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第9回:教育観の深め方と語りの言葉選び【講師枠・臨採枠・現職枠で受験する人のために】

  • 執筆者の写真: 河野正夫
    河野正夫
  • 2025年7月6日
  • 読了時間: 6分

【講師枠・臨採枠・現職枠で受験する人のための無料面接講座(連載・全10回)】



第9回:教育観の深め方と語りの言葉選び


経験に根ざした教育観を構築し、説得力ある語りへ昇華する



教員採用試験の面接において、問われることが多いのが「あなたの教育観を教えてください」(聞かれ方は多様)という問いです。


一見、自由度が高く、語りやすいように思われがちですが、実はこの問いは非常に高度です。


というのも、教育観という言葉が漠然としているために、多くの受験者が汎用的な言葉でまとめてしまい、結果として印象に残らない語りになってしまうからです。


本稿では、「教育観とは何か」という根本から出発し、実践に根ざしたオリジナルの教育観をどのように深め、どのような言葉で語ればよいのかを段階的に解説します。


理念を語るのではなく、「語ることで理念を立ち上げる」という発想に立ち、教育観を面接における“芯”として位置づける方法を提示します。





教育観とは「経験を抽象化する構え」である


教育観は、知識でもスローガンでもありません。あくまで、経験を通して育まれた“思考の型”です。


つまり、「私はこう考えています」と宣言するものではなく、「私はこうした場面で、このように捉え、このように選択してきました」という積み重ねの先に、教育観はかたちづくられていきます。


たとえば、「子ども一人ひとりの可能性を信じる」という表現は、誰もが語れる汎用的な言葉ですが、それがどのような具体的経験に基づいているのかが語られなければ、表面的な印象に終わってしまいます。


教育観とは、実践を言語化し、そこに理念的な一貫性を与える営みです。



なぜ教育観が面接で問われるのか



教育観が問われる背景には、以下のような意図があります。



1. 理念と行動の整合性を確認するため


面接官は、志望動機・指導経験・困難への対応・子ども理解など、さまざまな語りを聞いたうえで、それらに一貫した考え方があるかを見極めています。


教育観の語りは、その一貫性を象徴的に表す機会と捉えられています。



2. 採用後の成長可能性を見極めるため


固定的で独善的な教育観ではなく、経験を通して常に問い直し、アップデートしていく姿勢を持っているかどうかを確認する目的も含まれています。


したがって、模範解答を暗記するような語り方ではなく、自分自身の教育的変容の歩みを言葉に乗せて伝えることが重要です。



実践から教育観を抽出する3つのステップ



教育観を構築する際には、以下の3ステップを通じて、経験と言葉の接続を行っていきます。



1.経験の棚卸し:


印象に残ったエピソードの抽出



まずは、自分の教職経験の中で、特に心が揺さぶられた出来事、判断に迷った場面、学びの深かった瞬間などを洗い出します。


ここでは、「成功体験」だけでなく、「失敗」「葛藤」「気づき」など、感情が大きく動いた場面が教育観の素材になります。


例:


授業に参加できなかった子どもが、ある声かけをきっかけにノートを開くようになった


クラス内のトラブルで子ども同士の関係性が崩れ、対応に悩んだ末、子どもの言葉に学ばされた


こうした具体的な場面を最低3つ程度、詳細にメモとして残しておくことが、語りの素材になります。



2.意味づけ:


共通する価値観や行動原理を抽出する



次に、抽出したエピソードを比較し、そこに共通していた自分の「判断基準」や「行動原理」「大切にしていた視点」を言語化します。これが教育観の核になります。


例:


「相手の反応を待つことに価値を置いている」


「子ども自身が語れる場をつくることを優先している」


「正しさよりも納得感を大事にしている」


このような価値観を言葉にすることで、表面的なスローガンから距離を取り、自分だけの教育観へと近づいていきます。



3.象徴的なキーワードでまとめる


最後に、その価値観を象徴する言葉を探し、語りの中で活用できるようにします。


このキーワードは、できる限り「経験の温度感」がにじむ表現であることが望まれます。


例:


「寄り添う」よりも → 「ともに立ち止まる」


「支援する」よりも → 「動き出す瞬間を支える」


「見守る」よりも → 「つながる準備をする」


このように、少しの言葉選びの違いが、その人らしさと説得力を大きく左右します。



語りの構造化:


教育観を語るときの基本形



教育観を面接で語る際には、次の構造に沿って整理することで、理解しやすく、印象に残る語りをつくることができます。



ステップ1:


核となる教育観の提示(結論先行)



まずは、自分の教育観を1〜2文で明言します。


あいまいな言い回しを避け、明確な主張として述べることが肝要です。


例:


「私は、子どもが自分の言葉で語れる場をつくることを最も大切にしています。」



ステップ2:


それが生まれた背景の経験



次に、その教育観が形成された経験や出発点を語ります。


どのような出来事から、その価値観が育まれたのかを描写することで、語りに真実味が加わります。


例:


「あるとき、授業中に言葉を発することが難しい児童がいました。焦る気持ちを抑え、その子が小さくうなずいた瞬間に、すぐに反応を返すよう心がけたことが、信頼関係につながったと感じた経験があります。」



ステップ3:


教育観が他の実践にどう活かされているか



教育観が実践と結びついていることを示すことで、理念倒れではない語りを構築できます。


学級経営や保護者対応、困難な場面での判断などに教育観がどう働いているかを語ります。


例:


「この経験を通じて、それ以来どんな場面でも子どもが安心して発言できる雰囲気づくりを意識しています。全体での意見共有の場面では、一人ひとりの反応を見ながら“間”を大切にするようにしています。」



言葉選びのヒント:


抽象語を避け、具体の温度を保つ



教育観を語るときに陥りやすいのが、次のような抽象的なキーワードの多用です。


「子どもに寄り添いたい」


「信頼関係を大切にする」


「可能性を引き出したい」


「思いやりを育てたい」


こうした語彙は、誰もが使える反面、誰の語りでもあるという弱点を持っています。


これを回避するには、「子どもとの関係をどう見ていたか」「どのようにその子の声を受け取ったか」「どのように行動を決めたか」を丁寧に描くことで、自分の言葉に変換することができます。



総括:


第9回のまとめ



☆教育観は知識ではなく、経験に根ざした「思考の型」である


☆面接で教育観を問う目的は、理念と実践の一貫性、成長可能性の確認にある


☆構築は「経験の棚卸し→意味づけ→キーワード化」というプロセスで行う


☆語る際は「教育観の提示→背景の経験→実践との接続」の構造を意識する


☆汎用的な語句を避け、具体的なエピソードからにじむ“自分の言葉”を探す



次回(第10回・最終回)では、「模擬問答で仕上げ:想定問答の組み立て方と練習法」を扱います。


これまでの内容を踏まえたうえで、模擬質問に対してどのように応答を構築し、説得力ある言葉で自分の経験と教育観を語り切るか、その戦略と練習法を具体的にお伝えします。




河野正夫


 
 
 

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