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第14回:模擬授業の基本:大学生でも堂々と教壇に立てる構成案。 導入5分で児童生徒(試験官)の心をつかむ「発問」と「板書」。 【大学生のための教員採用試験 合格への完全ロードマップ(全20回)】

  • 執筆者の写真: 河野正夫
    河野正夫
  • 11 分前
  • 読了時間: 8分

第14回:模擬授業の基本:大学生でも堂々と教壇に立てる構成案。


導入5分で児童生徒(試験官)の心をつかむ「発問」と「板書」。


【大学生のための教員採用試験 合格への完全ロードマップ(全20回)】



教員採用試験の二次試験において、多くの志願者が最も大きな壁と感じるのが模擬授業です。


筆記試験で培った知識や、面接で語った教育観を、実際の「授業」という形にして表現する力が問われます。


大学の講義や教育実習で授業の作り方は学んできましたが、採用試験の模擬授業には特有の難しさがあります。


それは、目の前に実際の子供がいない状況で、試験官(あるいは、他の受験者たち)を児童生徒に見立てて授業を展開しなければならない点です。


また、試験時間は5分から15分程度と短く、45分・50分の授業のすべてを見せることは不可能です。


試験官が見ているのは、授業の完結ではありません。


授業の「立ち上がり」において、いかに子供たちの心をつかみ、学びのスイッチを入れることができるかという指導の質を確認しています。


第14回では、大学生が限られた時間内で堂々と教壇に立ち、試験官を惹きつけるための構成案と具体的な技術を詳説します。





1. 模擬授業の前提:これは「説明」ではなく「対話」の提示



模擬授業を成功させるために、まず頭に叩き込んでおくべきは「時間の使い道」です。



① 「導入から展開の入り口」に全精力を注ぐ



採用試験の模擬授業は、通常、授業全体の冒頭部分を切り取って行われます。


したがって、無理に「まとめ」や「振り返り」まで到達させる必要はありません。


むしろ、残り時間が少なくなったからといって、本来子供たちに考えさせるべき場面を教員が一方的に説明して終わらせることは、授業の質を著しく下げます。


大切なのは、指定された時間内で、どれだけ子供たちとの「対話」を成立させ、知的好奇心を最大化させられるかという点にあります。



② 「一人二役」のリアリティを追求する



模擬授業には実際の子供はいませんが、あなたの前には30人の児童生徒がいるという設定で動きます。


架空の子供の挙手を見逃さず、その発言を肯定的に拾い、クラス全体に広める演出が必要です。


「あ、〇〇さんはこう考えたんだね。今の意見、みんなはどう思う?」という一言があるだけで、教室の空気感は一変します。


試験官は、あなたが教壇から一人ひとりの子供を丁寧に見ようとする教師であるかどうかを、その非言語的な立ち振る舞いから判断します。



2. 導入5分で子供を主役にする「戦略的発問」の構成



授業の冒頭で子供たちの意識を惹きつけるためには、教員による解説を最小限に抑え、子供たちが思考を開始する「問い」を投げる必要があります。



① 生活経験と学習課題を接合させる「リサーチ発問」



新しい単元や課題に入る際、まずは子供たちの日常的な経験や、これまでに学んだ既習事項と、本時の学習内容を接合させます。



☆ 「皆さんは、これまでに〇〇という現象を日常生活で目にしたことがありますか?」


☆ 「もし自分が物語の登場人物だとしたら、この場面でどのような選択をしますか?」



このように、子供たちの生活実態や感性に訴えかける問いから入ることで、教室内の空気は「教えられる場」から「自分たちが考える場」へと変化します。



② 思考を動かす「ゆさぶり」の提示



当たり前だと思っている事象に対し、あえて異なるデータや対立する意見を提示します。


「普段はこの方法で解決していますが、もしこの条件が一つでも欠けたらどうなるでしょうか?」といった問いを投げます。


子供たちが


「えっ、どうして?」


「それならこうすれば良いはずだ」


と自発的に考え始めた瞬間、学習課題(めあて)は教師から与えられたノルマではなく、子供たち自身の「解決すべき課題」に昇華されます。



3. 思考の軌跡を可視化し、対話を広げる「板書」の設計



黒板は、授業の記録台ではありません。


子供たちの思考を整理し、学びの構造を可視化するための「羅針盤」です。模擬授業の範囲内では、特に「課題の明確化」と「意見の交流」に特化した活用が求められます。



① 構造的な配置で「思考の流れ」を示す



模擬授業で扱う範囲において、黒板は以下のような構成を基本とします。



☆ 左側(学習課題・めあて):


本時のゴールを明確に示します。


模擬授業の範囲で丁寧に書き、最後まで消さずに残すことで、子供たちが常に目的を見失わないようにします。



☆ 中央(対話・検討の広場):


