第4回:養護教諭の職務全体像:日常業務と緊急対応の整理:多岐にわたる役割の体系的把握
- 河野正夫
- 2025年6月10日
- 読了時間: 5分
『養護教諭のための無料講座』【全20回連載テーマ一覧】
第4回:養護教諭の職務全体像
日常業務と緊急対応の整理
養護教諭の多岐にわたる役割の体系的把握
面接での語り方への応用
はじめに:
役割の全体像を語れなければ、専門職とは言えない
養護教諭という職種は、日常的な健康観察や保健室対応にとどまらず、健康教育・個別支援・保健室経営・安全管理・教職員との連携など、学校という組織における健康と安全の維持に関わる多岐にわたる業務を担います。
しかもその職務は、看護・教育・福祉・心理といった複数領域にまたがる複合性を持ち、単一の視点ではとらえきれません。
だからこそ、教員採用試験の面接において「養護教諭の仕事とは何ですか」と問われたときに、自らの職務を構造的に説明し、学校教育との接続を明確に語る力が求められます。
本講では、日常業務と緊急対応という二つの軸から職務全体を体系的に把握したうえで、それを面接でどう語るかという実践的視点までを論じます。

1.日常業務の全体構造──支援の連続性と環境の維持
(1)健康観察と健康管理
登校時の観察や保健室来室時の応対において、児童生徒の小さな変化を捉えることは、養護教諭の基盤的業務です。
ここでは単なる「体調の把握」にとどまらず、継続的な観察によって個人の健康傾向を記録し、支援が必要なケースを早期に見立て、必要に応じて関係職種と連携を行います。
(2)保健室経営
保健室という空間の運営は、衛生環境の整備だけでなく、安心・安全・尊重の原則に基づいた「教育的空間の設計」を伴います。
来室時の対応ルールの明確化、プライバシー配慮、掲示物による健康教育の発信など、環境面における教育的意図が求められます。
(3)記録と情報の管理
すべての健康対応・支援活動は、記録を通じて可視化され、将来的な支援や危機対応の根拠資料となります。
記録は医療的情報だけでなく、心理的傾向・家庭環境・関係者とのやり取りを含む包括的なものであり、支援の継続性を担保するための基盤といえます。
(4)健康教育・保健指導の実施
学級担任や教科教員と連携した保健教育の実施、保健だよりや保健目標の発信、個別指導による健康意識の育成など、教育活動の一環としての役割も含まれます。
ここでは「知識の提供」ではなく、「健康に主体的に関わる力の育成」が目的です。
2.緊急対応の役割
即応力と連携力の複合的機能
学校という場では、突然の傷病、感染症の発生、災害、暴力、精神的不安定、保護者とのトラブルなど、非定型で緊急性の高い事象が起こり得ます。
養護教諭には、これらへの即応力と判断力、そして他職種と連携して組織的対応に導く統合力が求められます。
(1)突発的傷病対応
ケガ・発熱・喘息・過換気・アナフィラキシーなどへの即時対応では、単に応急処置を施すのではなく、症状の程度と背景の判断・家族連絡・医療機関との接続・対応記録・再発防止策の整理といった多面的業務を行います。
(2)感染症対応と集団生活の調整
感染症の疑いがある児童生徒の登校・下校判断、保護者連絡、教職員への周知、校内消毒など、個人の健康問題を集団生活全体の安全とどう調整するかという広い視野が必要となります。
(3)災害・事故時の初動対応
地震や不審者対応を含む災害発生時には、避難誘導・けが人の応急手当・情報収集・他機関への連絡調整を行う立場となります。
事前のシミュレーションやマニュアル整備、職員間の役割分担の確認など、平時からの備えも専門職としての重要な任務です。
3.職務構造の整理
六つの中核機能として捉える
以上の業務を大きく整理すると、養護教諭の職務は以下の六領域に整理できます。
1. 保健室経営(空間と運営の設計)
2. 健康管理(観察・記録・見立て)
3. 健康教育(授業・啓発・予防支援)
4. 個別支援(相談・継続的関わり)
5. 安全管理(緊急時対応・リスク管理)
6. 連携・協働(教職員・保護者・外部機関との調整)
これらは互いに独立しているのではなく、常に相互に作用し合いながら、学校という教育環境を健康的に持続させるための一体的構造を形成しています。
4.面接における語り方への応用
面接で「養護教諭としてどのような役割を担いますか」と問われた際に、高評価につながる応答を構成するには、以下のような語り方が有効です。
【構成例】
導入:
「私は、養護教諭とは、学校において健康と安全の基盤を担い、教育活動を支える専門職だと考えています。」
展開:
「日々の健康観察や保健室運営を通じて子どもの小さな変化に気づき、記録と連携を重視した支援につなげます。また、感染症や災害などの緊急事態にも即応し、組織的対応の一翼を担う存在でありたいと思います。」
結論:
「このように、私は日常と緊急の両局面で、学校全体の健康的な営みを支える専門性を高めていきたいと考えています。」
このように、行為の構造と教育的意義を組み合わせて語ることで、単なる経験談ではなく、評価可能な専門職像として印象付けることが可能になります。
おわりに:
専門性は、構造的語りによって証明される
養護教諭の職務は、医療でもなく、心理でもなく、教育だけでもない。それらすべてを「学校」という場で統合する複合的な専門性です。
そのためには、「自分は何をしているのか」「それはなぜ必要か」「教育的にどんな意味があるか」を語れる力が必要です。面接での評価は、まさにこの言語化された専門性にかかっています。
次回は、「保健室経営を問う質問への対応戦略」と題し、保健室という空間の理念と構造、そして面接での語りの技術について詳細に解説していきます。
河野正夫


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