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第4回:困難な経験とその乗り越え方の語り方【講師枠・臨採枠・現職枠で受験する人のために】

  • 執筆者の写真: 河野正夫
    河野正夫
  • 2025年6月30日
  • 読了時間: 6分

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第4回:困難な経験とその乗り越え方の語り方


トラブル・失敗・葛藤を通じて成熟を語る



経験者枠の面接においては、「困難な経験をどのように捉え、どのように乗り越えてきたか」が頻繁に問われます。


ここでの「困難」は、単なるトラブルや失敗を指すだけではなく、葛藤や迷い、力不足の実感など、自らの限界を突きつけられた体験全般を含みます。


こうした問いを通じて、面接官が評価しようとするのは、受験者の「人間としての成熟度」「教師としての変容の可能性」「省察に基づく成長力」です。


困難な経験をどのように言語化し、それを通じてどのように自己を肯定しながら反省し、新たな行動に結びつけているか。


このプロセスを丁寧に語ることが、信頼を勝ち取るための鍵となります。





困難な経験の「語り」は、人間性と力量を映し出す



一般に面接では、成功体験や自己アピールを中心に語る傾向がありますが、困難な経験を語る場面では、より一層、受験者の本質が浮かび上がります。


それは、教育の現場が決して順風満帆ではないからです。


理想通りに物事が進まず、想定外の事態に直面し、葛藤を抱えながらも前に進む。


そうした現実をどう乗り越えようとしたかが、教員としての資質と姿勢を最も如実に表します。


面接官は、


「この人は困難に対してどう向き合うのか」


「困難を他責にせず、成長の糧として捉えられるのか」


「組織の中で適切な行動がとれるのか」


など、日々の職務で直面する状況を想定しながら、語りの中にそれらの手がかりを探っています。



「失敗の語り」には3つの落とし穴がある



困難な経験を語る際、多くの受験者が無自覚に陥りやすい3つの語りの落とし穴があります。


これらを避けることが、語りの信頼性と深さを確保する第一歩となります。



1.自責の過剰化


「反省しています」「自分の配慮が足りませんでした」と強調しすぎると、責任感は伝わるものの、自己肯定感が極端に低い印象になりかねません。


反省は必要ですが、それによって自らの存在価値まで否定する語り方は避ける必要があります。



2.他責の語り


逆に、困難の原因をすべて「子どもが言うことを聞かなかった」「保護者との関係が難しかった」といったように外部要因に帰属させる語りは、問題解決能力の欠如や内省力の低さを印象づけてしまいます。


あくまで、自分がその状況の中でどのように思考し、どのような行動を選択したのかを主語に据えることが重要です。



3.劇的すぎるストーリー化


面接で印象を残そうとするあまり、困難を乗り越えた話をドラマチックに語ろうとするケースもあります。


しかし、教育の現場における「成長」や「変化」は、しばしば目立たず、漸進的であることが多いのです。


小さな気づきや行動の積み重ねを大切にし、誠実に語ることが、かえって説得力をもたらします。



語りの構造:「状況」→「対応」→「省察」→「変容」



困難な経験を語る際には、以下の4つの段階に沿って構造的に整理すると、聞き手にとって理解しやすく、納得のある語りになります。



1.状況の把握:


どのような困難だったのか



最初に、どのような状況で困難に直面したのかを明確に説明します。


子どもの特性、学級の雰囲気、保護者との関係、チーム内の葛藤など、その文脈を具体的に描写することで、問題の輪郭がはっきりします。



例:「小学5年生の学級担任をしていた際、一人の児童が頻繁に授業中に立ち歩くようになり、クラス全体の集中が乱れることが続いていました。」



2.対応の試行錯誤:


自分はどう向き合ったか



次に、自分がその困難にどう対応したかを語ります。ここでは、単なる行動だけでなく、「なぜそう考えたか」「どのように判断したか」という内面的なプロセスを明確にすることで、思考の深さが伝わります。



例:「最初は注意することに集中していましたが、本人の表情や行動から『注意されること自体を目的化しているのではないか』と感じ、関係性の見直しを図る必要があると考えました。」



3.省察と葛藤:


自分に何が足りなかったか



対応を通して、自分の至らなさや未熟さに気づいた経験を語ります。


この場面では、反省と自己肯定を両立させることがポイントです。


「できていなかった自分」を認めつつも、「そこから学びを得ようとする自分」に焦点を移していく姿勢が重要です。



例:「子どもへの言葉が一方的になっていたこと、自分自身が焦りの中で判断していたことに気づきました。同時に、自分の関わり方を変えることで子どもが応じてくれる可能性にも気づきました。」



4.変容と継続:


その後の成長や行動の変化



最後に、困難な経験を通して自分がどう変わったか、どのように実践が更新されたかを語ります。


さらに、それを今後どのように活かしていきたいかという展望を加えることで、語りが未来志向のものとなります。



例:「その後、立ち歩きが起きたときには、周囲の児童の反応や関係性にも目を向け、状況を俯瞰的に見るようになりました。今では、同様のケースにも冷静に対応できるようになってきたと感じています。」



成熟した教師像としての「等身大の語り」



困難な経験を語ることは、失敗をさらけ出すことではなく、自分を見つめ直し、成長のプロセスを言葉にする営みです。


自己肯定と反省を両立させるためには、「あのときの自分は不完全だった」と認める勇気と、「それでも前に進もうとしていた」という意志の双方が必要です。


経験者枠で問われているのは、「完璧な教師像」ではありません。


むしろ、試行錯誤の末に得た学びを他者と共有し、組織の一員として成長を続けていけるかどうか。


等身大の語りを通して、「この人ならば、子どもや同僚とともに困難を乗り越えていけそうだ」という信頼感を与えることが、成熟した教師像を描くうえで最も大切なことです。



総括:


第4回のまとめ



☆困難な経験の語りは、人格と教育観を最も強く伝える機会である。


☆語りの落とし穴(過剰な自責・他責・劇的すぎる構成)を避ける。


☆「状況」「対応」「省察」「変容」の4段階で語ると説得力が増す。


☆自己肯定と反省を両立させることで、内省力と成長意欲が伝わる。


☆成熟した教師像とは、失敗を誠実に受け止め、行動を更新できる存在である。


☆語りには、失敗に対する勇気と希望が必要である。



次回(第5回)は、「子ども理解と関係づくりのスタンスを示す」をテーマに、個別の子どもの姿へのまなざしや信頼関係を築くための言葉の選び方を探っていきます。


教師として子どもをどう見つめ、どう応じてきたか。語りを通じて、教育観の根幹に触れていきます。




河野正夫



 
 
 

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