第8回 志望動機を戦略的に作り込む:地域性・教育課題への接続
- 河野正夫
- 2025年9月2日
- 読了時間: 5分
第8回 志望動機を戦略的に作り込む:地域性・教育課題への接続
<教員採用試験 面接合格講座(連載全30回)>
1.はじめに
面接試験において最も頻出かつ重要な問いが「志望動機」です。
受験者の多くは「子どもが好きだから」「先生に憧れたから」といった一般的な理由を述べますが、これでは差別化ができず、評価も高まりません。
教育委員会(面接官)が真に知りたいのは「なぜで教員として働きたいのか」「その地域の教育課題にどのように取り組もうとしているのか」という点です。
したがって、志望動機は単なる個人的理由ではなく、教育課題と地域性を踏まえた戦略的な構築が求められます。

2.志望動機が重視される理由
(1)定着性の確認
教育委員会は「長く地域に根ざして働いてくれるか」を重視します。
自治体内での転勤の多い教員という職種においても、まずは採用された自治体で腰を据えて働く意思があるかが重要です。
(2)教育方針との適合性
各自治体は教育振興基本計画や教育ビジョンを定めており、それに沿った人材を採用します。
志望動機がその方針と一致していれば、採用後に教育活動へスムーズに適応できると判断されます。
(3)教育課題への実践的姿勢
「地域の教育課題を理解し、主体的に関わろうとする姿勢」を示すことは、教育委員会から高く評価されます。
志望動機は、その姿勢を最も明確に伝える場となります。
3.志望動機作成の三層構造
効果的な志望動機は、次の三層で構成されます。
(1)個人的動機
教員を志す原点を示します。「子どもの成長を支えたい」「教育を通じて社会に貢献したい」といった動機は出発点として必要です。
(2)地域との接続
「なぜこの自治体なのか」を明確にします。
地域の教育方針や施策、人口動態や地域特有の課題を踏まえて語ることで説得力が高まります。
(3)教育課題への具体的関わり
抽象的な理想ではなく、具体的な課題解決に自分がどう取り組むかを述べます。
これによって、受験者の教育観が実践的なものとして伝わります。
4.地域性を取り入れる方法
(1)教育ビジョンの把握
各自治体は教育振興基本計画を公表しています。
これを読み込み、重要施策を把握することが第一歩です。
たとえば「学力の底上げ」「不登校支援」「ICT活用」などが重点に掲げられている場合、それに沿った志望動機を構築します。
ただし、文字通りそのままの引用で語ると、受験作文として評価を落とします。
(2)地域の特色を踏まえる
農業地域、都市部、離島など、地域には固有の生活環境があります。
たとえば「地域行事を教育活動に取り入れたい」「地域資源を活用した体験学習を重視したい」といった発想は、地域理解の深さを示します。
(3)具体的施策との接続
「〇〇市は『キャリア教育の充実』を掲げています。私は講師経験を通じて職場体験のコーディネートに関わった経験があり、その経験を活かして地域に貢献したい」といった接続は効果的です。
5.教育課題への接続方法
(1)不登校・多様な学び
不登校児童生徒の増加は全国的課題です。
志望動機の中で「居場所づくりや個別支援に取り組みたい」と具体的に語ると評価が高まります。
(2)ICT教育の推進
多くの自治体でGIGAスクール構想を踏まえたICT活用が進んでいます。
志望動機に「ICTを活用して子どもの主体的な学びを支える」視点を盛り込むことは現代的なアプローチです。
(3)地域との協働
地域住民や保護者との協働は重要課題です。
「地域人材を活用した授業」や「保護者と協働した学校行事」の経験を志望動機に盛り込むと、現場に即した具体性が出ます。
6.戦略的に志望動機を構築するステップ
(1)経験の棚卸し
まず自分の経験(講師経験、校務分掌、ボランティアなど)を整理します。
教育課題に関連するエピソードを抽出しておきます。
(2)地域施策との照合
次に、自治体の教育方針や重点施策を確認し、自分の経験や教育観と重なる部分を見つけます。
(3)論理的構成の整備
志望動機は「原点 → 地域との接続 → 課題への具体的貢献」という流れで語ると明快になります。
PREP法を応用して簡潔にまとめるとさらに効果的です。
7.具体例
「私は、子ども一人ひとりの可能性を信じ、その成長を支えたいという思いから教員を志しました。特に〇〇県は、不登校支援に力を入れており、スクールカウンセラーや地域支援員との連携を推進しています。私は講師として、不登校傾向の生徒への学習支援に携わり、家庭や専門機関と協働して支援した経験があります。その経験を活かし、地域の施策に貢献できる教員を目指したいと考えています。」
このように、個人的動機から始め、地域性・教育課題と結びつけることで、説得力と一貫性を持った志望動機が完成します。
8.まとめ
志望動機は単なる形式的な答えではなく、地域性と教育課題を踏まえた教育者としての姿勢の表明です。
教育委員会(採用側)は「定着性」「教育方針との適合」「課題解決への姿勢」を重視している。
志望動機は「個人的動機 → 地域との接続 → 教育課題への関わり」の三層構造で整理する。
地域の教育ビジョンや特色を具体的に取り込み、自分の経験と重ね合わせることで差別化できる。
戦略的に作り込まれた志望動機は、単なる自己表現を超え、面接官に「この地域で長く活躍できる人材だ」と確信させる力を持ちます。
河野正夫



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