第3回 「教員らしさ」とは何か: 言語・非言語表現の分析
- 河野正夫
- 2025年8月29日
- 読了時間: 6分
第3回 「教員らしさ」とは何か: 言語・非言語表現の分析
<教員採用試験 面接合格講座(連載全30回)>
はじめに
教員採用試験の面接では、多くの受験者が「自分らしさ」をどう示すかに頭を悩ませます。
しかし、面接官が評価するのは単なる「個性」ではなく、「教員らしさ」です。
ここでいう教員らしさとは、特定の性格や話し方に限定されるものではなく、子どもの前に立ち教育活動を担う職業人として、言語的・非言語的にふさわしい態度や表現を指します。
本稿では、「教員らしさ」を構成する要素を言語表現と非言語表現に分けて分析し、受験者が面接でどのように示すべきかを戦略的に整理していきます。

「教員らしさ」とは何か
まず、「教員らしさ」を一言で定義するのは容易ではありません。
なぜなら、地域や学校文化によって期待される人物像は微妙に異なるからです。
しかし、多くの教育委員会に共通しているのは以下の要素です。
1. 信頼感を与えること
子どもや保護者が安心して関わることができる存在であること。
2. 説明力・指導力を持つこと
複雑な事柄をわかりやすく伝える力を有していること。
3. 落ち着きと安定感を示すこと
予期せぬ状況にも冷静に対処できる姿勢を持っていること。
4. 誠実さと倫理性を備えること
教育者として規範意識があり、公平・中立に行動できること。
これらは面接における発言や態度から判断されます。
つまり、「教員らしさ」とは知識の量ではなく、言葉の使い方や立ち居振る舞いににじみ出る職業人としての適性です。
言語表現に表れる「教員らしさ」
面接における言語表現は、教員の授業力やコミュニケーション力の象徴として見られます。
面接官は受験者の言葉から「この人の授業は子どもに伝わるだろうか」と予測しています。
1. 明瞭でわかりやすい言葉
専門用語を多用したり、長く回りくどい説明をしたりすることは避けなければなりません。
面接官は「子どもに説明するように話してください」とは言いませんが、評価基準はまさにその点にあります。
短く区切った文で、主語と述語を明確にし、論点が一目で伝わる話し方が「教員らしさ」を表現します。
2. 論理的な構成
面接ではPREP法(Point→Reason→Example→Point)など、論理構造を意識して答えることが有効です。
たとえば「あなたの強みは何ですか」という質問に対し、
私の強みは協調性です(Point)。
なぜなら…(必ず「なぜなら」と言う必要はありません)(Reason)。
具体的には、講師経験で…(Example)。
したがって、教員としても協働を重視して取り組みます(Point)
と答えることで、明快さと説得力を兼ね備えた回答になります。
3. 積極性と肯定的な言葉
「〜できない」「〜が苦手」という表現よりも、「〜を改善しようと努力している」「〜に挑戦している」と言い換える方が、前向きな印象を与えます。
教員は子どもの成長を支える存在であるため、言葉の選び方ひとつで受験者の姿勢が評価されます。
4. 丁寧な敬語と誠実さ
敬語の乱れは面接では大きな減点要因です。
特に教育委員会は言葉遣いを通して「保護者対応にふさわしいか」を見ています。
必要以上にかしこまりすぎる必要はありませんが、安定した丁寧語を使い、誠実に答えることが「教員らしさ」を形づくります。
非言語表現に表れる「教員らしさ」
言語と同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのが非言語表現です。
人が受け取る印象の多くは、言葉以外の要素によって決定されます。
面接においても、受験者の「見た目」「所作」「声」が強く印象を左右します。
1. 姿勢と立ち居振る舞い
背筋を伸ばし、安定した姿勢を保つことは、自信と落ち着きを示します。
椅子に深く座りすぎたり、手足を頻繁に動かすと不安定な印象を与えます。
教員は常に子どもから注視される職業であるため、面接でもその立ち居振る舞いが「教室に立つ姿」として評価されます。
2. アイコンタクト
面接官全員とバランスよく視線を交わすことが重要です。
特定の一人にしか目を向けないと「視野が狭い」と感じられる一方、視線が泳ぐと自信がないように見られます。
落ち着いて全体を見渡し、要点を話すときにしっかり目を合わせることで、信頼感を示せます。
3. 声の大きさとトーン
小さな声や抑揚のない話し方は、授業のイメージを弱めます。
面接室は「ミニ授業の場」と捉え、子どもに話しかけるような明瞭さで話すことが大切です。
声量だけでなく、温かみや柔らかさを伴ったトーンが「教員らしさ」を演出します。
4. 表情と態度
無表情や強張った顔では子どもとの関係性構築が難しいと判断されます。
微笑みを絶やさず、柔らかい表情を意識することで、安心感と親しみやすさを示すことができます。
ここでも「子どもが安心して近づける存在か」が評価されています。
言語と非言語の一貫性
重要なのは、言語と非言語が矛盾しないことです。
たとえば「私は冷静に対応できます」と言いながら、声が震えたり視線が定まらなかったりすれば、説得力は失われます。
逆に、言葉は平凡でも姿勢や声が堂々としていれば、強い印象を残すことができます。
面接では「言葉よりも全体の雰囲気」が記憶に残るため、両者の一貫性を意識することが合格戦略となります。
戦略的に「教員らしさ」を磨く方法
受験者が実際に面接準備を進める上で、次のステップが有効です。
1. 模擬面接で録画する
自分の話し方や姿勢を客観的に分析し、改善点を見つけます。特に「声量」「姿勢」「視線」は映像で確認しないと自覚しづらい要素です。
2. 授業を想定して答える
面接は授業の延長線上にあると考え、子どもに説明するような明快さを意識して練習します。
3. 日常生活から習慣化する
敬語や表情は試験当日だけで作り込めるものではありません。日常的に丁寧な言葉遣いや明るい態度を心がけることで、自然な「教員らしさ」が身につきます。
4. 優れた指導者から理論的・実践的なフィードバックを受ける
優れた指導者に面接練習を見てもらい、印象を率直に指摘してもらうことが効果的です。
優れた指導者の理論的・実践的な視点は自己評価の盲点を補います。
まとめ
本稿では、「教員らしさ」を言語的・非言語的要素から分析しました。
要点は次の三つです。
1. 教員らしさは「信頼感・説明力・落ち着き・誠実さ」によって構成される。
2. 言語表現では「明快さ・論理性・肯定性・丁寧さ」が評価される。
3. 非言語表現では「姿勢・視線・声・表情」が大きな影響を与え、言語との一貫性が鍵となる。
つまり、「教員らしさ」とは単なる性格やキャラクターではなく、教育者として信頼される態度を言語・非言語の両面から体現することです。
受験者がこの視点を理解し、日常から意識的に磨き上げていくことで、面接の場でも自然に「教員らしさ」を発揮できるでしょう。
河野正夫



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