第22回:模擬授業の組み立て方——導入・発問・板書の基本。【教採ブログ連載】
- 河野正夫
- 2 日前
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【教採ブログ連載】
第22回
模擬授業の組み立て方——導入・発問・板書の基本

★模擬授業は「授業の冒頭」を見せる試験である
教員採用試験の2次試験における模擬授業は、45分あるいは50分の授業全体を行うものではありません。
その授業の最初の5分から10分程度を実演するものです。
この点を正確に理解していない受験者が、準備の方向を誤ります。
「5分から10分でできる小さな授業を作ればいい」という発想が、最初の誤りです。
模擬授業で求められているのは、45分あるいは50分の授業全体を設計したうえで、その冒頭の5分から10分を実演することです。
授業全体の構成・展開・到達目標が明確に設計されていて初めて、冒頭の導入が意味を持ちます。
導入は、その後の展開につながるものとして設計されなければなりません。
冒頭だけを切り取った「小さな授業」を作ろうとすると、授業としての必然性がなく、導入が宙に浮いた印象になります。
模擬授業の準備は、授業全体の設計から始まります。
★授業台本が、すべての土台になる
模擬授業の準備において、最も重要な作業は授業台本を完成させることです。
授業台本とは、教師がどのタイミングで何を言い、何を板書し、どのような発問をし、児童生徒のどのような反応を想定して次の言葉を続けるかを、一言一句書き起こしたものです。
授業台本を作ることを「大げさだ」「時間がかかりすぎる」と感じる受験者がいます。
しかし、授業台本こそが、模擬授業の質を決める最も根本的な要素です。
台本があるから、板書計画が定まります。
台本があるから、発問の言葉が磨かれます。
台本があるから、学習指導案の展開部分が具体的に書けます。
台本があるから、練習を重ねるうちに言葉が自分のものになります。
逆に、台本なしで「なんとなくこういう流れで話そう」という準備では、本番で言葉が出てこなくなる、発問が曖昧になる、板書が散漫になるという状況が頻繁に起こります。
模擬授業の準備において、授業台本の完成を最優先の目標として位置づけてください。
★導入の設計——最初の数分が授業の質を決める
模擬授業で実演するのは、授業の導入部分です。
導入の役割は、子どもの興味・関心・疑問を引き出し、「この授業で何を学ぶのか」という見通しを持たせることです。
優れた導入には、以下の要素が含まれています。
子どもの既有知識や経験と結びつける入り口があることです。
子どもがすでに知っていること、経験したことを起点として授業を始めることで、学習内容が自分事として感じられます。
「みなさんは○○を見たことがありますか」
「○○と聞いて、何を思い浮かべますか」
という形で、子どもの経験に語りかける言葉が、導入の入り口になります。
学習への問いを生み出す仕掛けがあることです。
「なぜだろう」「どうなるんだろう」という疑問や関心が子どもの中に生まれたとき、その後の学習への意欲が高まります。
導入で「問いを持たせる」ことが、授業全体を通じた主体的な学びの起点になります。
本時の学習課題が明確に示されることです。
導入の最後に、「今日の授業では○○について考えます」という形で、学習課題を明示することが求められます。
子どもが「今日は何を学ぶのか」を理解したうえで授業に臨めるよう、学習課題の提示を導入の締めくくりに位置づけてください。
★発問の設計——問いの質が授業の深さを決める
発問は、授業の質を決める最も重要な要素の一つです。
発問とは、教師が子どもに投げかける問いです。
発問の質によって、子どもの思考の深さが変わります。
発問には、大きく2種類あります。
1つ目は、確認のための発問です。
「○○とは何ですか」
「○○はどこにありますか」
という形で、知識の確認を目的とする発問です。
答えが一つに定まるため、子どもが答えやすい反面、思考を深める効果は限られます。
2つ目は、思考を促す発問です。
「なぜ○○なのでしょうか」
「○○と○○はどのように違うのでしょうか」
「もし○○だったら、どうなるでしょうか」
という形で、子どもが考え、判断し、自分の言葉で表現することを促す発問です。
授業の核心に位置づける「中心発問」は、この思考を促す発問であるべきです。
授業台本を作る際に、どの発問が「確認のための発問」で、どの発問が「思考を促す発問」かを意識的に区別しながら設計してください。
模擬授業で実演する5分から10分の中に、少なくとも一つの「思考を促す発問」を盛り込むことが、授業の深さを示すための重要な要素です。
また、発問の言葉は、台本に一言一句書き起こしておいてください。
「なんとなくこういうことを聞こう」という準備では、本番で発問の言葉が曖昧になります。
