第11回「同僚と上手くやれますか?」 人間関係における“評価される語り” 協調性や連携意識をアピールする具体的なエピソードの活用法
- 河野正夫
- 2025年6月17日
- 読了時間: 6分
【1倍程度の低倍率で落ちないために】(連載全20回)
第11回「同僚と上手くやれますか?」
人間関係における“評価される語り”
協調性や連携意識をアピールする具体的なエピソードの活用法
教員採用試験の面接においては、かなりの頻度で「同僚と上手くやれますか?」という趣旨の質問が投げかけられます。
一見すると、この質問は性格や雰囲気を尋ねるような雑談的な印象を与えるかもしれません。
しかし実際には、明確な評価基準に基づいた問いであり、面接官が「採るかどうか」の判断において重視している論点の一つです。
特に、1倍前後という低倍率の状況では、学級担任や教科指導といった職務遂行能力だけでなく、「職場内の人間関係に悪影響を及ぼす人物かどうか」という視点が採否の決定打となることがあります。
近年の教育現場では、人間関係のトラブルによって職場全体の雰囲気や業務の効率が著しく損なわれる事例が多発しており、管理職はその予防を重視しているからです。
本稿では、「同僚と上手くやれますか?」という質問に対して、どのように答えを構成し、どのように評価される語りを形成するかについて、面接官の評価観点を踏まえて戦略的に検討していきます。
単に良い印象を与えることを目的とするのではなく、“減点されない語り”をベースに、“信頼される協働者像”を可視化する構成技法を提示します。

1.「協調性」は抽象的に語るだけでは評価されない
面接官が「この人と一緒に働けるかどうか」を検討する際、単に「性格が穏やかそうだ」「誰とでも仲良くできそうだ」といった印象に頼って判断しているわけではありません。
むしろ重視されるのは、「実際に職場という組織に適応できる柔軟性があるか」「協働を円滑に進めるための判断や姿勢が備わっているか」といった具体的な資質です。
たとえば次のような語りは、無難ではあるものの、評価にはつながりにくい代表例です。
「人間関係を大切にしています」
「誰とでもうまくやっていける方です」
このような発言では、「協調性」という語の中身が見えてきません。
評価者は、あなたがどのような行動をとってきたのか、あるいは、これからどのような姿勢で職場に参加しようとしているのかという“具体的な働き方”のイメージを求めています。
抽象語だけで構成された語りは、そのニーズに応えることができず、減点にはならなくても評価項目の外に置かれてしまいます。
2.面接官が見ている「協働性」の評価基準とは
教員という職業は、授業や生徒指導といった個別の専門性だけではなく、教職員同士の情報共有や分掌業務、学年経営など、チームでの運営が日常的に求められます。
したがって、採用の場面においても、以下のような協働性の側面が重要視されています。
(1)チーム志向の姿勢があるか
学校という場は、個人の成果よりも組織全体の調和と機能が優先される空間です。
教科間の連携、学年会議、保護者対応など、教員一人で完結する仕事はほとんど存在しません。
したがって、「自分のやり方」よりも「学校全体の方針」に沿った行動を選択できる柔軟性が重視されます。
個人主義的な発想や、自分の意見に固執する姿勢は、評価の大きなマイナス要素になります。
(2)立場や役割への理解があるか
年齢や経験年数に関係なく、学校では分掌や学年の担当としての役割分担がなされます。
その中で、自分の立場を正しく理解し、適切に責任を果たす意識があるかどうかが問われます。
上司や先輩との関係の中で、単なる受け身ではなく、「状況を読み取り、必要な行動をとれる教員かどうか」という視点が強く意識されます。
(3)摩擦やズレへの対処方針があるか
どれほど協調性がある人物であっても、学校という複雑な場では、意見の食い違いや役割の衝突が避けられません。
大切なのは、そのような局面において、感情的に反応せず、状況を調整しながら冷静に対応できる力があるかどうかです。
評価者は、対立を恐れたり、回避したりするのではなく、「起こりうる摩擦を前提に、どう関わっていこうとするか」という視点を持った語りを求めています。
3.評価される語りの構造とエピソード活用
協調性や連携意識を評価される形で語るには、具体的なエピソードをもとに、「どのような状況で」「どのように考え」「どのように行動したか」を構造的に説明することが最も有効です。
重要なのは、他者との関係性の中で見えてくる自分の判断や行動のパターンを、面接官が明確に理解できるように伝えることです。
例:
委員会活動において、意見が対立するメンバー同士の話し合いが難航した場面がありました。その際、私は両者の主張を整理し、共通点と違いを明確にした上で、全体の方向性をすり合わせる提案を行いました。結果的に、チーム全体の納得感を得た形で結論を導くことができました。異なる立場の教員と連携しながら課題を解決する場面が多くあると考え、今後も相手の意図を尊重しながら、調整的な姿勢で関わっていきたいと思います。
このように、「課題の発生 → 行動の選択 → 得られた成果と展望」という語りの流れを構成することで、協調性が“印象”ではなく“判断と行動の蓄積”として可視化されます。
4.「減点されない語り」から「信頼される語り」へ
低倍率の面接において、協調性に関する設問は、減点を避けるためのリスク管理ポイントであると同時に、「信頼できる教員像」をアピールする機会でもあります。
そのため、語る際には次のような要素を含めることが効果的です。
☆自分の中にあるチーム志向の意識を明確にすること
☆意見の違いや年齢差に配慮できる対人スキルを語ること
☆小さな連絡や確認といった基本的行動を重視する姿勢を示すこと
これらの語りは、「協調性」という抽象語を、具体的かつ現実的なイメージとして提示する手段となります。
面接官にとっては、どれだけ人当たりが良いかよりも、どのように職場で動いてくれるかを想像できるかどうかが、採用判断の鍵となります。
おわりに
協調性は、語りによって“見せる”ことができる
「同僚と上手くやれますか?」という質問は、単なる人柄の確認ではなく、実務上の信頼性とリスクの低さを測る問いです。
ですから、性格を変えたり、理想化したりする必要はありません。
必要なのは、「自分が職場に入ったとき、どのような姿勢で関係性を築こうとするか」を、構造的に言葉にすることです。
協調性は、本来、誰もが持ち得る資質です。
その資質をどう捉え、どう伝えるかが、評価の明暗を分けます。
1倍程度の低倍率であっても、「この人には任せられない」と判断されれば、容赦なく見送られます。
その逆に、「この人となら安心して働けそうだ」と思わせる語りができれば、確実な合格に近づくことができます。
協調性の語りは、意識と構成次第で“減点リスクを回避しながら加点に転化できる設問”であることを忘れずに、戦略的に備えていきましょう。
河野正夫



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