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第2回:養護教諭の専門性とは何か?教育的枠組みから理解する。学校現場に根差した真の専門性とは?

  • 執筆者の写真: 河野正夫
    河野正夫
  • 2025年6月8日
  • 読了時間: 5分

第2回:養護教諭の専門性とは何か


教育的枠組みから理解する


学校現場に根差した真の専門性とは



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はじめに:


専門性は「知識」ではなく「構造化された教育的機能」である



「養護教諭の専門性とは何か」という問いは、教員採用試験の面接や論作文において繰り返し問われる根本的なテーマです。


特に現代の学校教育において、養護教諭は単なる健康管理者や応急処置の担い手ではなく、教育課程の一部を担う専門職としての再定義が進んでいます。


したがって、専門性を語る際には、医学的知識の有無や支援経験の豊富さといった個別的要素にとどまらず、教育的機能の中にどのような役割を持ちうるのかという構造的視点が必要です。


本稿では、養護教諭の専門性を「教育実践の中に内在する専門的機能」として捉え直し、その言語化の技術と、面接などでの語り方の基本について体系的に論じていきます。






1.教育的枠組みにおける専門性の位置づけ



学校教育は、本質的に「学びの保障」と「成長の支援」を目的とした集団活動の場です。


そこにおいて、養護教諭は保健指導や保健室経営といった直接的な学習支援に加えて、子どもの心身の健康を支え、教育活動を成立させるための基盤を保障する存在として位置付けられています。


この枠組みの中で、養護教諭の専門性は以下の3つの機能的視点から捉えることができます:



☆予防的視点(未然に支障を防ぐ)


☆早期発見・早期対応の視点(兆候に即応する)


☆支援の継続性と統合性の視点(個別と集団を架橋する)



いずれも、教育活動が「途切れずに続くこと」を目指す営みであり、養護教諭の専門性とは、こうした教育環境の維持と発展に向けた構造的貢献として理解されるべきです。



2.学校現場に根差した専門性の実際


専門性とは、抽象的な知識の有無ではなく、学校現場で何ができるか、どのような場面で固有の判断と行動を担えるかによって具体化されます。


以下に、現場における専門的機能の実例を挙げて考察します。



(1)保健室という「教育空間」の構成と運営


保健室は、単に具合の悪い子が休む場所ではなく、子どもたちが自分自身の心身と向き合い、自律的な健康観を育む場です。


養護教諭はこの空間を物理的・心理的に整え、どの子どもにとっても安心できる場として機能させる責任を担っています。


この構成には、「空間デザイン」「受け入れ姿勢」「対応の一貫性」などの高度な実践的判断が必要であり、まさに現場に根差した専門性の表れです。



(2)健康観察と教育的判断の連動



朝の健康観察、保健室での応対、日々の児童生徒の様子から、体調不良だけでなく、心理的ストレスや家庭背景を含む多因子的問題の兆候を読み取る力は、他の教職員では代替できない養護教諭特有の専門性です。


さらに、その情報をどのように共有し、関係機関や担任と連携して対応を設計するかといった判断は、教育的文脈の中で高度に位置づけられるべき行為です。



(3)保健教育・指導の企画とファシリテーション



保健の授業や保健だより、学級活動との連携などを通じて、養護教諭は子どもの発達段階や生活実態に応じた健康教育を実施しています。


ここでは単なる知識の伝達ではなく、子どもが自己の身体や感情に自覚的に向き合い、判断力を育むことを目指す教育実践が行われており、専門的教育者としての機能が発揮されています。



3.専門性を語るための言語化の技術



教育的専門性を的確に語るには、単なる経験談や理念ではなく、行為の構造と教育的意義を結びつけて言語化する力が必要です。以下の3段階で整理すると明瞭です。



ステップ1:役割を構造的にとらえる


例:「養護教諭は、学校生活における健康の維持と危機の早期対応を担う、判断と支援の専門職だと考えます。」



ステップ2:具体的行為と判断のプロセスを明示する


例:「日々の健康観察では、単なる症状の有無ではなく、その背後にあるストレス要因や家庭環境を含めて総合的に把握することを意識しています。」



ステップ3:教育的意義と成果を付加する


例:「こうした対応によって、子どもが安心して登校を継続できる環境を整えることが、学びの持続性につながると考えています。」


このように、役割 → 行為 → 教育的意義の流れで語ることで、単なる自己主張ではなく、聞き手に伝わる専門性の語りが成立します。



おわりに:


語れる専門性は、実践と教育に根ざす



専門性とは、知識量や年数に比例するものではなく、教育実践の中で何を見立て、何を判断し、どのように環境を構築できるかという構造的行為の中に宿るものです。


そして、それを他者に伝えられる言葉に変換する力がなければ、いかなる専門性も「評価されるもの」としては成立しません。


養護教諭としての専門性を語るとは、「自分の仕事の構造と教育的意味を理解し、それを共有できるかどうか」にかかっています。


これは、教員採用試験の合否を分けるだけでなく、今後の教育現場での信頼構築にも直結する、不可欠な素養であるといえます。



次回は、「面接官の視点を読み解く、質問意図と評価ポイントの理解」と題し、出題者の意図を的確に読み取り、評価につながる応答を組み立てる技術について論じます。




河野正夫


 
 
 

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