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小論文シリーズ3 キャリア教育

  • 執筆者の写真: 河野正夫
    河野正夫
  • 2025年6月7日
  • 読了時間: 4分

【小論文課題】


学校の教育活動全体を通じたキャリア教育の推進が求められています。キャリア教育とはどのような教育か述べるとともに、児童Aに対して、キャリア教育の視点を踏まえて、どのような指導を行うことが大切だと考えますか。これまでの実践をもとに、具体的にあなたの考えを書きなさい。


(800文字以内)






【小論文】


キャリア教育とは、児童が自らの生き方を主体的に考え、将来の社会的・職業的自立に向けて必要な資質・能力を育むことを目的とした教育である。進路指導と異なり、特定の職業を意識させるものではなく、日常の学習や人間関係を通して、自己理解・他者理解・社会理解を深めていく過程そのものである。学習指導要領においても、学校の教育活動全体を通じて体系的に実施することが求められており、教科・領域の枠を越えた継続的な取り組みが必要とされている。


私が以前関わった児童Aは、授業中は真面目に取り組む一方で、自己主張が少なく、グループ活動や発表を避ける傾向にあった。担任として関わる中で、自分の意見が否定されることへの不安が強いこと、他者との比較で自己評価を下げやすい傾向があることに気づいた。そこで私は、キャリア教育の視点に基づき、まずAが「認められる経験」を積める場面を意図的に設定した。具体的には、係活動のなかでAの得意分野を活かせる役割を与えたり、授業中にAの発言を肯定的に受け止めるフィードバックを繰り返したりした。


加えて、道徳や総合的な学習の時間において、自分の強みや目標について考え、他者と共有する機会を設けた。その際には、否定や評価を避け、互いの話を尊重することを学級の共通ルールとした。結果としてAは、徐々に自己表現を増やし、他者と協働して活動に取り組む姿勢が見られるようになった。自らの成長を自覚することが、将来に向けた自己肯定感と意欲の基盤になると実感した。


私はこれからも、児童一人ひとりが自分らしい生き方を見つけ、自信をもって未来に向かって歩む力を育むために、キャリア教育の視点をあらゆる教育活動に通底させていきたい。そのために、児童の内面の変化に丁寧に向き合い、自分自身と社会とのつながりを考える場面を意図的に設計し続ける教員でありたい(と考えている。)



【執筆の観点】


本小論文は、キャリア教育の定義を明確に示した上で、児童Aに対する具体的な指導経験を中心に据え、教育的意義と教員としての展望を一貫した構成で論じています。


特に結語においては、第三者的なまとめではなく、自らの教育観と今後の実践への意思を明示することで、教職志望者としての資質を文章表現に反映させることを意識しました。


序論では、キャリア教育を進路指導と区別しながら、その本質を「生き方の学び」として定義し、学習指導要領の文脈に即して論点を導入しています。


これにより、制度的理解を土台に据えた主張の構成を可能にしています。


本論では、児童Aの個別性を丁寧に把握したうえで、指導における工夫を段階的に提示しています。


「承認される経験」「自己の強みの可視化」「協働的関係性の形成」など、キャリア教育の構成要素と実践の対応関係が明確に示されており、実行可能性と説得力の両立を図っています。


結語においては、「キャリア教育の理念」と「教員としての実践的覚悟」とを結びつけ、主体的な語りをもって締めくくる構成としています。


ここでは、教育課題への対応策にとどまらず、継続的な取り組みへの姿勢と教育観の明示が、文章全体の一貫性を支える役割を担っています。


教員採用試験における小論文では、制度理解、実践経験、教育観の三層を結びつけ、具体と抽象、理論と実践を往還しながら構成する力が求められます。


その際、結語において自らの教育者としての意志を明確に表現することは、文章の完成度を高めるうえで非常に重要な要素となります。




河野正夫



 
 
 

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