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小論文シリーズ18 「授業での探究的な学びの実現」

  • 執筆者の写真: 河野正夫
    河野正夫
  • 2025年6月23日
  • 読了時間: 4分

【小論文課題】


授業で探究的な学びを実現するために大切にしたいことは何ですか。自分の体験をふまえて、あなたの考えを800字以内で述べなさい。


(800字以内)





【小論文】



 探究的な学びを授業で実現するためには、生徒が自ら問いを立て、その問いを多面的に掘り下げていけるような環境と、それを支える教員の柔軟な姿勢が不可欠である。探究とは、あらかじめ設定された正解に向かうのではなく、自らの疑問を出発点にして、考え、調べ、他者と共有しながら理解を深める営みであると考える。


 私はかつて、中学校の総合的な学習の時間において、「地域の川と人のくらし」をテーマにした単元を担当した。授業の初期段階では、生徒から「この川の水はきれいか」「だれが管理しているのか」といった表面的な問いが多く出された。そこで私は、過去の水質データや地域の取り組みに関する資料を読み解く活動や、地域住民へのインタビューの時間を設定した。すると、生徒たちは徐々に「なぜこの川は長年浄化されてこなかったのか」「地域の環境意識と行政の施策にはどのような関係があるのか」といった、より深く社会とつながる問いを自ら立てるようになっていった。


 私はその変化を肯定的に受け止め、学習計画を柔軟に見直した。フィールドワークの回数を増やし、市役所や市民団体にも協力を依頼するなど、予定外の対応も行った。生徒たちが自らの問いを失わず、主体的に学び続けられるようにするには、教員が「正解に導く者」から「問いを支える伴走者」に立場を変える必要があると痛感した。また、探究が進む中で生じた葛藤や迷いにも丁寧に向き合い、学びのプロセスそのものに価値があることを繰り返し伝えた。


 今後も私は、探究的な学びにおいて、問いの価値を尊重し、変化に応じて授業を構成し直す柔軟性を大切にしていきたい。生徒が問いを手放さず、最後まで意味を見出そうとする姿勢を育む授業づくりに努めていく。



【執筆の観点】



1. 序論では、探究的な学びに対する理解と、主張の観点を明確に設定することが求められます。


序論の目的は、論述全体の方向性を読者に明示することです。


そのため、最初に「探究的な学び」をどう捉えるかを明文化する必要があります。


ここで抽象的な教育理念を並べるのではなく、「問いを立てること」「その問いに向き合い続けること」に重点を置くなど、自身の指導観に基づいた定義を自らの言葉で示すことが重要です。


また、探究的な学びの本質を一面的に捉えるのではなく、「環境の整備」や「教員の関わり方」など、複数の要素を結び付けながら、論点を深めていく構えを示すとよいでしょう。


論点の設定に曖昧さが残ると、本論以降の展開が散漫になるため、出発点での観点の絞り込みと焦点化が不可欠です。



2. 本論では、生徒の問いの変化と教員の対応を連動させ、実践過程を具体的に記述することが必要です。


本論では、単に体験を語るのではなく、探究がどのように展開されていったかをプロセスに沿って論述する構成意識が求められます。


特に、「初期の問い→学習活動→問いの深化」という構造を意識し、生徒の反応や思考の変化を段階的に描写することが効果的です。


そのうえで、教員がどのような意図をもって働きかけを行い、授業計画をどのように変更したかを明記することで、探究的な学びを成立させるための「支援のあり方」が浮かび上がります。


単なる成果報告にとどめず、「予定外の展開への柔軟な対応」や「他機関との連携」など、指導の工夫や判断の背景まで掘り下げることで、実在感と説得力が生まれます。


加えて、教員がどのような立場で生徒の探究に関わったのか、例えば「導く者」から「伴走者」への転換といった視点を明示することで、教育観の深まりを読み取らせることが可能になります。



3. 結論では、体験から得た教育的示唆と、今後の授業構想への展望を明確に言語化することが求められます。


結論では、体験から得られた気づきや教訓を、将来的な指導方針と結び付けて述べることが重要です。


単に「今後もがんばりたい」といった曖昧な意志表明ではなく、「問いを価値あるものとして扱う授業をつくる」「授業の構成を柔軟に見直す姿勢を保つ」など、具体的な方針にまで落とし込む必要があります。


また、結びの文では、「学びのプロセスに意味がある」という価値観を再確認しつつ、教員としての責任感や教育観が読み取れるように意識することが望まれます。


理念的な言葉をそのまま用いるのではなく、授業を構成する立場としての実践的意思を言語化することで、結論の説得力と実効性が高まります。




河野正夫




 
 
 

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