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第8回:あなたはどんな授業をしますか?教科専門性と指導観の伝え方。

  • 執筆者の写真: 河野正夫
    河野正夫
  • 2025年6月14日
  • 読了時間: 5分

【1倍程度の低倍率で落ちないために】(連載全20回)


第8回


あなたはどんな授業をしますか?


教科専門性と指導観の伝え方。



教員採用面接において、「あなたはどんな授業をしますか」(聞かれ方は様々)という質問は、受験者の教科専門性と指導観を一体として評価する設問です。


この問いには、単に「授業スタイル」を答えるだけでなく、「どのような学びを児童生徒に提供したいのか」「そのために何を重視しているのか」といった、教育に対する姿勢そのものが問われています。


しかし現実には、この質問に対して抽象的な理想や一般論だけを語ってしまい、授業に対する具体的な構想力や実践性が伝わらないケースが多く見られます。


「主体的・対話的で深い学びを目指します」「生徒が楽しいと感じられる授業をしたいです」といった語りが典型ですが、これらは教育理念としては正しくとも、差別化や実現性の観点からは不十分です。


本稿では、まずこの質問の背後にある面接官の評価視点を明らかにし、次に、教科専門性と授業構想をどのように言語化すべきかを分析します。


最後に、説得力ある語りの構成技法と実例を通して、実践的な準備のあり方を提案します。





1. 面接官は何を聞いているのか



評価観点の多層性



「どんな授業をしますか」という問いは、表面的には指導技術に関するもののように見えますが、実際には以下の3つの観点から受験者を評価する意図があります。



(1)教科に対する専門的理解


自分が担当する教科をどのように理解しているか、その教科の本質的価値をどう捉えているかが問われます。


たとえば、英語科なら「言語を通して異文化理解を深める場」、理科であれば「現象に対する探究心を育てる場」など、教科観が必要です。



(2)授業づくりに対する構想力


単元の目標をどのように設定し、学習活動をどのように組み立てていくか、授業デザインの力が問われています。


「導入でどう興味を引くか」「主体的な活動をどう確保するか」「振り返りをどう位置づけるか」といった具体的視点が求められます。



(3)学びの意味づけと社会的接続


子どもたちが「学ぶ意義を感じられる授業になっているか」「学校の外とつながる学びとして展開できているか」という視点も重要です。


教科を教えることにとどまらず、「なぜ学ぶのか」という根源的な問いに答える授業構想が評価されます。



2. 語りの失敗例と改善の方向性



次に、よくある失敗例と、それがなぜ不十分かを確認しながら、改善の方向性を示します。



(1)一般的理念の羅列


「生徒が楽しく、主体的に学べるような授業をしたいです。」


これは教育理念としては正当ですが、どのようにそれを実現するかが語られなければ、評価にはつながりません。



【改善方向】


→「楽しさ」と「主体性」をどう設計に落とし込むのかを具体的に語る必要があります。


たとえば、「グループ活動を導入し、生徒自身が課題を立てて解決する授業構成を意識しています」といった語りが望まれます。



(2)方法論の羅列


「ICTを活用し、ペアワークやアクティブラーニングを取り入れたいです。」


これも単なる手段の列挙にとどまり、「なぜそれが有効か」「どの場面で用いるのか」が語られなければ、指導観としての深みがありません。



【改善方向】


→「ICTを使って視覚的に学習内容を提示することで、理解が難しい抽象概念を可視化し、生徒の認知を支えるような授業を目指しています」といった具合に、目的と手段の結びつきを明確にすることが求められます。



3. 授業観を語るための論理構成モデル



説得力のある語りには、以下のような論理構成が有効です。



(1)教科観の提示


まず、自分が担当する教科の本質的な意義を一文で提示します。


例:「数学は、論理的に思考し、問題解決の道筋を見つける力を育てる教科であると考えています。」



(2)目指す学習者像の明示


どのような姿の子どもを育てたいのかを、教科と結びつけて語ります。


例:「私は、生徒が自分で問いを立て、自分の手で答えを導き出そうとする姿を大切にしたいと考えています。」



(3)具体的な授業構想


単元の導入・展開・まとめにおける工夫を簡潔に述べます。


例:「導入では、実生活と関わる問いを提示して興味を喚起し、展開では対話を通して概念を深め、最後に自分の考えを表現する機会を設けます。」



(4)授業の価値と展望


そのような授業を通して、子どもにどのような力を育てたいか、そしてその力が学校外でどう活きるかまでを示します。



4. 教科指導と“語る姿勢”の整合性



面接では、語る内容だけでなく、その語り方そのものも授業力の表れと見なされます。たとえば、以下のような非言語要素も重要です。



☆専門用語をわかりやすく噛み砕いて説明できるか


☆説明が明快かつ簡潔で、論点が明確か


☆聞き手の反応を意識して、話す速度・抑揚を調整しているか



授業を語る姿が「授業そのもの」として見られているという意識を持つことで、語りの質が変わってきます。



おわりに:


授業観とは「語る自己像」の核心である



「どんな授業をしますか」という問いは、単なるカリキュラム上の話ではありません。


それは、受験者が「教科をどう捉え、どのように子どもと向き合い、どんな学びを実現したいか」という教育観そのものを問うものです。


理想を掲げるだけでも、手法を羅列するだけでも不十分です。


授業観は、教科理解・子ども理解・社会との接続という複数の軸のなかで、自分の教育実践を構想する力によって初めて可視化されます。


次回、第9回では、「生徒指導観を問われたとき、対応力と教育的信念の統合を目指す」をテーマに、トラブル対応・指導の一貫性・教育信念の語りをどう構築すべきかを考察していきます。


ぜひ引き続きご参照ください。




河野正夫





 
 
 

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