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第11回:面接における戦略とは? 【初歩から学ぶ面接合格戦略】(30回連載シリーズ)

執筆者の写真: 河野正夫
河野正夫
11 分前
読了時間: 12分

【初歩から学ぶ面接合格戦略】(30回連載シリーズ)


第11回:面接における戦略とは?



★準備と戦略は、別のものです



例えば、



想定問答を五十問作りました。


模範回答を覚えました。


志望自治体の教育大綱を読み込みました。



どれも、準備です。


戦略ではありません。



準備とは、材料を集める作業です。


戦略とは、集めた材料をどう使うかを決める設計です。



材料をどれだけ集めても、使い方が決まっていなければ、本番では出たとこ勝負になります。


準備量と合格率が比例しない理由が、ここにあります。



何十時間もかけて作った想定問答が、面接では三問しか使われません。


その三問に、自分の最も強い材料が乗っているかどうか。


その一点を決めておく作業が、戦略です。





★戦略とは、限られた資源の配分計画です



面接の持ち時間は、十五分から二十分程度です。


一つの質問に答えられる長さは、一分前後です。


面接官の記憶に残る要素は、数個にすぎません。



すべてが有限です。



限られた時間の中で、自分のどの要素を前に出すのか。


どの要素を後ろに置くのか。


何を語らずに済ませるのか。



この配分を、事前に決めておきます。



綿密で、合理的で、科学的な設計が必要になります。


その場の思いつきに任せる部分を、できるだけ小さくしていく作業です。



★合格戦略には、二種類あります



一つ目は、通常型の戦略です。


受験者一人ひとりの条件に合わせた、個別最適な配分設計を指します。



二つ目は、違和感を克服する戦略です。



この二つは、並列ではありません。


階層が違います。



通常型の戦略は、すべての受験者に必要な土台です。



違和感を克服する戦略は、土台を整えてもなお結果が変わらない方に必要となる、別次元の作業です。



まず、一つ目から見ていきます。



★通常型の戦略は、個別最適な設計です



受験者の条件は、一人ひとり違います。



学歴。


職歴。


経歴。


年齢。


性別。


バックグラウンド。


これまでの経験。


持っている能力。



これらがすべて違う以上、有効な戦略も一人ひとり違います。


ここに、汎用の模範解答が機能しない理由があります。



模範解答は、平均的な受験者を想定して作られています。


平均的な受験者は、実在しません。



22歳の大学生と、45歳の社会人が、同じ答えを語って同じ評価になることはありません。


講師として7年働いてきた方と、教育実習しか経験のない方では、語るべき材料が違います。



自分の条件に合わせて作り直す作業。



それが、通常型の戦略です。


多くの受験者は、この通常型の戦略を整えるだけで、合格の可能性を飛躍的に高めることができます。



★通常型の戦略の作り方 


その一 持ち札を棚卸しします



まず、紙とペンを用意してください。


自分の持ち札を、すべて書き出します。



書き出すのは、次の四種類です。



経歴。


経験。


資質。


語れる場面。



経歴は、履歴書に書ける事項です。


学部、専攻、資格、職歴、担当してきた校種や教科。



経験は、履歴書には書かないものです。


担任として受け持った学級の出来事。


部活動での指導。


保護者との関わり。


前職での顧客対応や後輩の育成。



資質は、他人から言われたことを手がかりにします。


落ち着いている。


声が通る。


人の話をよく聞く。


自分で挙げると迷うため、他人の言葉を思い出してください。



語れる場面は、最も大切です。


いつ、どこで、誰と、何があったか。


情景が思い浮かぶ単位で書き出します。



粒度は、細かくしてください。


「教育実習をしました」では、一枚の札になりません。


「実習最終日に、ほとんど発言しなかった生徒が手紙をくれた」まで下ろすと、一枚の札になります。



思い出せないときは、時系列で追ってください。


中学時代。


高校時代。


大学時代。


卒業後の各年。



各時期について、印象に残っている場面を三つずつ挙げていきます。



目安は、三十枚から五十枚です。


多すぎると感じるかもしれませんが、この段階では削りません。


選ぶのは、次の作業です。



★通常型の戦略の作り方


その二 志望先と照合します



次に、志望自治体の資料を開きます。


求める教師像。


教育大綱。


その年の重点施策。


志望する学校種の特性。



これらと、書き出した札を突き合わせていきます。



判定の基準は、三つです。



一つ、その札は、求める教師像のどの項目に対応するか。


対応する項目があれば、強い札です。



二つ、その札は、自分にしか語れないか。


