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第15回 実技試験(音楽・体育・英語)で差をつける工夫: 苦手をカバーし、得意を最大限アピールする方法

  • 執筆者の写真: 河野正夫
    河野正夫
  • 2025年9月12日
  • 読了時間: 11分

第15回 実技試験(音楽・体育・英語)で差をつける工夫:


苦手をカバーし、得意を最大限アピールする方法



【大学生のための、教採裏技講座】全20回



1.前提の整理:



実技は「公表資料」に基づく計画から始めます


実技試験は自治体差・年度差が大きい領域です。


準備の起点は、当該年度に公表される実施要項と評価観点の精読に置きます。


たとえば、ある自治体では、第二次選考の実技として、


音楽は指定唱歌のピアノ伴奏付き歌唱(当日、「赤とんぼ」「荒城の月」などの複数候補から指定)、


保健体育は器械運動(跳び箱:かかえ込み跳び・台上前転)、水泳(25m平泳ぎ・背泳ぎ)、球技(バスケットボールのドリブルシュート)、剣道(礼法・切り返し・胴打ち)といった構成、


英語はOral Interview(約10分)として


①1分スピーチ(例:「Why I want to teach English」)


②ネイティブとの1対1ディスカッション(Classroom English、Pair/Group Work、Oral Introduction、Warm-up の4テーマから当日2題)を課す形式


を採用しています。



別の自治体では、


保健体育で、立ち幅跳び、バレーボール直上パス、バスケットボールドリブルシュート、マット連続技、現代的なリズムのダンス(課題曲指定)、柔道の受け身など、種目の組み合わせがさらに拡張される傾向があります。


要点は、要項に書かれた言葉を、そのまま練習設計に写像することです。


噂や過去年度の一般論ではなく、今年の評価観点に自分の準備を一致させます。





2.音楽:



専門性を「選曲・伴奏・歌唱・伝達」の総合設計で可視化します


音楽科の実技は、演奏家としての妙技を競う場ではなく、授業で機能する音楽力の提示が核になります。


音楽科・音大出身者が多数受験する前提で、技術の上に授業に活かせる実技が求められます。



(1)出題様式に即した準備



指定唱歌の当日指定に備え、想定曲を複数セットで仕上げます。


旋律線と詩の韻律、和声進行の機能感を一致させ、歌唱と伴奏のアーティキュレーションを統一します。


テンポは歌詞の可読性を最優先にし、句読点や曲想の転換点で微細なアゴーギクを設計します。


評価観点が「曲想にふさわしい表現」と「基礎技能」を並置する形式で示されやすいため、正確性と表情の両立を常に意識します。



(2)伴奏設計:


和声機能を明確化します



合唱的唱歌なら I–IV–V を基軸に、副和音で色彩を加えつつ、前拍の吸いと終止感を明瞭に作ります。


対旋律や分散和音を入れる場合も、子音明瞭度と競合しない音域配置を守ります。


ペダリングは母音の濁りを避けるため控えめにし、間奏はブレス回復と次句導入の合図に徹します。


会場掲示の細部(繰り返し記号の扱い、間奏の有無、歌詞省略の指示など)は当日再確認し、伴奏計画に即座に反映します。



(3)歌唱:言葉を支える発声運用



日本語の拍リズムを保ち、無声化・促音・撥音の処理を丁寧に行います。


長音は母音核で響きを保持し、語尾を曖昧にしません。高域は軟口蓋を十分に上げて明るい母音コアを保ち、音程安定を確保します。


入場直後の呼気管理と、最低音・最高音を往復するスライドで、当日のピッチを安定軌道に乗せます。



3.保健体育:技能の正確性と安全な遂行を示す



保健体育の実技試験は、競技者としての演技を見せる場ではなく、教員として授業を支障なく進められるだけの基礎技能を確認する場です。


試験官が重視しているのは、個々の運動種目を安全かつ安定して実施できるか、そして授業運営に支障をきたさない体力・技術を有しているかという点です。


器械運動、球技、水泳、武道、ダンスなどの種目においては、競技的な華やかさよりも、正確性と安全性が最大の評価軸になります。


無理な難度に挑戦する必要はなく、あくまで「授業で見本を示せるレベル」で確実に行うことが重要です。



(1)出題種目と到達基準の把握



自治体によって課される種目は異なりますが、典型的には以下のような構成が見られます。



☆器械運動(跳び箱・マット)


助走、踏切、着手、回転、着地といった一連の流れが途切れず、かつ安全に行えるかが評価されます。


跳び箱では、踏切板への正確な進入、手の位置、視線、着地時の減速姿勢を重点的に確認します。


マット運動では、連続技でも体の軸がぶれず、転回後の姿勢が安定しているかが見られます。



☆球技(バスケットボールなど)


