師は上に立つ存在である」といった語りは、時代錯誤や柔軟性の欠如と見なされることがあります。
☆長すぎる・曖昧すぎる・論点が不明瞭な回答
構造性のない語りは、教員としての指導力や説明力の欠如を連想させます。
これらのいずれも、「即時不採用」となる決定的な失敗ではありません。
しかし、「もう一度会いたいとは思えない」「現場での振る舞いが不安」といった曖昧な印象を残す要因となり、「見送り」の結論に至る可能性を高めます。
4. 面接官は「失点」探しのプロである
多くの面接官は、学校現場の管理職や教育委員会の担当者です。
彼らは、長年にわたって多くの教員・実習生・新規採用者と接してきた経験を持ち、「どんな人物が現場で問題を起こすか」という直観的なレーダーを持っています。
面接中、彼らはあらゆる受け答え、表情、視線、姿勢に注目し、微細な違和感やリスクの兆候を探しています。
したがって、受験者が取るべき戦略は、「良い印象を与えようと頑張ること」ではなく、「リスクを見せないよう徹底して準備すること」です。
そのためには、模擬面接の繰り返しだけでなく、「質問の意味を深く理解する」「自分の語りを論理的に構成する」「話しすぎず、逸脱せず、論点を外さない」訓練が必要です。
おわりに:
減点を避けた先に、合格がある
「面接は自分を売り込む場だ」と考えてしまうと、過剰なアピールや独自色の強調に走りやすくなります。
しかし、教員採用面接の本質は、“加点”を得ることではなく、“減点”されないことにあります。
つまり、強みを競う場ではなく、不適格要素を見抜かれる場であるという認識に立ち返る必要があります。
その上で求められるのは、「無難に見せる」技術ではなく、「安定感」「信頼感」「協調性」を言語・非言語の両面で示すことです。
「この人なら任せられる」「この人は安心できる」、そう面接官に思わせることができたとき、初めて1倍程度の倍率を「確実に通過する」可能性が見えてきます。
次回第3回では、「人格評価のリアリティ、教員採用面接における“好ましさ”とは何か」をテーマに、減点の先にある「採用される人の人物像」をさらに掘り下げていきます。
引き続きご期待ください。
河野正夫



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