誰でも語れる内容であれば、弱い札になります。



三つ、その札は、情景として語れるか。


具体的な場面があれば、強い札です。


抽象的な説明にしかならなければ、弱い札です。



三つすべてを満たす札が、主力になります。


二つ満たす札が、控えになります。


一つ以下の札は、今回は使いません。



多くの受験者は、ここで驚きます。


一番語りたかった札が、弱い札だったという場合があります。


思い入れの強さと、面接での強さは、別の基準で決まります。



★通常型の戦略の作り方 


その三 どの質問で出すかを割り振ります



主力の札が、五枚から七枚ほど残ったはずです。


これを、質問ごとに割り振ります。



志望動機で出す札。


自己アピールで出す札。


子供たちに伝えたいことで出す札。


場面指導で出す札。


困難を乗り越えた経験で出す札。



ここで重要な点があります。



同じ札でも、出す位置を変えると、効き方が変わります。



例を挙げます。



「生徒が部活動を辞めたいと言ってきたとき、二週間かけて話を聞き続けた」


という札があるとします。



この札を自己アピールで出すと、粘り強さの証明になります。


子供たちに伝えたいことで出すと、待つことの大切さを語る材料になります。


場面指導で出すと、実際の対応力の裏づけになります。



どの位置で最も効くか。


それを決めるのが、割り振りの作業です。



そして、一枚の札は、一箇所でしか使いません。


同じ話が二度出てくると、材料の少ない受験者に見えてしまいます。


控えの札は、追質問用に手元に置いておきます。



★年齢と経歴によって、戦略は変わります



割り振りの方針は、受験者の属性によって変わります。



大学生の場合。


前に出すべきは、伸びしろと吸収力です。


実績の量では、講師経験者にかないません。


学び続ける姿勢、素直さ、教育実習で得た気づきの深さ。


ここに配分を寄せます。



講師の場合。


前に出すべきは、現場での実績です。


実際に子供と向き合ってきた時間が、最大の資産になります。


具体的な場面を、細部まで語れる強みを使います。


一方で、現場の経験があるがゆえに、語りが内輪の言い回しに寄らないよう注意が必要です。



社会人の場合。


前に出すべきは、前職で培った視点と、即戦力としての要素です。


組織で働いてきた経験。


顧客や取引先との折衝。


後輩の育成。


これらは、保護者対応や同僚との協働に直結します。



自分の属性を確認し、どこに配分を寄せるかを決める。


ここまでが、通常型の戦略です。



★それでも、不合格が続く場合があります



ここからが、二つ目の戦略です。



準備は万全です。


講座に通い、個人レッスンを受け、想定問答を作り込み、追質問への備えまで整えています。


語る内容は優れていて、教育への考え方もしっかりしています。



それでも、不合格が繰り返されます。


数年、あるいは十年以上、同じ結果が続く方もいらっしゃいます。




さらに、不思議なことが起こります。


同じ日に受けた受験者が全員合格しているのに、自分だけが不合格になる。


その年の合格者数が定員を割っていて、ほかの方は全員が合格しているのに、自分だけが合格しない。



こうした経験をされた方は、当然、こう考えます。


なぜ、自分だけが落ちるのか。


何が足りないのか。



★二つ目の戦略は、違和感を克服することです



原因は、ちょっとした違和感にあります。



面接官が、あなたと向き合った数分の間に感じ取る、わずかな違和感です。


実力の不足でも、知識の不足でもありません。


それでも、合否を決定的に左右します。



違和感は、四つの場所に表れます。



1.話し方に表れる違和感。


話し方がぎこちない。


語り方がたどたどしい。


どこか不自然な言い回しが混じる。


独特のイントネーションがあり、聞き取りにくい。



2.表情と視線に表れる違和感。


表情が暗い。


表情の動きが不自然に見える。


視線が定まらない。


目つきが、どこか強すぎる、あるいは弱すぎる。



3.雰囲気に表れる違和感。


なんとなく近づきがたい。


どことなく暗い、あるいは怖い印象がある。


一緒に働きたいという気持ちが、面接官の中に生まれない。



4.語りの内容から生まれる違和感。


述べていることは正しい。


教育論としては、筋が通っている。


それでも、独善的に響く。



この四つ目は、特に見えにくい違和感です。



正しさを積み上げるほど、聞いている側は反論を許されない位置に置かれます。


子供や同僚と向き合う柔らかさが、語りの中から消えていきます。


内容に誤りがないため、本人も指導者も、問題の所在に気づけません。



これらを一言でまとめると、「どこか変」「ちょっと変」という感覚になります。



★なぜ、小さな違和感が決定的になるのか



面接は、人が人を選ぶ営みです。


評価の観点は定められていますが、評価をつけるのは人間です。


そして、人間は、わずかな違和感に敏感です。