ドリブル、ステップ、シュートといった基本動作が滑らかで、リズムを崩さずに実施できるかを確認します。


特殊な技術ではなく、授業中に指導する際の模範動作を正確に示せることが求められます。



☆水泳(25m平泳ぎ・背泳ぎなど)


競泳のタイムを競う試験ではなく、規定泳法を乱れなく25メートル泳げるかが評価対象です。


息継ぎの安定、ストロークの一定性、入水角度など、安全に生徒を指導できるかを示すことが目的です。



☆武道(剣道・柔道など)


剣道では礼法から構え、基本技まで一連の流れが正確で、力みや乱暴さがないことが重要です。


柔道では、受け身などの安全技術が確実にできるかが重視されます。



☆ダンス・現代的なリズム運動


課題曲に合わせて一定のリズムで動き、可動域を無理なく保ちながら演技を完成させます。


音楽との一体感や動作の滑らかさ、動作間のつながりがポイントです。


別の自治体では、立ち幅跳びやバレーボールの直上パス、柔道受け身なども課題に含まれる場合があり、自治体ごとに組み合わせが大きく異なります。


受験者は必ず事前に要項を確認し、出題される種目を正確に把握する必要があります。



(2)安全性を最優先にする


体育実技試験では、安全に動作を遂行できるかどうかが極めて重要です。


技術レベルが高くても、危険な動作や不安定な着地は大幅な減点対象となります。



☆助走は一定のリズムを保ち、周囲との距離を十分に確保する


☆着地時は両足を肩幅程度に開き、衝撃を膝と股関節で吸収する


☆水泳では呼吸を乱さず、スムーズにターン・終了できるかを確認する


☆武道・ダンスでは周囲のスペースを常に意識し、接触や衝突を防ぐ



難易度を上げることよりも、確実性を優先してください。


特に器械運動や柔道の受け身などでは、「自分が無理なくできる技術の範囲内」で安定した動作を選ぶことが合格への近道です。



(3)仕上げ期の「再現性」トレーニング



本番が近づく三〜四週間前からは、新しい技術を増やすよりも、動作精度と再現性を高める練習に切り替えます。



☆器械運動:


助走の歩数や踏切板への進入角度を固定化し、常に同じ動作で演技できるようにします。



☆球技:


疲労時でも正確にプレーできるよう、短時間で連続して複数動作を行うサーキット練習を取り入れます。



☆水泳:


25mあたりのストローク数を一定に保ち、呼吸法とテンポを安定化させます。



☆ダンス:


八カウント単位で振りを構成し、身体に余裕を持たせた動作で破綻を防ぎます。



こうした最終調整により、本番でも動作が乱れない「安定した技能」を身につけることができます。



4.英語:


口頭試問を安定した英語運用で突破する



英語の実技試験は、会話力の派手さではなく、学校現場で必要となる口頭の英語運用力(明瞭で誤解のない発話と安定したやり取り)を確認するための試験です。


試験官は、流暢さよりも「明瞭で誤解のない発音と表現」を重視して評価します。


落ち着いて課題に対応し、安定したパフォーマンスを示すことが合格への鍵となります。



(1)1分スピーチ:構成を決めて練習する



試験冒頭では、与えられたテーマについて1分間でスピーチを行います。


代表的なテーマは、「Why I want to teach English(英語を教えたい理由)」や「My most memorable learning experience(印象に残った学習経験)」などです。


スピーチは構成を固定化しておくと、当日も落ち着いて話せます。



導入(Hook):


5秒程度でテーマに入るきっかけを示す


動機(Motivation):


20秒程度で自分の考えや背景を説明


経験(Experience):


20秒程度で具体的な体験を示す


まとめ(Vision):


10秒程度で今後の目標を述べる


締め(Close):


5秒で簡潔に結ぶ



内容は難しい語彙や表現を避け、文法的に安全で明瞭な英語を選びます。


また、「自分の話」で終わらず、生徒の学びにどう貢献したいかを一文加えると、教育者としての意識が伝わりやすくなります。



(2)即興質問(ディスカッション型課題)への対応



スピーチ後には、試験官からの即興質問が続きます。


ここでは「学校現場で実際に想定されるやりとり」に近いテーマが出されます。



例としては、以下のようなものがあります。



☆授業中によく使う簡単な指示文を英語で簡潔に説明する課題に対応する


(例:Please open your textbook to page 10.)


☆ペア活動の進め方を英語で簡潔に説明する課題に対応する


(例:Work with your partner and ask three questions each.)


