第14回:「チームとしての学校」“個の力”と“組織の一員”としての両立
- 河野正夫
- 2025年6月20日
- 読了時間: 5分
【1倍程度の低倍率で落ちないために】(連載全20回)
第14回:「チームとしての学校」“個の力”と“組織の一員”としての両立
教員採用面接において、「学校はチームである」という前提は、多くの設問に通底するキーワードです。
「同僚と上手くやれますか?」「困難な状況をどう乗り越えましたか?」といった質問は、いずれも応募者が“個人としての力量”だけでなく、“組織の一員としてどう機能するか”を評価する意図を含んでいます。
特に、1倍程度の低倍率の選考では、全員がある程度の能力を備えている中で、「協調的に働けるかどうか」という視点が差異化の決定要因となりやすく、軽視することはできません。
本稿では、「主体性」と「協調性」という一見相反する要素を、教育現場でいかに両立させ、語りとして成立させるかを構造的に検討します。
面接では、“自己主張が強すぎる”印象も、“遠慮がちで頼りない”印象もどちらもマイナスに作用します。その中で、主体的に考え行動しつつも、全体の流れを読み取り、周囲と調和する姿勢をどのように表現するかが問われます。

1. 学校は「個人の集合」ではなく「組織としての協働体」
教員は専門職であり、それぞれが自律的に職務を遂行する能力が求められます。
しかし同時に、学校という場は複数の教員が同一の教育目標に向かって連携しながら働く場であり、「単独の優秀さ」がそのまま「学校にとっての有用性」につながるとは限りません。
たとえば、自分の授業がいかに優れていても、他の教員や保護者との連携がうまくいかない人物は、学校という組織にとってリスクとなる可能性があります。
したがって、面接で重要なのは、「私はこういう指導ができます」という“個の力”の主張だけではなく、「他の教員や専門職と連携しながら成果を出した経験」や「組織全体の方針に従いながら、自分の強みを発揮した実践」の語りです。
これにより、自己の専門性と組織的協働力のバランスが見える化され、「この人となら一緒に働きそうだ」という感覚を面接官に与えることができます。
2. 主体性を語る際には「全体最適」の視点を忘れない
自己PRの中で「主体性」や「行動力」を語る際に注意したいのは、それが“個人プレー”に見えないようにすることです。
たとえば、「私は困っている友人を見て放課後に自発的に手伝いをしました」というエピソードは一見主体性のアピールになりますが、そこに「他の関係者との連携」や「その行動が集団にどう寄与したか」が語られなければ、単なる個人の善意にとどまり、評価にはつながりにくくなります。
より望ましいのは、「授業でグループ活動の調整役を自ら引き受け、全体の進行がスムーズになるよう工夫した」や「教育実習で、複数の教員の指導方針を尊重しつつ、自分なりの指導案を提案した」といったような、“全体を見渡した上での自律的行動”です。このような語りによって、主体性と組織性の両立が自然な形で伝わります。
3. 協調性を語る際には「貢献意識と柔軟性」を明示する
一方で、「協調性があります」という表現だけでは不十分です。
協調性とは、「波風を立てないこと」ではなく、「自分と他者の意見や行動を調整し、より良い結果に導く力」であり、そこには“能動的な貢献”が求められます。
面接で協調性を語る場合は、「対話を通じて役割分担を再構成した」「状況に応じて自分の意見を引き下げ、全体の決定を尊重した」などの具体的な行動が必須です。
また、協調性は「受け身」や「従属」とは異なります。
組織の一員として、自らの判断を一時的に抑えても、全体の目的を優先するという判断ができることは、教員としての成熟を感じさせる重要な指標です。
そのためには、あらかじめ自分の価値観や優先順位を相対化できる視点と、「今、この場で最適な行動は何か」を冷静に判断する姿勢が求められます。
4. 面接官が求める「チームの一員」とはどのような人物か
学校におけるチームワークは、単に仲が良いということではなく、「役割を果たし、責任を共有し、互いに補完し合う関係性」の構築を意味します。
そのため、面接官が「この人と一緒に働きたい」と思うかどうかは、「この人がどれほど優れているか」ではなく、「この人がどれほど周囲に安心感と信頼感を与えるか」にかかっています。
したがって、面接の語りでは、「自分だけが成果を出した話」よりも、「他者と協力して課題を乗り越えた経験」「グループ全体の成功のために裏方に回った行動」などが高く評価されます。
特に、教職は「チームの中で自分の専門性をどこでどう発揮するか」を常に問われる職業です。
「組織の流れを読み、必要なときに前に出て、必要なときには支える」という柔軟な姿勢を語れる人が信頼されます。
結びに:
「個として強く、組織の一部として機能する」教員像
現代の学校教育では、教員に対して高い専門性と自律性が求められる一方で、学校全体の一体感や協働性も重視されています。
教員が孤立せず、他者とつながりながら働く力は、子どもたちの安全・安心にも直結します。
したがって、面接では、「自分は何ができるか」と同時に、「その力をどう組織の中で活かすか」を語る必要があります。
たとえ倍率が1倍前後であっても、志願者全員が採用されるとは限りません。
採用側は、定員を満たすことよりも、「適格な人物かどうか」を重視する姿勢を崩しません。
そのため、教職に必要な資質や能力を備えていることに加えて、「この人と一緒に働けるか」「信頼して子どもを任せられるか」といった観点が、最終的な判断の決め手になることが少なくありません。
自己アピールに偏りすぎず、組織的な視野をもった語りができることが、“落ちない”ための決定的な鍵となります。
次回・第15回では、特別支援教育への関心と対応力について、教育現場の変化とともに、面接でどのように語るべきかを詳しく論じていきます。
どうぞご期待ください。
河野正夫



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