第12回:教育観・指導観の論理的構築法 【教員採用試験の不合格を合格に変える!】(全20回連載)
- 河野正夫
- 2025年10月8日
- 読了時間: 10分
第12回:教育観・指導観の論理的構築法
【教員採用試験の不合格を合格に変える!】(全20回連載)
# 第12回:教育観・指導観の論理的構築法
## はじめに
教員採用試験の面接で必ず問われるのが、「あなたの教育観は何ですか」という視点からの、「どんな教育を実践したいですか」「どのような指導を目指しますか」「子どもたちをどのように育みたいですか」というような質問です。
しかし、多くの受験者がこの質問に苦戦します。「教育観って何を答えればいいの?」「自分の考えがうまく言葉にできない」という悩みは深刻です。
教育観・指導観は、あなたが教員として大切にしたい価値観であり、教育活動の軸となる考え方です。
この記事では、教育哲学や教師教育の研究をもとに、説得力のある教育観・指導観を論理的に構築する方法を分かりやすく解説します。

## 教育観・指導観とは何か
まず、教育観と指導観の違いを理解しましょう。
**教育観とは**
教育の目的や本質についての考え方です。
「教育とは何のために行うのか」「子どもをどのように育てたいのか」という根本的な価値観を指します。
教育観の例:
- 一人ひとりの可能性を最大限に引き出すことが教育の目的だ
- 子どもたちが幸せに生きる力を育てることが教育の使命だ
- 社会で生きていく力を身につけさせることが教育の役割だ
**指導観とは**
具体的な指導や授業をどのように行うかについての考え方です。
「どんな授業を目指すのか」「子どもとどう関わるのか」という実践レベルの価値観を指します。
指導観の例:
- 子ども自身が考え、主体的に学ぶ授業を目指す
- 一人ひとりの個性や特性に応じた指導を大切にする
- 温かい人間関係の中で子どもが安心して学べる環境を作る
## なぜ教育観・指導観が問われるのか
面接官が教育観・指導観を問う理由を理解しましょう。
**教員としての軸があるかを見る**
日々の教育活動の中で、様々な判断を迫られます。
その時に、ぶれない軸を持っているかどうかが重要です。
**子ども理解の深さを測る**
教育観・指導観を語る中で、子どもをどれだけ理解しているか、子どもの立場に立って考えられるかが見えてきます。
**成長する意欲があるかを確認する**
教育観・指導観は、経験を積む中で深まっていくものです。
現時点での考えと同時に、学び続ける姿勢があるかも評価されます。
## 教育観を構築する手順
説得力のある教育観を作るには、段階的な思考が必要です。
**ステップ1:自分の原体験を振り返る**
あなたが教員を目指すきっかけとなった経験を思い出します。
振り返るべき経験:
- 恩師との出会い(必ずしも、これを話すということではありません。)
- 自分が困難を乗り越えた経験
- 子どもと関わって感じたこと
- 講師として働く中で実感したこと
- 教育実習で気づいたこと
**ステップ2:大切にしたい価値を言語化する**
原体験から、自分が大切にしたい価値を見つけ出します。
価値の例:
- すべての子どもの可能性を信じること
- 子どもの自主性を尊重すること
- 安心して学べる環境を作ること
- 一人ひとりに寄り添うこと
- 夢や目標を持つことの大切さ
**ステップ3:教育理論と結びつける**
自分の考えを、学習指導要領や教育理論と結びつけます。
これにより、主観的な意見が、理論に裏付けられた教育観になります。
結びつける理論:
(全てを引用して話すということではありません。知識教養を背景にして、自分の想いと言葉で話すということです。)
- 学習指導要領の理念(資質・能力の三つの柱、主体的・対話的で深い学び)
- 発達理論(ピアジェ、エリクソンなど)
- 学習理論(バンデューラ、ヴィゴツキーなど)
- 教育思想家の考え(デューイ、ペスタロッチなど)
**ステップ4:具体的な実践と結びつける**
抽象的な教育観だけでなく、それを実際の教育活動でどう実現するかを考えます。
## 説得力のある教育観の要素
面接官に評価される教育観には、共通する要素があります。
**子ども中心の視点**
教育観の中心には、常に子どもがいるべきです。
「自分が何をしたいか」ではなく、「子どもにとって何が大切か」という視点が重要です。
良い例:
「子どもたち一人ひとりが、自分の良さに気づき、自信を持って生きていけるように支えたい」
避けるべき例:
「私は厳しく指導する教員になりたい」(自分中心の視点)
**現実的で実現可能性がある**
理想が高すぎて実現不可能な教育観は、説得力がありません。
現実の教育現場で実践可能な内容であることが大切です。
**一貫性がある**
教育観と指導観、そして具体的な実践例が、論理的につながっていることが重要です。
矛盾があると、信頼性が損なわれます。
**自分の言葉で語れる**
教育書から引用したような言葉ではなく、自分の経験に基づいた自分の言葉で語ることが大切です。
## 指導観を構築する手順
教育観をもとに、より具体的な指導観を構築します。
**授業づくりの指導観**
どのような授業を目指すのかを明確にします。
考えるポイント:
- 子どもの主体性をどう引き出すか
- どのように理解を深めさせるか
- 個に応じた指導をどう実現するか
- ICTをどう活用するか
指導観の例:
「子ども自身が疑問を持ち、友達と協力しながら答えを見つけていく授業を目指します。そのために、子どもの『なぜ?』を大切にした発問を工夫します。」
**学級経営の指導観**
どのような学級を作りたいのかを明確にします。
考えるポイント:
- どんな雰囲気の学級を作るか
- 子ども同士の関係をどう築くか
- ルールとどう向き合うか
- 一人ひとりをどう理解するか
指導観の例:
「間違いを恐れず、安心して発言できる学級を作ります。そのために、まず私自身が子どもの話を最後まで聞き、どんな意見も大切にする姿勢を示します。」