面接官は、あなたを見ながら、ある場面を想像しています。


毎日、子供たちの前に立つ姿。


保護者と話をする姿。


同僚と協力して仕事を進める姿。



そこに、わずかな違和感が残ります。


すると、採用側は慎重になります。



公費で採用し、子供たちを任せる以上、確信を持てる人を選びたいと考えます。


違和感は、それが小さくても、その確信を妨げます。



意地悪から生まれる判断ではありません。


採用する側の立場に立てば、当然の反応です。



★違和感は、真面目な人ほど抱えやすくなります



ここは、正確に理解してください。


違和感がある方に、人間としての欠陥があるわけではありません。


違和感が生まれる背景は、たいてい次のような事情です。



本番の緊張で、頭が真っ白になった。


そのために、話し方も表情も、普段とはまったく違うものになってしまった。



もともと、少しぎこちない話し方が癖になっている。


人前で話す機会が少なかったため、その癖が残っている。



真面目すぎて、話が正論に寄りやすい。


誠実であろうとするほど、言葉が硬くなる。



緊張すると表情が固まり、暗く見える。


本人は普通にしているつもりでも、面接官には怖い顔に見える。



どれも、人としての問題とは無関係です。


むしろ、真面目で誠実な方ほど、こうした違和感を抱えやすくなります。



★違和感は、自分では気づけません



ここが、この戦略の最大の難所です。



自分の話し方を、自分の耳で聞くことはできません。


自分の表情を、語っている最中に見ることはできません。


自分の雰囲気を、他人の目で確認することもできません。



家族や同僚は、あなたに慣れています。


慣れている相手には、違和感が発生しません。


ですから、指摘も出てきません。



受験仲間同士の練習も、同じ限界があります。


互いに気を遣うため、よかったと思う、という感想で終わりがちです。



違和感を見つけるには、第三者による専門的な分析が必要になります。



どこに違和感があるのか。


その違和感は、何から生まれているのか。


どうすれば、消せるのか。



この三つを言語化できれば、改善は具体的な作業に変わります。



★志望先を変えても、解決しません



不合格が続くと、多くの方が同じことを考えます。



志望先を変えてみよう。


倍率の低い自治体を受けてみよう。



その判断が有効な場合もあります。


しかし、原因が違和感にある場合、志望先を変えても結果は変わりにくくなります。



理由は、はっきりしています。


違和感は、あなたと一緒に移動するからです。



どの会場に行っても、どの面接官の前に座っても、同じ話し方、同じ表情、同じ雰囲気で臨むことになります。



受ける場所を変える前に、違和感そのものに手を入れる必要があります。



★違和感を克服する三段階



違和感は、必ず取り除くことができます。



話し方の癖は、練習によって変わります。


表情は、作り方を学べば変わります。


視線の置き方にも、具体的な方法があります。


正論に寄りがちな語りも、言葉の選び方と構成を変えれば、柔らかく届くようになります。



必要なのは、次の三段階を、長期間にわたって繰り返すことです。



1.分析。


語りと表情と雰囲気を、専門的な視点で観察し、違和感の所在を特定します。


どの場面で、どの要素が、どう表れているか。


場所が特定できなければ、次の段階へ進めません。



2.考察。


その違和感が、どこから生まれているのかを検討します。


緊張なのか。


長年の癖なのか。


言葉の選び方なのか。



原因によって、対処の方法がまったく変わります。


緊張が原因であれば、場慣れと手順の確立が対処になります。


癖が原因であれば、動作の置き換えが対処になります。



3.演習。


新しい話し方、新しい表情、新しい語りの構成を、繰り返し練習します。


そして、身についたかどうかを、毎回確認します。



長年かけて身についた癖は、一度や二度の練習では変わりません。

この過程には、時間がかかります。


そして、違和感は一人ひとりまったく違うため、一対一の個人指導でなければ進められません。



★第11回のまとめ



戦略とは、限られた資源の配分設計です。



通常型の戦略は、自分の持ち札を棚卸しし、志望先と照合し、質問ごとに割り振る作業です。


多くの受験者は、ここを整えるだけで、合格の可能性を大きく高められます。



それでも結果が変わらない場合は、違和感という別次元の問題を疑ってください。


違和感は、分析、考察、演習の三段階で、必ず取り除けます。



一般に、面接は、戦略・脚本・演出の順で、準備していきます。



何を語るかを決めるのが、戦略です。


どう組み立てるかが、脚本です。


どう届けるかが、演出です。



今後の連載で、詳しく説明していきます。




河野正夫




 
 
 

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