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小論文シリーズ16「『いのち』を大切にする心をはぐくむ教育」

  • 執筆者の写真: 河野正夫
    河野正夫
  • 2025年6月20日
  • 読了時間: 5分

【小論文課題】


神奈川県では、あらゆる教育活動を通して「いのち」のかけがえのなさや、夢や希望をもって生きること、人への思いやり、互いに支えあって生きることの大切さなどを生徒一人ひとりが実感できるよう「『いのち』を大切にする心をはぐくむ教育」「キャリア教育」「インクルーシブ教育」など様々な教育施策を推進しています。このような教育を推進するために、あなたはどのような姿勢や意識をもつことが大切だと思いますか。また、そのことを踏まえ、どのような教育活動に取り組みますか。あなたの考えを600字以上825字以下で具体的に述べなさい。


(600字以上825字以下)





【小論文】


「いのち」を大切にする教育を推進するためには、教師自身が子どもたち一人ひとりの存在をかけがえのないものとして認識し、日々の教育活動を通して「人としての尊厳」「つながりの中で生きる意味」「夢や希望をもって生きることの力強さ」を実感できるよう支援していく姿勢が不可欠である。私は講師として、学級経営や教科指導の場において、児童の個性や家庭背景、感情の揺れに丁寧に向き合い、信頼関係を土台とした教育を心がけている。


ある年、不登校傾向のある児童を担当した際には、無理に登校を促すことはせず、まず保健室や図書室を「安心できる居場所」として設定し、段階的に関わりを深めた。日々の会話や表情の変化から心情を読み取り、少しずつ教室での活動につなげた結果、本人は自ら教室に戻り、学習や友人関係に主体的に関わるようになった。「受け入れられている」という実感が、意欲の回復と社会的つながりの回復に大きく影響したと確信している。この経験から、教育実践においてまず「安心と信頼の場」をつくることの大切さを学んだ。


また、キャリア教育の一環として、「将来なりたい自分」について語り合う道徳の授業を実施した。特に家庭に困難を抱える児童が、自分の未来について前向きに語り、他者と共感し合う過程の中で、自尊感情を獲得していく様子が印象に残っている。さらに、インクルーシブ教育の観点から、障害のある児童と健常児が協力しながら取り組む行事や学級活動を継続的に設け、互いの違いを認め合い、支え合う集団形成を目指してきた。交流の機会を重ねる中で、自然に共感や思いやりの心が育ち、排除のない温かな人間関係が形成されていった。


私は今後も、どのような教育活動においても、児童の「いのち」と尊厳を中心に据え、すべての子どもが「大切にされている」と実感できる学級・学校づくりを粘り強く進めていく。



【執筆の観点】


この小論文では、神奈川県の教育施策に基づき、「いのちを大切にする教育」「キャリア教育」「インクルーシブ教育」を軸に、教員としての意識と具体的な教育活動について論じました。


特に、教育理念の体現としての姿勢と、児童にとって実感を伴う実践との接続を意識し、理念と現場の往還を明確に描く構成としました。


序論では、テーマに含まれる理念的価値を単に並べるのではなく、「いのちを大切にする」という言葉を「尊厳」「つながり」「希望」の3つに要素化し、教育的に扱うべき価値として再定義しました。


これは、抽象的な語を教育活動に具体的に転化させる足場として機能しています。


また、「教師の姿勢」については、「認識・関わり・支援」の3段階を含意させた語彙選択により、深みと展望のある導入となるよう心がけました。


本論では、自身の講師経験を通じて、不登校傾向児童への支援事例を詳細に取り上げています。


この場面では、「登校を目標とする指導」ではなく、「安心できる居場所づくり」「非言語的なサインの読み取り」「段階的な関わり」という現実的かつ再現可能な支援プロセスを描きました。


特に、「受け入れられている」という実感が児童の行動変容に直結したという分析を加えることで、「心の安全の保障」が教育実践の基盤であるという信念を明示しています。


続くキャリア教育の記述では、「語り合う道徳授業」の導入によって、児童が他者と自己の未来について語ることで共感と自己肯定感を育むプロセスを提示しました。


ここでは、「困難を抱える児童」と「語りの経験」を結びつけ、キャリア教育が単なる職業理解ではなく、「自らの人生に向き合う権利と機会の保障」であるという意義を浮かび上がらせています。


さらに、インクルーシブ教育については、「協働の場を日常的に構成すること」「交流経験を積ませること」が関係性の変容に寄与するという視点から描きました。


障害のある児童と健常児の間で生まれる協働関係が、排除のない人間関係の礎になるという分析は、現場での実践性と教育的価値の双方を支える要素となっています。


結論部では、「いのちと尊厳を中心に据える」という強い意志表明により、理念と行動を統合しました。


また、「大切にされていると実感できる」学級の実現を目指すという目標は、個別支援と集団形成の両立を含意し、今後の展望に深みをもたせています。


文体面では、強い断定を避け、語調を穏当かつ説得的に保つことで、教育現場での現実性を損なうことなく、読者に共感される語りを意識しました。


語彙についても抽象語と実践語のバランスを調整し、読みやすくかつ教育的に深い文章となるよう構成しています。




河野正夫



 
 
 

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