☆自己紹介や教室でのアイスブレイクを即興で行う


☆簡単な日常会話で、試験官の質問に適切に答える



ここで重要なのは、内容の高度さではなく、英語が明確に聞き取れるかです。


声量、発音、間の取り方を意識し、落ち着いたペースで発話することが評価につながります。



(3)音声の明瞭性を最優先する



試験官は、受験者が話す英語を「生徒が理解できるか」という視点で評価します。


そのため、ネイティブ並みの速さや流暢さは不要です。


むしろ、誤解を生まない発音と、ゆっくりとした話し方が高く評価されます。


具体的なポイントは以下の通りです。



☆重要な単語をはっきり発音する(例:/r/ と /l/、/b/ と /v/ の区別)


☆単語同士をつなげすぎず、はっきり区切る


☆強弱をつけて、話の流れを明確にする


☆言い直しは簡潔に「Let me say that again.」などで整える



これらを日頃の練習で身体化し、本番で安定して再現できるようにします。



(4)本番での心構え


英語実技試験では、課題が完全に予測できるわけではありません。


そのため、当日急に難しい質問が出ても、焦らず以下の手順で対応します。


質問が終わったら一呼吸置き、落ち着いて考える


短く、簡単な文から話し始める


途中でつまずいても止まらず、次の文に自然に移る


わからないときは「Could you please repeat that?」と確認する


失敗を恐れるよりも、最後まで自分の言葉で伝えきる姿勢が評価されます。



5.「苦手を致命傷にしない」横断テクニック



評価観点を十〜十五語のキーワードに圧縮し、実技直前に黙読して観点と動作を同期します。


練習は録画・録音で可視化し、音楽はアタック/リリースの均質性、保健体育は心拍上昇後の技術精度、英語は子音の明瞭度をチェックします。


ミス発生時は止めずに、音楽は次の小節、保健体育は次のモーション、英語は言い換え定型へ滑らかに橋渡しする手順を事前に身体化します。



6.練習設計:


優れた指導者による即時フィードバック



仕上げ期は、優れた指導者の継続的フィードバックを核に据えます。


自己練習では残存しやすい癖(歌詞の子音の曖昧さ、踏切の角度ブレ、母音の濁り、冗長な指示英語)は、第三者の耳と目でのみ短期間に矯正が進みます。


練習→即時指摘→再現のサイクルを高頻度で回し、評価観点直結の改善を積み上げます。



7.当日の運用:



安定した技能を出し切るために


本番では、これまで練習してきた動作を安定して再現できるかが合否を左右します。


実技試験は言語でアピールする場ではなく、あくまで身体で技能を示す場です。


当日は余計な動きをせず、落ち着いて演技に集中できる状態を作ることが最も重要です。



(1)入場前の準備



☆呼吸を整え、心拍を安定させてから試験場に入ります。


☆演技開始前に、足幅・姿勢・視線などを確認し、体を動かす前の基準を固定します。


☆手汗や足裏の滑りなど、細かな感覚を調整し、器具や床との接触を安全に保ちます。



(2)演技開始時



☆音楽では、最初の和音や発声を焦らずに出し、身体でテンポを自然に刻むことを意識します。


☆保健体育では、助走や構えのスタートポジションを一定化し、最初の一歩を確実に踏み出します。


☆英語では、口周りを軽くほぐし、最初の一文を明瞭に発音することに集中します。


いずれも、「試験官に見せる」意識よりも、自分の体と動作をコントロールすることに意識を向けます。



(3)途中でのミス対応



途中で小さなミスが起きても、動きを止めず、次の動作に自然に接続させます。


音楽なら次の小節、保健体育なら次のモーション、英語なら次の文に滑らかに移行します。


演技を中断してやり直すことは、減点よりも大きな失点につながる可能性があります。



(4)終了時



動作を終えたら、静止して安定した姿勢を保つことを忘れないようにします。


特に保健体育では、着地後や最後のポーズが安定しているかどうかも評価対象です。


このように、当日の運用では「教える姿勢」ではなく、試験官に安心して授業を任せられると感じさせる安定した技能の提示が全てです。


焦らず、淡々と、練習通りの動作を積み重ねてください。



8.まとめ


中高の実技試験は、演奏・演技・英語そのものに加え、授業へ還元できる能力の提示が評価軸です。


公表資料に基づく観点直結の準備、提示の明瞭化(動作・音・発話の可聴性)、得意の尖らせが、評価を確実に押し上げます。


苦手は再現性と安全性で底上げします。


最初の三十秒で呼吸・姿勢・第一動作(または第一声)を安定させ、残りの時間で細部の精度を積み上げる運用を確立してください。



次回予告


第16回は「模試・実習・ゼミを『合格素材』に変える方法」。


実習・模試・ゼミで得た断片的経験を、面接・論文・模擬授業へ転写するリフレーミング術を、手順と言い回しの両面から提示します。




河野正夫



 
 
 

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