第6回:学級経営観の表現と、実践からの裏づけ【講師枠・臨採枠・現職枠で受験する人のために】
- 河野正夫
- 2025年7月3日
- 読了時間: 6分
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第6回:学級経営観の表現と、実践からの裏づけ
理念と実践の往復から生まれる説得力ある語り
教員採用試験における面接で、経験者に対して高い確率で問われるテーマの一つが「学級経営観」です。
講師や臨採、あるいは現職教員として、すでに学級担任を経験している場合、その人物がどのような理念のもとに学級を運営し、それをどのように具体化してきたかが強く問われます。
とりわけ、単なる指導方法や場面紹介にとどまらず、「なぜそのように考え、なぜそのように行動したのか」といった思想的な背景まで含めて語れるかどうかが、経験者としての資質の分かれ目となります。
本稿では、「理念」と「実践」の行き来を通じて、学級経営観を構成的に語る方法を詳述します。

学級経営観は「教室をどう見るか」という思想である
学級経営とは、「日々の生活をいかに秩序立て、どのような人間関係を築き、学びを支える環境を創造するか」という実践全体を指します。
そして、その根幹には、「子どもをどう見るか」「教室をどう捉えるか」「教育をどう構想するか」といった教員の根源的な思想が存在します。
たとえば、「安心できる教室をつくりたい」という理念を掲げる教員がいたとします。
その言葉自体は誰もが共有しうるものですが、その中身、安心とは何か、それをいかにして実現するかは、教員ごとに異なります。
したがって、学級経営観を語る際には、自分自身の「安心」の定義、そしてそれを支える行動とのつながりを、具体的に示す必要があります。
学級経営観とは、単なる「方針」ではなく、教師という存在そのものが現れる「思想の姿勢」です。
理念だけを掲げて語り終えると「抽象的すぎる」と評価されますし、実践の紹介だけに終始すると「経験はあるが信念がない」と受け取られるおそれがあります。
理念と実践の往復運動によって語ることで、信頼性と教育的成熟が伝わります。
経験者に求められる「二層の語り」
経験者に対しては、学級経営について次の二層を行き来する語りが求められます。
第一層:
理念や価値観の表明
この層では、「学級とはどのような空間であるべきか」「子ども同士、あるいは教員と子どもとの関係性をどう築いていくか」といった抽象的なレベルでの問いに対する、自分なりの考えを述べます。
たとえば、「主体性の育成」「共感的な関係性」「集団による相互支援」といったキーワードを用いながら、自分が大切にしている教育の方向性を明らかにします。
このとき、理念があまりに汎用的にならないよう注意が必要です。
どこかの教育書から借りてきたような言葉ではなく、自身の実践と結びついた言葉で語ることが重要です。
たとえば「協働的な学級づくり」を掲げるなら、なぜそれを重要視しているのか、過去の経験のどの場面がそれを支えているのかまでを一貫して語る必要があります。
第二層:
理念を裏づける具体的な実践
理念だけでは面接官にとって実態がつかみにくいため、それを支える「場面・行動・結果」の提示が求められます。
つまり、「このような価値観に基づき、このような場面で、こういう働きかけをし、こういう反応があった」という因果的な展開があることで、語りの信憑性が高まります。
この層では、学級全体のルールづくり、日常の人間関係調整、トラブル発生時の対応、委員会活動や係活動の設計、行事運営の仕掛けなど、具体的な実践例が中心となります。
ただし、実践そのものを説明するのではなく、「その実践が自分の学級経営観とどうつながっているか」を言語化することが、本質的な語りにつながります。
面接における語りの構造化:
4つの構成ステップ
面接で学級経営について語る際には、次の4つのステップを用いることで、理念と実践が交差する一貫した語りが構築できます。
1.理念の提示:
どのような学級をめざしているか
まず、自分が目指す学級像を明確に言語化します。
これは、単なるスローガンではなく、教育観や子ども観に根ざしたものである必要があります。
例:
「私は、子ども一人ひとりが自分の居場所と役割を感じながら、他者と協力し合える学級をつくりたいと考えています。」
2.課題と実態の設定:
その学級をどのような現実で運営していたか
次に、実際に担任した学級の様子や、最初に直面した課題を描写します。
ここでは、子どもたちの実態、学級の雰囲気、背景条件などを整理し、理想とのギャップを明示します。
例:
「当初は、一部の子どもたちがリーダー的に動きすぎる傾向があり、消極的な児童が役割から外れてしまう状態が見られました。」
3.理念に基づく具体的な取り組み
理念と実態を踏まえ、どのような工夫を行ったかを具体的に示します。
日々の関わり方や集団構造のデザイン、ルールの見直し、子どもの声の取り入れ方などを含めると、面接官の想像力を刺激できます。
例:
「係活動を子どもたち自身が設計し直す時間を設け、消極的だった児童にも『相談役』『応援係』など、自分に合った役割を見つけられるような仕組みを工夫しました。」
4.変化と今後の展望:
その経験から学んだことと次への意欲
最後に、その取り組みを通して得た学びと、今後の学級経営にどう活かしていきたいかを語ります。ここで、「今後も学びながら、柔軟に対応していきたい」といった展望を含めることで、成長志向の姿勢が伝わります。
例:「一部の子どもが見えづらくなる瞬間を、担任である私自身が見過ごしていたことに気づかされました。今後は、全体の動きだけでなく、関係の周縁にいる子どもにもっと意識的に目を向けていきたいと考えています。」
理念倒れと具体一辺倒のリスク
学級経営観を語る際に注意すべきは、「理念倒れ」と「具体一辺倒」の両極端に陥ることです。
理念倒れとは、抽象的な価値観ばかりを並べ、具体的な行動が伴っていない状態です。
これは、語りに説得力がなく、現場感に欠ける印象を与えてしまいます。
一方、具体一辺倒とは、日々の活動を細かく紹介しすぎて、「なぜそれをするのか」「どのような価値観に基づくのか」が見えなくなる状態です。
大切なのは、理念を地に足のついた実践に接続し、実践を理念によって再解釈する「双方向の往復」を語りの中に含めることです。
この往復運動がある語りには、教育者としての深さと柔軟性が自然とにじみ出ます。
総括:
第6回のまとめ
☆学級経営観とは、学級という空間をどう捉え、どのように関わるかという教師の思想である
☆経験者には、「抽象的理念」と「具体的実践」の往復を語る力が求められる
☆理念だけ、実践だけでは不十分。両者が交差する語りにこそ信頼性が宿る
☆面接では、「理念提示→実態設定→取り組み→変化と展望」の4段階で語ると構造的になる
☆理念倒れや具体一辺倒を避けるには、語りの中で常に「なぜ」を問う必要がある
次回(第7回)では、「指導の工夫と学びの保障(授業づくり)」を取り上げます。
授業を通じて子どもの学びをどのように支え、個別最適な支援や協働的な学びをどう設計してきたかについて、経験者に期待される指導力の語り方を解説します。
河野正夫



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