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第20回(最終回):総集編:自分の言葉で語る「私の養護教諭像」『養護教諭のための無料講座』

  • 執筆者の写真: 河野正夫
    河野正夫
  • 2025年6月27日
  • 読了時間: 5分

『養護教諭のための無料講座』【全20回連載】


第20回(最終回):総集編


自分の言葉で語る「私の養護教諭像」


過去の講座を踏まえた最終整理と自己形成


「自分にしか語れない軸」を言語化する演習



はじめに


「像を語る」ことは、経験の記述ではない



教員採用試験の面接では、「あなたが目指す養護教諭像を教えてください」と問われる場面があります。


この問いに対し、多くの受験者が「経験談」や「感謝のエピソード」、あるいは「一般論としての養護教諭の役割」を語ります。


しかし、問われているのは、単なる経験の記述でも、抽象的な理想像の再生でもありません。


問われているのは、「あなたは、どのような視点で子どもを支え、何を価値として学校に関わっていくのか」という実践的・思想的な自己理解の言語化です。


それは、これまでの経験、学び、観察、葛藤、内省の全体を通して編まれていくものであり、即興的に作られるものではありません。


第20回(最終回)の本講では、これまでの全19回で培ってきた知識・思考・視点を総合的に再整理し、自らの中にある「語るべき専門性」「選んできた姿勢」「大切にしている観点」を一つの像として結晶させていく作業を行います。





1.「私の養護教諭像」を構成する3つの軸



(1)専門性の言語化


支援の核心を見つめる



まず必要なのは、「専門性とは何か」を自らの語りで定義し直す視点です。


養護教諭の専門性は、「健康管理」「保健指導」「救急対応」といった業務の総称ではありません。


子どもの身体と心にかかわる課題を、教育という文脈で理解し、他者と連携しながら実践的に支えていく知的かつ倫理的な実践力であると言えるでしょう。


これを語る際には、自らが関心を持ってきたテーマ、たとえば心のケア、生活習慣の形成、医療的ケア児への対応、多様性理解と支援などを通して、「自分が何に取り組んできたのか」「何に価値を感じるのか」を軸にすることで、語りが抽象論に終始せず、根のあるものとなります。



(2)経験の再構成


「物語」ではなく「視点」を語る



語るべきは、経験そのものではなく、経験から得た実践的視点です。


たとえば、「ある不登校児への対応を通して、信頼関係を築くには“待つ力”が重要であることを学んだ」と語る場合、その経験が価値を持つのは、「待つ力」を専門的な態度として定義し直している点にあります。


経験から何を抽出し、どう言語化してきたのか。それは、自己省察の質を測る重要な尺度です。


「私は○○という経験を通して、××という支援観を持つようになりました」と言える構造を意識して構築することが、説得力のある像を支えます。



(3)未来への接続


成長の見通しを内在化させる



どれほど完成度の高い語りであっても、「私はすでに完成している」印象を与えてしまうと、教育者としての伸びしろが見えなくなります。


そこで重要なのが、「自分がこれから、どのような問いを抱えて学び続けていくのか」を語る視点です。


たとえば、「子どもの予防的支援と養護教諭の関わりについては、まだ十分に理解を深めきれていません。今後は○○のような視点から学びを深めたいと考えています」といった語りは、成長意欲と誠実さを伝えます。


像を語ることは、静止した理想を描くことではなく、動的な成長への意思を示すことでもあります。



2.「像」の語り方


構造的にまとめる技術



「私の養護教諭像」は、構造を意識して語らなければ、断片的な語りになってしまいます。


以下のような3部構成を意識すると、内容と印象に一貫性が生まれます。



(1)冒頭:問いかけ型の導入


「なぜ私は養護教諭という職を選んだのか」「子どもにとって、健康支援とは何なのか」といった問いかけを自らに向ける形で導入することで、語りに対する誠実さと内省の深さが伝わります。



(2)中盤:専門性と経験に基づく語り


専門的な視点と、そこに至るまでの経験や学びを交差させながら語ります。


ここでは、用語を並べるのではなく、「子どもの生活の文脈をどう理解するか」「支援における優先順位をどう判断するか」など、判断・対応の質を語ることが重要です。



(3)終盤:今後の展望と自己形成の姿勢


「私は、まだ未熟な点も多いと感じています。しかし…」という語り出しに象徴されるように、自らの課題を認識しながら、未来へ向けて努力し続ける構えを見せることで、語りの輪郭に厚みが生まれます。



3.自分にしか語れない言葉のために


問いと対話の継続



最後に強調したいのは、「像」は一度書けば完成するものではないということです。


それは常に更新され、現場での経験や新たな問いを通じて深まり、変化していくものです。


だからこそ、面接という場においても、完成された言葉を届けるよりも、現在の自分が言葉を尽くして語ろうとする姿勢が最も大切なのです。


他者の模範回答を模倣するのではなく、自分自身と対話し続けた時間から生まれた語りこそが、面接官の心を動かします。



おわりに


語ることは、自らの価値を再構築すること



本連載は、面接に向けた技術的準備を超えて、「語るとは何か」「支援とは何か」「教育者としてどう生きるか」という根源的な問いに向き合う機会でありたいと考えて構成してきました。


「自分の言葉で語る」とは、単に自己流で語ることではなく、教育実践と専門性に根差した思考を、自分の中で構造化し、他者に伝える力のことです。


そしてそれは、どの問いに対しても、自分の軸をもって応答できる「教育者としてのあり方」に直結します。


あなたがこの20回の学びを通じて、自分自身の内側にある「語るべきこと」「支えたい子どもたちの姿」「貢献したい学校像」を言葉として形にし、面接という場で確かな説得力をもって語れることを、心から願っています。



本講で、全20回の連載講座『養護教諭のための無料講座』は一区切りを迎えますが、学びの道はこれからも続いていきます。



どうかあなたの語りが、子どもたちの支えとなり、学校という場の希望となりますように。




河野正夫





 
 
 

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