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小論文シリーズ25(最終回)「高度化する社会において人間に求められる資質や能力」

  • 執筆者の写真: 河野正夫
    河野正夫
  • 1 日前
  • 読了時間: 3分

【小論文課題】


AI(人工知能)を用いた技術の導入が進み,高度化する社会において人間に求められる資質や能力について述べよ。その上で,あなたが学校の指導において意識的に取り組もうと考えることについて述べよ。


(800文字以内)





【小論文】


 AI技術の発展により、社会の仕組みや働き方は急速に変化している。ルーティン業務の自動化や情報処理の高速化が進む一方で、人間にしか担えない能力があらためて問い直されている。高度化した社会では、知識そのものの量よりも、それをどう活用するか、他者とどう関係を築くかといった能力がより重要になると考える。


 求められるのは、まず「課題を発見する力」である。AIは既存の情報から最適解を導き出すことに長けているが、「何を問うべきか」を設定する力は依然として人間に委ねられている。加えて、他者と協働し、多様な視点を取り入れながら考える「対話的な姿勢」、そして、新たな意味や価値を創出する「創造的思考」も不可欠である。これらは、単なる知識習得ではなく、思考の柔軟さや感情的な理解に根ざした力であり、教育の中で意識的に育てていく必要がある。


 そのために私は、学校現場において探究的な学習の設計を重視したい。例えば、生活や社会の中から「なぜ?」「どうして?」を見つけ出し、自ら問いを立てて調べ、考え、発表する一連の活動を通して、児童生徒が主体的に学ぶ機会をつくる。また、その過程では、友人との対話や協働、失敗からの学びも意図的に取り入れたい。AIにはできない、人間同士の共感や価値の共有といった経験こそが、未来を切り拓く基盤となるからである。


 評価においても、答えの正確さだけでなく、問いの質や思考の多様性に光を当てる視点が求められる。例えば、「問いを生み出す力」や「他者の意見に触れて自分の考えを深める姿勢」など、過程における学びの意味を丁寧にすくい取る評価観が重要である。


 今後の教育では、AIと共存しながら人間らしい力を発揮できる子どもを育てる視点が必要である。そのために、私自身も教員として学び続け、変化する社会に対応した学びの在り方を模索し、子どもたちの可能性を社会と結びつけていく。



【執筆の観点】



1. 社会的背景と論点の明確化を通して出発点を整えること


この小論文では、まずAI技術の進展がもたらす社会的な変化を簡潔に整理し、人間に求められる力がどのように変化しているのかを明示することが求められます。


「AIが得意とすること」と「人間にしかできないこと」の違いに注目し、教育が育てるべき力に視点を向けると、課題文の主旨に的確に応答することができます。



2. 資質・能力の具体化と、それに対応した教育活動の構想が重要です


「課題発見力」「対話的姿勢」「創造的思考」などの資質を、抽象的に語るのではなく、それぞれの意味や背景を説明しながら具体的に記述することが有効です。


そのうえで、これらの資質がどのような学習活動の中で育まれるのかを、教科や場面を具体化して述べると、説得力のある実践構想になります。


児童生徒の学びのプロセスや、対話・協働の要素を取り入れる視点も重要です。



3. 結論部では、教育理念と実践方針を接続して構成すると効果的です


論の結びでは、今後の教育の方向性を「AIとの競合」ではなく「共存」の観点から整理し、教育の役割や教師としての姿勢に触れることが効果的です。


「学び続ける教員の姿勢」や「子どもたちの未来志向を支える教育」などの表現を通じて、短期的な指導目標を超えた理念的視点を提示することが望まれます。


論全体を一貫した視点で構成しながら、読後に余韻を残す結論を意識すると完成度が高まります。




河野正夫



 
 
 

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