発問の言葉を磨くことは、授業台本作成の中で最も時間をかけるべき作業の一つです。
★板書の設計——台本があるから板書が定まる
板書は、授業台本が完成して初めて設計できます。
何を話すかが定まっていなければ、何を板書するかも定まりません。
板書の基本的な原則を整理します。
板書は、授業の構造を可視化するものです。
「学習課題」「子どもの考え」「まとめ」という授業の流れが、板書を見ればわかる状態にすることが理想です。
板書計画は、授業全体のどのタイミングで何を書くかを、台本と対応させて設計してください。
導入で学習課題を板書する、子どもの発言を板書に位置づける、授業のまとめを板書で示すという流れが、板書計画の基本的な構造です。
模擬授業の5分から10分という時間では、板書できる量は限られます。
学習課題と、導入で引き出したい子どもの反応を板書に位置づける程度が、現実的な範囲です。
板書の文字の大きさ・配置・色の使い方も、事前に計画しておいてください。
本番で板書しながら「どこに書こうか」と迷う状態は、台本と板書計画が連動していないことのサインです。
★プロに委ねることの合理性
模擬授業の準備において、「自分の力でゼロから作り上げなければならない」という思い込みを持つ受験者は少なくありません。
教採の準備において、教師志望者は「主体的に学ばなければ」という意識から、子どもに求める学びの姿勢をそのまま自分にも課してしまいがちです。
しかし、この発想は、合格という目標から見たときに、必ずしも合理的ではありません。
病気になれば医師に治療を委ね、法律問題なら弁護士に一任し、税務なら税理士に任せることが、最も効果的な問題解決の方法です。
模擬授業の授業台本・脚本についても、同じ考え方が成り立ちます。
教育分野に精通した指導者に授業台本を作成してもらい、その意図を丁寧に解説してもらったうえで、演技指導まで受けることが、合格への最も確かな道筋です。
台本・脚本の類は、専門的なライターや脚本家、スピーチライターが書いたものの質が、独学で作ったものの質を大きく上回ります。
感覚や思いつきだけで指導する指導者に頼ることも、避けたほうが賢明です。
自分で考え、自分で作るという姿勢は尊いものです。
しかし、残念ながら、その姿勢だけでは模擬授業の仕上がりに限界があります。
模擬授業や場面指導のテーマをあらかじめ公表している自治体もあります。
神奈川県・川崎市・京都府・京都市・大阪府など、テーマが事前に示されている場合は、専門家に授業台本を作成してもらい、その台本をもとに徹底的に練習を重ねることが、最も効率的な準備です。
専門家に委ねることは、主体性の放棄ではありません。
最善の結果を得るための、合理的な判断です。
ただし、委ねることと理解することは別です。
作成してもらった台本の意図を深く理解し、自分の言葉として語れる状態にまで仕上げることが、受験者自身の努力として求められます。
★授業台本を自分のものにする練習
授業台本が完成したら、それを自分のものにするための練習を繰り返してください。
台本を自分のものにするとは、台本を暗記することではありません。
台本の言葉の意図を理解し、子どもへの語りかけとして自然に出てくる状態にすることです。
練習の手順は、以下のとおりです。
まず、台本を声に出して読み、言葉の流れを確認します。
次に、台本を見ながら実際に授業の動きをしながら話します。
板書する動作、子どもへ問いかける動作、子どもの反応を待つ間を作る動作を、台本と連動させて練習してください。
台本を見ずに話せるようになったら、録音または録画して確認します。
発問の言葉が正確に出ているか、板書のタイミングが台本と一致しているか、子どもへの語りかけが自然かを確認してください。
指導者から演技指導を受けられる機会があれば、積極的に活用してください。
自分では気づかない話し方の癖、板書の課題、発問の曖昧さは、第三者の目を通してしか見えてきません。
★最後に——台本が、授業を自由にする
授業台本を作ることを、制約として捉える受験者がいます。
しかし、台本は授業を制約するものではありません。
台本があるから、余裕が生まれます。
何を言うかが定まっているから、子どもへの語りかけに集中できます。
次に何を板書するかが決まっているから、子どもの反応を観察する余裕が生まれます。
発問の言葉が磨かれているから、子どもの思考を引き出す問いかけができます。
台本は、模擬授業の自由を生む土台です。
導入の設計・発問の磨き込み・板書の計画、これらはすべて、完成した授業台本の上に成り立ちます。
授業台本を完成させること、そしてその台本を自分の言葉として語れる状態にまで仕上げること。
それが、模擬授業における2次試験合格への確かな準備です。
河野正夫


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