第13回 模擬授業の極意:数分~15分で「教師力」を魅せる方法
- 河野正夫
- 2025年9月10日
- 読了時間: 6分
第13回 模擬授業の極意:数分~15分で「教師力」を魅せる方法
展開構成、板書、声の使い方で高得点を狙う
【大学生のための、教採裏技講座】全20回
1.はじめに
教員採用試験の二次試験において、多くの自治体が模擬授業を課しています。
模擬授業は、受験者が実際に教壇に立ち、授業を進める姿を通して、教師としての力量を直接評価する試験です。
この試験で与えられる時間は、5分から15分程度が一般的です。
小学校では1単位時間45分、中学校・高校では50分という授業時間が基本ですが、模擬授業はその一部を切り取って実演する形になります。
したがって、短時間で授業全体を完結させる必要はありません。
むしろ、限られた時間の中で教師としての総合力を示すことが最大の目的となります。
試験官は、受験者が子どもを授業に引き込み、教室をマネジメントしながら学習を進める姿を見て、「この人なら現場で授業を任せられるか」を判断しています。
模擬授業は単なるパフォーマンスではなく、現場で授業を成立させる力を示す場です。

2.模擬授業で評価される三つの力
模擬授業において試験官が注目する評価ポイントは、大きく三つに整理できます。
(1)授業設計力
短時間の模擬授業であっても、その背後には授業全体の構想が存在しなければなりません。
試験官は「この冒頭部分から、この後の展開がイメージできるか」を見ています。
授業の流れが自然で、学習指導要領に基づいた活動であることが重要です。
児童生徒がどのように学びを深め、どのように振り返るのかが想像できる授業が高く評価されます。
(2)子どもを引き込む力
授業の最初の数分間は、児童生徒の興味・関心を喚起する大切な時間です。
試験官は、受験者がどのように子どもたちの心をつかみ、学習活動に向かわせるかを観察します。
導入での発問や教材提示、教師自身の雰囲気が子どもの意欲を左右します。
短い時間であっても、この「授業冒頭で子どもを引き込む力」が試験の合否を大きく左右します。
(3)教室マネジメント力
授業では、複数の児童生徒が同時に活動するため、教師は全体を統率する力が求められます。
模擬授業では、声の大きさや抑揚、立ち位置、視線、板書など、言葉以外の要素が評価されます。
実際に子どもがいなくても、試験官は「この受験者が現場で授業を成立させられるか」という観点で、非言語的な表現まで細かく見ています。
3.短時間で高評価を得るための基本戦略
模擬授業では、授業の一部分をリアルに再現しながら、短時間で教師力を示す必要があります。
そのために意識すべきポイントは三つです。
(1)授業冒頭に集中する
模擬授業の実演は、授業冒頭の導入や課題提示に力を入れます。
授業の最初で子どもの心をつかみ、学習課題を明確にすることで、「この教師は45分や50分を通して授業を構成できる」という印象を与えられます。
短時間で無理に活動やまとめまで行う必要はありません。
自然に授業が進行していく途中で終わる形が、最も現場感覚に即しています。
(2)児童生徒が活動する場面を示す
模擬授業では、教師が説明して終わる授業は高評価になりません。
子どもが考えたり、発言したりする場面を想定し、その一部を実演に組み込みます。
例えば、発問を投げかけて一呼吸おき、「〇〇さん、どう思いますか」と呼びかけるなど、子どもの存在を前提とした進行が重要です。
こうすることで、試験官は実際の教室をイメージしやすくなります。
(3)授業の自然な流れを保つ
短時間だからといって、授業を急ぎすぎたり、唐突にまとめに入ったりすると不自然になります。
授業が途中で終わること自体は問題ありません。
重要なのは、その時点までの流れが自然で、実際の授業を想起させるものであることです。
試験官は、あくまで「途中までの授業を見て、この先もこの調子で進められるか」を判断しています。
4.板書のポイント
模擬授業では、板書の使い方が授業設計力を示す手がかりになります。
限られた時間でも、以下の点を意識しましょう。
1. シンプルに整理する
黒板に情報を詰め込みすぎない。
キーワードや図を厳選して書くことで、児童生徒の思考が整理されます。
2. 視覚的にわかりやすく
文字は大きく、配置は一定の方向に沿って進める。
左から右、上から下という流れを意識します。
3. 発問と連動させる
板書と発問を結びつけることで、児童生徒の思考を視覚的に支援します。
問いを黒板に書き、それを指差しながら児童生徒に考えさせると効果的です。
板書は単なる記録ではなく、「授業の流れを視覚化するツール」であるという意識を持つことが大切です。
5.声と立ち位置による授業コントロール
模擬授業では、声の出し方と立ち位置が試験官に大きな印象を与えます。
これらは子どもへの安心感や信頼感を生む重要な要素です。
☆声の大きさ:
教室の最後列まで届く程度を基準とし、力強くはっきり発声する。
☆声の抑揚:
重要な言葉を強調し、平坦な話し方にならないようにする。
☆声の速度:
説明はゆっくり、問いかけはややテンポを上げてメリハリをつける。
立ち位置は黒板の横を基本とし、児童生徒を見渡せる場所に立ちます。
必要に応じて前後左右に動き、発問時には子どもに視線を送りながら距離感を調整することで、教室全体を掌握している印象を与えられます。
6.想定児童生徒を意識した演出
模擬授業では、実際の児童生徒がいないため、教室をリアルに想定することが不可欠です。
試験官や他の受験者が児童役を務める場合もありますが、常に教室全体に子どもがいる前提で進めます。
発問時は「皆さんはどう思いますか」ではなく、「〇〇さん、どう思いますか」と具体的に呼びかける。
子どもが答えたと想定して「なるほど、そういう考えもありますね」と応じる。
黙っている子を想定して「まだ考え中の人もいるかな」とフォローする。
これらを行うことで、試験官に実際の教室風景が浮かび、現場感覚を強く印象づけることができます。
7.練習と自己評価
模擬授業は、一度や二度の練習で仕上げることはできません。
以下のサイクルを繰り返すことが上達への道です。
(1)授業案を作成し、実演部分を明確にする
(2)声を出して通し練習を行い、時間を計測する
(3)録画して姿勢・声・視線・板書を客観的に確認する
(4)仲間やゼミでフィードバックを受ける
(5)指摘を修正し、再度練習する
録画による自己確認は特に効果的です。
自分では気づかない癖や表情、声の出し方などを客観視でき、本番に向けた修正が可能になります。
8.まとめ
模擬授業は、短時間で授業を完結させる試験ではなく、実際の授業の一部を切り取り、教師力を示す場です。
無理にまとめまで行う必要はありません。
授業冒頭で子どもを引き込み、自然な流れで途中まで進めることが高評価につながります。
板書や声、立ち位置といった非言語的要素にも気を配り、実際の教室を想定したリアルな授業を実演することが重要です。
その短時間から「この教師なら現場で授業を成立させられる」という信頼を試験官に与えることができれば、模擬授業は成功といえます。
次回は第14回「場面指導(ロールプレイ)突破の裏技」と題して、いじめ、不登校、保護者対応といった場面指導試験で即答するための戦略を解説します。
河野正夫



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