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第6回:健康相談の場面で問われる面接応答力。 ケース別(不登校・肥満・月経困難など)の対応例

  • 執筆者の写真: 河野正夫
    河野正夫
  • 2025年6月12日
  • 読了時間: 5分

『養護教諭のための無料講座』【全20回連載テーマ一覧】


第6回:健康相談の場面で問われる面接応答力。


ケース別(不登校・肥満・月経困難など)の対応例


個別の指導(計画)との連動を意識した語り方



はじめに:


健康相談は「関係性を築く専門的関わり」である



養護教諭が行う健康相談は、単なる聞き取りやアドバイスではなく、子どもの心身の状態を多面的に理解し、必要な支援へとつなげていくプロセス全体を含む専門的な実践です。


とりわけ、近年の教員採用試験では、「○○の健康問題を抱える児童生徒がいたら、どのように対応しますか」といった形で、個別のケースに即した実践力が問われる傾向が強まっています。


本講では、3つの健康相談ケース(不登校・肥満・月経困難)を例として取り上げ、それぞれについての対応の考え方、相談の進め方、個別の指導との連動、面接での語り方を解説します。





1.健康相談の構造的理解


5段階で捉える実践プロセス



健康相談を語る際には、「対応内容」を羅列するだけでなく、そのプロセスの構造を明確に意識する必要があります。



以下は、相談場面を再現的に語るための基本的な枠組みです。



1. 気づきの契機


(来室・担任からの情報・日々の観察など)



2. 信頼関係の形成


(傾聴・受容・非評価的態度)



3. 情報収集と評価


(生活背景・心理状態・既往歴・家庭状況など)



4. 支援の方針設定と実施


(個別指導・医療受診支援・学内連携)



5. 継続的支援と記録


(振り返り・関係機関との連携・再相談)



この5段階に沿って語ることで、単なる応急的対応ではない、計画的・教育的な支援実践であることを伝えることができます。



2.典型的ケース別:


対応例と語りのポイント



(1)不登校傾向のある児童生徒への相談対応



【背景と課題】


不登校傾向の背景には、身体症状、家庭不和、学業不安、交友関係の不安定さなど、複数の要因が絡んでいます。


養護教諭の相談対応は、「学校とつながり続ける支援」の起点となります。



【語りの要点】


☆登校できたタイミングで保健室に来室 → 静かな空間で緊張緩和を図る


☆本人の話を断定評価せずに聴く → 語ること自体が関係構築の第一歩


☆健康観察と心理的安定を重視し、必要に応じてSCや担任と連携


☆「週1回の定期来室」などの段階的支援計画を提案し、継続を確保



【応答例(抜粋)】


「まずは安心して話せる場として保健室を位置づけ、日常的な対話を通じて信頼関係を築きました。その上で、本人の不安の背景を整理し、担任やSCと連携しながら、学校とのつながりを少しずつ取り戻せるよう支援しました。」



(2)肥満傾向の児童への健康相談と生活改善支援



【背景と課題】


肥満傾向には食生活・運動習慣・家庭の養育方針などが関係し、児童本人の意思だけでは改善が困難です。だからこそ、保健指導と相談支援をつなぎ、家庭や担任との連携を視野に入れた対応が必要です。



【語りの要点】


☆健康診断結果に基づき、本人との面談機会を設定


☆「できることから始める」を原則とし、本人の選択を尊重した生活改善の目標設定


☆保健だよりでの啓発、給食時の声かけ、体育教員との連携による運動機会の確保


☆家庭連絡を通じた情報提供と無理のない生活環境の調整支援



【応答例(抜粋)】


「生活習慣を一気に変えるのではなく、朝食を毎日とるなど、達成可能な目標を本人と一緒に考えました。さらに、担任や家庭とも連携し、保健指導と相談が継続的に連動するよう工夫しました。」



(3)月経困難の訴えへの対応と理解促進



【背景と課題】


月経困難は、身体的症状だけでなく、学習意欲の低下や周囲からの理解不足に悩むケースが多くあります。


相談においては、知識提供・対処法指導・心理的支援・環境調整の4点が統合的に必要です。



【語りの要点】


☆来室のきっかけを逃さず、プライバシーを尊重した聞き取りを行う


☆トイレ・休養スペースの利用しやすさなど、学習環境の調整にも配慮


☆鎮痛薬の適切な利用(保護者・医師との連携が必要)、温罨法などの多用な対処法を伝え、自己管理力を育てる(あくまでも、必要があれば。)


☆性教育の一環として「月経は自然な生理現象」と伝える啓発活動と接続



【応答例(抜粋)】


「一時的な対応にとどまらず、本人の生活全体を支える視点で、セルフケアの方法を指導しました。さらに、月経に対する偏見や誤解を減らす保健指導とも関連づけて対応しました。」



3.「語り方」としての差がつく表現技術


面接では、健康相談を「何をしたか」ではなく、「どのように見立て、何を意図して行ったか」が評価されます。



以下の視点を意識することで、再現的・構造的な語り方が可能となります。



☆「気づき→見立て→支援→継続」の4フェーズで語る


☆「誰と連携したか」「どのように共有したか」まで具体化する


☆支援の目的が「一時的対応」ではなく「自立的支援」であることを示す


☆「相談は支援の入口」であることを前提とし、指導との接続を強調する



おわりに:


語れる実践は、語れる専門性である



健康相談は、もっとも「個別性」と「継続性」が問われる養護教諭の実践領域です。


面接での評価は、単なる知識ではなく、どれだけ構造的に実践を捉え、教育的な視点で語れるかにかかっています。


事例をもとに、共感・見立て・連携・計画という専門的行為を整理し、それを自分の言葉で説明できるようにすることこそ、面接対策において最重要の課題です。



次回は、「学校安全に関する質問、災害・感染症・事故対応を中心に」と題して、危機管理における養護教諭の役割と語りの構造化を扱います。




河野正夫




 
 
 

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