**生徒指導の指導観**
問題行動や困難を抱える子どもにどう向き合うかを明確にします。
考えるポイント:
- 問題行動の背景をどう考えるか
- どのように関係を築くか
- どこまで待ち、どこで介入するか
- 保護者や他の教員とどう連携するか
指導観の例:
「問題行動の背景には、必ず理由があると考えます。頭ごなしに叱るのではなく、まず子どもの気持ちを聞き、一緒に解決方法を考えていきます。」
## 教育観・指導観を語る際の構成
面接で教育観・指導観を語る際は、明確な構成が必要です。
**基本構成(1分以内)**(PREP方式です)<秒数は最大値の例です。>
1. 結論:私の教育観は○○です(10秒)
2. 理由・背景:なぜそう考えるかというと~(20秒)
3. 具体的実践:実際には~という形で実現します(20秒)
4. まとめ:このような教育を通じて~(10秒)
**具体例**
「私の教育観は、すべての子どもが自分の良さに気づき、自信を持って生きていく力を育てることです。講師として働く中で、自分に自信がなく、挑戦することを諦めてしまう子どもたちに出会いました。小さな成功体験を積み重ねることで、子どもは変わっていくことを実感しました。授業では、一人ひとりが『できた』と感じられる場面を意図的に作り、個別に声をかけて成長を認めていきます。こうした日々の積み重ねで、子どもたちに自信を育てていきたいです。」
## よくある失敗とその対策
教育観・指導観を語る際の典型的な失敗を知っておきましょう。
**失敗1:抽象的すぎる**
「子どもを大切にする」「一人ひとりに寄り添う」だけでは、具体性がありません。
対策:どのように大切にするのか、どう寄り添うのかを具体的に語る。
**失敗2:理想が高すぎる**
「すべての子どもを東大に入れる」「クラス全員を仲良くさせる」など、非現実的な目標は避けます。
対策:現実的で、実現可能な内容にする。
**失敗3:自分の経験と結びついていない**
教育書の言葉をそのまま使っても、説得力がありません。
対策:自分の体験に基づいて、自分の言葉で語る。
**失敗4:一貫性がない**
「個性を大切にする」と言いながら「全員に同じことをさせる」など、矛盾があると信頼性が損なわれます。
対策:教育観と具体的実践が論理的につながっているか確認する。
**失敗5:教育観がない**
「特にありません」「まだ分かりません」は最悪の回答です。
対策:未熟でも良いので、現時点での自分の考えを語る。
## 学生と講師では語り方が異なる
教育観・指導観を語る際、学生と講師では根拠が異なります。
**学生の場合**
教育実習、ボランティア、アルバイトなどの限られた経験をもとに語ります。
「実習で○○という経験をして、△△と考えるようになりました」という形です。
注意点:
学生が経験が浅いことは面接官も理解しています。
正直に「まだ学びの途中ですが」と前置きしても構いません。
**講師の場合**
実際の教育現場での経験をもとに語ります。
「授業で○○を実践した結果、子どもたちが△△という変化を見せました」という具体性が強みです。
注意点:
経験があるからこそ、より深い考察が求められます。
単なる経験の羅列ではなく、そこから何を学んだかを語ります。
## 教育観・指導観を深めるための学習
説得力のある教育観・指導観を持つには、継続的な学習が必要です。
**学習指導要領を読み込む**
現行の学習指導要領の理念を深く理解することが基本です。
自分の教育観と学習指導要領の理念がどう結びつくかを考えます。
**教育書を読む**
優れた実践記録や教育理論の本を読むことで、視野が広がります。
ただし、丸写しではなく、自分の経験と照らし合わせながら読むことが大切です。
**現場を見る**
可能であれば、学校見学や授業参観の機会を持ちます。
優れた実践を見ることで、自分の目指す教育のイメージが具体化します。
**振り返りを習慣化する**
講師として働いている方は、日々の実践を振り返る習慣をつけます。
「今日の授業で大切にしたことは何か」「子どもにどう関わったか」を言語化することで、教育観が明確になります。
## 面接での質問パターンと対応
教育観・指導観に関する質問には、いくつかのパターンがあります。
**直接的な質問**
- 「あなたの教育観を教えてください」
- 「どのような教師を目指しますか」
- 「理想の授業とは何ですか」
対応:準備した教育観・指導観を、1分以内で簡潔に語ります。
**間接的な質問**
- 「教師に必要な資質は何だと思いますか」
- 「良い授業の条件は何ですか」
- 「子どもとどう関わりますか」
対応:
これらも教育観・指導観を問う質問です。
自分の教育観をベースに答えます。
**具体的場面での質問**
- 「授業で子どもが理解できていない時、どうしますか」
- 「学級で問題が起きた時、どう対応しますか」
対応:
具体的な対応方法を語る中で、背景にある教育観・指導観も示します。
## まとめ
教育観・指導観の論理的構築には、自分の原体験の振り返り、大切にしたい価値の言語化、教育理論との結びつけ、具体的実践との関連づけという4つのステップが重要です。
説得力のある教育観・指導観は、子ども中心の視点、現実的な実現可能性、論理的一貫性、自分の言葉という要素を持っています。
重要なのは、完璧な教育観を持つことではなく、自分なりに真剣に考え、子どもたちのために何が大切かを誠実に語ることです。
教育観・指導観は、教員として成長する中で深まっていくものです。
現時点での自分の考えを、自信を持って語りましょう。
次回は、場面指導・生徒指導の実践的対応法について解説します。
教育観・指導観を、具体的な教育場面でどう実践するかを学んでいきましょう。
河野正夫



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