小論文シリーズ8 教師による体罰や暴言
- 河野正夫
- 2025年6月12日
- 読了時間: 4分
【小論文課題】
本県では、教職員による児童生徒に対する体罰・ハラスメントの根絶に向け、取り組んでいるところです。あなたは、児童生徒に対する体罰や暴言が起こる要因はどのような点にあると考えますか。それを踏まえて、教諭又は養護教諭として、児童生徒に対する体罰や暴言のない学校にしていくために、どのように取り組んでいきたいと考えますか。具体的な実践例を示しながら、1,000字以内で述べなさい。
(1,000文字以内)

【小論文】
児童生徒に対する体罰や暴言が発生する要因は、第一に、教職員側のストレスマネジメントの不全や児童理解の不足にあると考える。多忙な業務やクラス経営の困難さに直面する中で、教職員が感情的に反応してしまう背景には、支援体制の脆弱さや相談環境の欠如といった組織的課題も含まれる。さらに、問題行動への対応として「指導」の名のもとに精神的・身体的圧力を加えることが「効果的」と誤認される風土も、いまだ一部には残存している。
私は講師として勤務した学校で、家庭環境に課題を抱え、情緒の不安定さから他児との関わりを避ける児童Aと出会った。Aは授業中に突然席を立ったり、小さな刺激で感情を爆発させたりすることが多く、他児との摩擦も絶えなかった。私はまず、Aの行動の背景にある不安や劣等感に着目し、無理に注意せず、落ち着いたタイミングで声をかけ、丁寧に話を聴いた。安心できる人間関係の構築を第一と考え、信頼形成に注力した。
さらに、Aの得意な図工活動に着目し、作品づくりの過程を学級で共有する機会を設けた。加えて、Aが安心して活動に臨めるように環境調整と見通し支援を行い、他児にもAの努力や工夫に注目させるようにした。また、学級全体に対しては、相手の立場に立つ視点や、思いやりの気持ちを育む道徳的な働きかけを、学級活動を通じて丁寧に継続した。その結果、Aは徐々に自信を取り戻し、感情や考えを言葉で伝える姿が見られるようになった。学級内でも、互いを支え合う関係が育まれていった。
この経験を通して、児童の行動の奥にある背景を丁寧に理解し、肯定的な関わりを重ねることが、体罰や暴言に頼らない教育の基盤になると実感した。また、児童と向き合う教職員自身が心身の健康を維持し、感情を内省的に扱う力を育てることも重要である。
今後私は、児童一人ひとりの背景を深く理解する姿勢を大切にし、対話と信頼を土台とする教育実践を継続したい。そのうえで、教職員同士が支え合い、健全な指導観を共有できる風土を育む必要がある。体罰や暴言のない学校とは、単に禁止を徹底する場ではなく、すべての構成員が尊重され、安心して成長できる場である。私はその実現に向けて、日々の実践と内省を積み重ねていく。
【執筆の観点】
本小論文では、児童生徒に対する体罰・暴言が生じる要因を分析したうえで、その根絶に向けた教員としての具体的な取り組みを、講師経験に基づいて論述しました。
出題意図に即して、「背景分析→具体的実践→得られた成果→今後の方針」という四段構成を明確にし、経験と教育観を一貫させることを重視しています。
序論では、体罰や暴言の要因を個人レベルと組織レベルの双方から捉え、感情制御の困難さや誤った指導観、学校内の相談体制の不備などを挙げて、問題の構造的な広がりを示しました。
ここでの課題設定の的確さが、論理性と現場感覚の両立につながっています。
本論では、特別な配慮を必要とする児童Aとの関わりを軸に、信頼関係の構築、強みに基づく役割付与、学級全体への道徳的働きかけといった実践を段階的に展開しました。
特定の支援にとどまらず、学級全体の人間関係づくりにまで視野を広げた点が、教員としての組織的視点を表現する要素となっています。
結語では、「体罰や暴言のない学校」を単なる禁止事項の遵守ではなく、子どもと教職員がともに尊重される関係性の中で実現すべき理念として捉え、自身の継続的な実践と内省への決意で締めくくっています。
ここでは教職への主体的姿勢を明確にしつつ、教育の公共性にも意識を及ぼしています。
以上のように、実践に裏付けられた具体性と、構造的・倫理的視座のバランスを保ちながら論述した点が、この小論文の評価ポイントとなります。
文字数を最大限活用しつつ、主張・実践・展望の一貫性を維持することが、得点力の高い答案を生む鍵となります。
河野正夫



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