第5回:保健室経営を問う質問への対応戦略。 保健室の理念・機能・環境整備に関する答え方。実践と理想のバランスをとる表現。
- 河野正夫
- 2025年6月11日
- 読了時間: 5分
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第5回:保健室経営を問う質問への対応戦略
保健室の理念・機能・環境整備に関する答え方。
実践と理想のバランスをとる表現。
はじめに:
保健室は「空間」ではなく「教育的環境」である
「保健室経営」という言葉は、単に備品や環境を整えることにとどまらず、保健室という空間を、学校教育の一部として、教育的に機能する場として設計・運営するという営みを意味します。
したがって、教員採用試験の面接において「保健室の役割をどう考えますか」「どのような保健室経営をしたいですか」と問われた場合には、施設や備品に関する説明だけでなく、子どもにとっての意味づけ、学校全体にとっての機能性、養護教諭自身の専門的理念を含んだ応答が求められます。
本講では、保健室の機能と構造を多面的に整理し、それに基づいた語り方を構築するための戦略を提示します。
現場に即した実践的観点と、専門職としての理念的視点の両立を意識し、面接での説得力ある応答を実現するための思考枠組みを構成していきます。

1.保健室の理念
何のための空間かを定義する
保健室は、教育課程の外にある“別室”ではなく、学校教育の文脈において、子どもの心身の健康保持と発達支援のために機能する特別な空間です。
理念的には、以下のような要素が重視されます。
(1)安心と受容の場
保健室は、体調不良だけでなく、不安・緊張・孤独・過剰な刺激など、学校生活に適応しにくい子どもたちにとっての「避難所」としても機能します。
したがって、「誰が来ても安心できる」「拒否されない」空間であることが保健室経営の前提となります。
(2)健康の自己管理を育む場
単なる休養・治療の場ではなく、子ども自身が自分の体調や気持ちに気づき、判断し、適切に対応する力を育てる場として保健室を位置づける視点も重要です。
このとき、養護教諭は気づきを促す伴走者としての役割を担います。
(3)学校全体への波及的効果をもつ場
保健室は、個別対応の場であると同時に、そこでの気づきや支援が学校全体の教育活動に還元されていく「発信の拠点」でもあります。
掲示物・保健だより・研修・カンファレンスなどを通して、保健意識の醸成と文化的整備を行う場としても設計される必要があります。
2.保健室の機能
構造的整理と教育的意味
保健室には多様な機能が同時並行で求められます。
以下は、保健室の機能を教育的視点で捉えた分類です。
(1)健康の保持・増進機能
来室した児童生徒に対する健康相談、応急手当、健康観察、記録の作成など、健康支援の第一線としての対応力を発揮する機能です。
(2)休養と心理的安定の回復機能
体調不良や心理的緊張が高まった際に、落ち着いて過ごすことができる静養環境を提供する機能です。
照明、空間レイアウト、音環境、掲示物などの設計も含め、意図的な「場づくり」が求められます。
(3)自律性の育成支援機能
子どもが自らの体調や心理状態を理解し、「いま保健室を利用するかどうか」「どのように過ごすか」を判断する力を身につけることを支援する機能です。
これは、単なる医療対応ではなく、成長に伴う自己調整力の育成として教育的に位置づけられます。
(4)多職種・組織との接点機能
担任、管理職、特別支援教育コーディネーター、スクールカウンセラー、保護者、医療機関など、複数の支援者をつなぐ中継点としても保健室は機能します。
個別の支援計画やケース会議においては、保健室で得られた情報と視点が不可欠です。
3.環境整備の視点
空間づくりの教育的意義
保健室経営を語るうえで、「どんな空間を目指すか」「どのように整備するか」は必ず問われます。
ただしこれは設備や備品の話ではなく、子どもの発達と安心に即した環境設計を語れるかどうかが問われる論点です。
キーワードとして重視される視点:
☆ゾーニング:
静養と相談のスペースの分離
☆可視性とプライバシーの両立:
教員の目が届きつつ、過剰な露出を避ける設計
☆五感の調整:
光・音・匂い・触感などに配慮した空間づくり
☆教育的メッセージ:
掲示物・書籍・配色などを通して、健康意識を育てる設計
環境整備は、単なる快適さの追求ではなく、子どもが「自分を大切にしていい」と感じられる教育的文脈の構築であるべきです。
4.面接での語り方と差がつく論点
保健室経営について問われた際、以下のような構成が評価につながります。
【応答構成例】
導入:
「私は保健室を、心身の状態に応じて安心して立ち寄れる、子どもにとっての“居場所”でありたいと考えています。」
展開:
「単なる医療空間ではなく、健康に気づき、自ら調整する力を育む教育的環境として保健室を設計したいと思います。そのために、ゾーニングや掲示物の工夫、相談のしやすさなど、環境面にも意図を込めて整備します。」
結論:
「保健室経営は“場をつくる”ことを通じて、子どもたちの成長と学びの基盤を支える営みであると捉えています。」
このように語ることで、実践への見通しと理念の統合、そして空間を教育的に捉える視点を面接官に伝えることができます。
おわりに:
場の構成者としての専門性を語る
保健室は、単なる医療的空間でも、事務的な管理場所でもありません。
それは、子どもと学校をつなぐための「教育的場」としての意味を持つ、構築すべき空間です。
その空間をどのように構想し、どのように運営するかを語れることは、専門職としての力量の表れです。
面接において、保健室経営という抽象的テーマに対して、理念と構造と実践を結びつけて語れる人材こそが、評価されるべき存在です。
次回は、「健康相談の場面で問われる面接応答力」と題し、典型的な事例をもとに、実践的かつ構造的な対応語りを展開していきます。
河野正夫


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