導入から展開にかけて出てくる子供たちの発言や、試行錯誤の過程を書き込みます。


ここでは文字だけでなく、矢印や図等を用いて、意見同士の繋がりや対立を可視化します。


この構成が整っている板書は、子供たちにとっての「思考の地図」となり、試験官にとってもあなたの授業意図が明確に伝わる指標となります。



② 「余白」を活かした双方向の板書技術



黒板を最初から文字で埋め尽くしてはいけません。


子供たちの突発的な発言や、ユニークな視点を拾って書き込むための十分な「余白」を確保します。


模擬授業では、架空の子供の発言をあなたが代弁して黒板に書く場面がありますが、あらかじめ決まった答えだけを書くのではなく、子供らしい素直な言葉として簡潔に記す技術が求められます。


板書に余白があることは、子供たちの意見を柔軟に取り入れる授業構成の余裕を象徴します。



4. 試験官(他の受験者)を「児童生徒」に変える非言語コミュニケーション



模擬授業において、あなたは一人の教員として振る舞い、試験官を教室の子供たちに見立てて接する必要があります。



① 「机間指導」による個へのアプローチの演出



子供たちが個人で考えたり、隣同士で話し合っていると想定する場面を意図的に作ります。


その間、あなたは教壇を降りて空中の子供たちに視線を注いだり、声掛けをしたりする「机間指導」を行います。


ただし、面接官は、あなたを採点しているので、あまり、近づきすぎないようにします。


採点シートを覗きこむのは、重大なマナー違反です。


「〇〇さんは図を使って整理しているね。分かりやすい視点だね」


「△△さん、さっきの資料と比べてみると何か気づきはないかな」


と、具体的な声を出すことで、あなたが一人ひとりの子供の思考に寄り添い、丁寧に見取ろうとする教師であることを表現します。



② 視線と笑顔がつくる「安心できる学習環境」



試験官の目を見ることを恐れず、一人ひとりとアイコンタクトを取りながら語りかけます。


明るい表情と、教室の隅々まで届く安定した声は、それだけで子供たちが安心して学べる環境を作ります。


大学生にありがちな、黒板ばかりを見て話したり、早口で知識を詰め込んだりする傾向を打破し、目の前の子供たち(試験官)と「対話」を楽しむ姿勢を見せてください。



5. 短時間で「学びの質」を証明するための戦略



5分から15分という時間は、あっという間に過ぎ去ります。


その中で高い評価を得るためには、以下の視点が欠かせません。



① 結論よりも「プロセス」の豊かさを重視する



限られた時間内で学習の結論まで到達することに固執してはいけません。


それよりも、「なぜそうなるのか」「他の方法はないか」と子供たちが試行錯誤し、意見をぶつけ合っている様子を、あなたの問いかけによっていかに引き出せるかに注力します。


そのプロセスが、現在の教育で重視されている「主体的な学び」の種となります。


結論を急ぐあまり、教員が答えを教えてしまう授業は、模擬授業において最も避けるべき行為です。



② 次の展開への「期待感」を抱かせて終える



指定された時間が終了する際、演出上、可能であれば、単に「終わります」と言うのではなく、「皆さんの意見を合わせると、面白い発見がありそうですね。この続きは……」といった、次の展開を予感させる一言を添えます。


授業がその場限りのパフォーマンスではなく、連続性のある学びの一部であることを示すことで、あなたの指導はより現実味を帯びたものとして評価されます。



6. 第14回のまとめ:模擬授業は「あなたの教育者としての覚悟」の具現化



模擬授業の準備を、単なる台本の暗記や美辞麗句の羅列で終わらせてはいけません。


それは、あなたが理想とする教育の姿を、限られた時間の中に凝縮して表現するドラマです。



☆ 導入5分で「自分事」にさせる発問を投げ、子供の学びのスイッチを入れる。


☆ 板書は思考の羅針盤。学習課題を左に据え、中央に子供たちの対話を広げる。


☆ 機間指導やアイコンタクトを駆使し、子供一人ひとりを大切にする姿勢を示す。


☆ 完璧な説明を目指すのではなく、子供たちが「もっと考えたい」と思う状態を作る。



教壇に立つ瞬間の緊張を、子供たちへの期待感に変えてください。


あなたの熱意と技術が融合したとき、試験官はそこに、未来の教室を支える確かな教員の姿を見出します。



次回の連載では、模擬授業や実際の授業において避けて通れない、現代的な教育課題への対応を学びます。



第15回:ICT活用と「主体的・対話的で深い学び」の具現化。


タブレット端末をどう使い、子供たちの思考をどう深めるかの具体策。



単なるツールの使用に留まらない、学びの質を向上させるためのICT活用の本質について、具体的な授業場面を想定しながら詳説します。



【今回の合格ワーク:導入と板書の設計図作成】



1. 自分が志望する教科やテーマから「導入の5分間」を一つ選び、子供を惹きつける「最初の一言」と「メインの問い(発問)」を決めてください。



2. その5分間で黒板に書く「学習課題(めあて)」と「子供の想定意見」の配置図をノートに描いてください。



3. ストップウォッチを使い、実際に声を出しながら板書の動作を含めて5分間演じ、その様子を動画で撮影して、子供たちの目を見て話せているかを確認してください。



模擬授業の質は、準備の具体性に比例します。


理想の授業風景を鮮明にイメージしながら、トレーニングを重ねていきましょう。




河野正夫




 
 
 

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